Diet or Alive (Part.12)

あれから絶食してるはずなのに
まだ死んでない。

夫が言う。
「たぶん軽いウツだろうって先生は言ってたよ。
点滴抜いちゃったのだって、発作的なんだって。
だから心配しないでゆっくり養生しなよ。
ウチのことは娘たちがやってくれてるから。
ひさしぶりの休暇だと思って。」

娘が言う。
「お母さん大丈夫だって。
あたし料理だって洗濯だってするから。
パパやりまの面倒だって見るから。
ダイエットだってママがいやなら絶対しないから。
だから、早くよくなってよ。」

お医者さんが言う。
「いろいろあって疲れてるんですよ。
何はともあれ体力が落ちないように
しっかり栄養を摂らなきゃね。
ちゃんとよくなりますよ。
心配しないで、いまは治療に専念しましょうね。」

あれから吐き気は治まってる。
『羅臼』は活動を停めたのだろうか。
それとも敵の存在を関知していないのだろうか。

敵・・・ダイエットを止めようとするもの。
それはいまやわたし自身のこと。
なのに・・・何かがおかしい。
何も食べていないはずなのに
空腹になった憶えがない。
栄養失調のはずなのに
身体に変調を少しも感じない。

記憶?
まさか。
昨日のことから順に思いだしてみる。
何も忘れていることは・・・あ。
あまりにも整然と記憶が残っていることに
違和感を憶える。
この違和感をベッドの横のメモに書き記して
枕とカバーの隙間に差し込んでおく。

看護婦さんに言われて初めて気がついた
「あら、こんなとこに紙が。河合さん、コレ無くすと困るモノなんでしょ? 枕カバー替えますからね。ハイ。」
渡されたメモには
(記憶の改変に気をつけて!)
と書いてあった。わたしの字だ。
あきらかにわたしはコレを書いたことを憶えていない。
つまりなんらかの操作でコレを書いた記憶が消されているのだ。
何らかの操作ですって?
わたしが食事をしたり点滴を受けた記憶が
消されている?!

(まさかそこまで・・・・)
『羅臼』がわたしの記憶領域に入り込んで?!
もうわたしは
わたし自身ではなくなるの?
そのうち身体を、精神を乗っ取られてしまうのだろうか。
強い絶望感を感じた瞬間、
視界が暗くなってゆく。
(いまのこの記憶も、けされてしまうの・・・)

そのまま意識を失った。

(次回は最終回です。お楽しみにね。んがんぐ)

2006年09月03日

※結局最終回は書かれていない

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