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#句具ネプリ 冬至 Vol.08 2022 感想文

絨毯で眠る前世は神なので 
嶋村らぴ

うとうとしている時って幸せだ。
その多幸感を「前世は神」としたところが面白い。確かに古代の神は絨毯で寝ていたのかもしれないし。
私はこれを家飲み後の光景と読んだ。
その辺で雑魚寝し始めて、友達が気を遣ってくれるんだけど「案ずるな人間よ」って寝続ける。
気持ちよさそう。でも風邪ひきそう。

熱き母乳あふる湯ざめのからだより 
鈴木沙恵子

私は子どもを産んだことがないから想像するしかない。
冷めた体から(ひょっとしたら心も冷えているかもしれないのに)、勝手にあふれる母乳。
それは尊いことのようにも思えるし、怖いことのようにも思える。

クリスマス用の恋人だつたのか 
イサク

これってあるあるな話なのかな?
友達も「クリスマスまでに恋人を作る!」と言って、本当に作った。
残念ながらクリスマス前に別れてしまったけど、「ダメだったよ~」とケラケラ笑っていた。
本当に好きじゃなかったんだろうな。だから私も「プレゼントを渡す前で良かったね」と言った。
この主体はプレゼントを渡してしまった様子。しかも自分は貰えなかったとみた。
うん、可哀そう。

寒北斗青年のまま生きる猫 
おんちゃん。

猫は大きくなったら、10歳くらいまで不老という話がある。
子どものころいた猫はずっと同じままで、ある時急に老猫になったと思ったら姿を消してしまった。
それが猫の生き様なんだろうか。
寒北斗が切ないなぁ。

もつ煮みたいにどろどろ年を惜しむかな 
いかちゃん

「どろどろのユニフォーム」「どろどろの道」など、「どろどろ」はマイナスのイメージを持つオノマトペ。それがプラスに使われているのが面白い。
もつ煮は手間のかかる料理だ。もつを何度か茹でこぼし、大量の野菜と蒟蒻を切って、炒めて煮込んで……さらに冷まして味を染み込ませる。
この主体は諸々片付けて、満足感と倦怠感の中で、夜を過ごしているんだろう。

スカイツリー二基で冬雲つまみたし 
田中木江

笑ってもーた。もう箸にしか見えん。
『はじめてのちゃんと箸』だ。ググってくれ。激似。

凍蝶や紙切れほどの殺意あり 
瀬戸優理子

紙切れという単語が出てくるということは、この主体の前に実際に紙があるんだと思う。
凍蝶だから、主体は女性のイメージ。何だろう。離婚届、解雇通知書?
紙切れほどの殺意なら、大したことはないように思うかもしれないけど、紙の端は皮膚を切り裂ける。
怖い。

泣きすぎた茹ですぎたなあブロッコリ 
つまりの

ブロッコリーを茹でるのって意外に難しい。油断するとすぐへにょへにょになる。
そのへにょへにょ具合、青臭さ、しょっぱさ(茹でるときには塩を入れるだろうから)が「泣きすぎた」という措辞に合っている。
口語で書かれているのも、感情移入できていいな。

マフラーに巻かれて私いなくなる 
郁爺

マフラーで見えなくなって、私が消えたように感じる、という句だと理解した。
見えなくなったからって消えるわけじゃない。この「物の永続性」の認識は生後5カ月半くらいで獲得されるらしい。
でもだからと言って、以前の感覚がなくなるわけではないんじゃないか。
私はこの感覚を理解するし、共感する。

鯛焼きの側面といふ真正面 
銀紙

この句を一句一遊で聞いたとき、びっくりした。
さんざん鯛焼きを食べていて、レポートまで書いたにもかかわらず、私は気付かなかった。
そうだよ、鯛焼きって側面じゃん。。。

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