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保険会社はヘルスケア、リスク管理プラットフォームへ

 突然ですが、保険会社は何のサービスを提供しているのでしょうか?
もちろん、契約者は、何かあった際に保険金を受け取ることを通じて、保障を受けることができます。生命保険や損害保険、それぞれにもあらゆる種類の保険商品が存在しますが、いずれにしても、特定の状況に対して金銭的な保障を受けることで、自分のお金を使わなくても良いようにリスクを転嫁しているのですね。

 最近は、ビッグデータを活用できる環境が整ってきたこと、高齢化が進むとともに、健康寿命を延ばすことに対する関心の向上等の理由から、保険会社各社は、健康増進型の保険・サービスを拡充させています。健康診断の提出、内容や歩数に応じて保険料を調整したり、健康増進活動に応じてポイントがもらえるといった特徴があります。まったくこういった活動をやらないよりは、健康意識が向上しますし、歩くことで体力がついたりいいことがあるでしょう。しかしながら、特定の人がどんな状況で、その状況に対してどんなアクションをすればどの程度の効果があるのか、といった定量的な分析に基づくものであるかは不十分であり、まだまだ本当の健康増進に繋げていくには課題も多いと言えます。

健康診断の課題

 一般的な健康に関する情報ではなく、この私、自身の体に異状がないか、健康に問題がないかをしっかりと調べるには何をすればいいでしょうか。
そう、何と言っても健康診断ですね。自治体や企業による健診がありますが、若干の検査項目の違いはあれども、多くの検査を通じて、自分の健康状態を知ることができます。企業によっては、従業員に強制して受診をさせるケースもあり、自分の意思に関わらず、定期的に自分の状態を知ることができるのはメリットです。
 私は今年ドキドキしながらも初めて胃カメラを体験しましたが、強制されなければずっと受けないでしょう。

 但し、通常は年に1回の受診となるので、例えば糖尿病、高血圧等の疾患をタイムリーに発見できない、心臓病やがん等の一部の疾患は急速に進行するケースがあるので、発見が遅れるといった課題があります。 

ビッグデータ活用の可能性

 限られたタイミングでしか診療できない課題を解決する手段の1つはウェアラブル機器の活用です。心拍数、血圧、血中酸素濃度、睡眠パタン、運動量の計測によって、長期的なトレンドや、異常値の取得による問題の早期発見が可能です。但し、血液検査や尿検査といった詳細な検査はもちろん代替できないですし、レントゲンやエコーといった画像をもとにした医師の判断が必要な検査は対応できませんので、現時点では、健康診断とうまく組み合わせてウェアラブルを活用するのが効果的でしょう。

 検査プロセスを分解すると、身体に関するデータ(情報)の取得と、専門家による診断に分けることができます。ウェアラブルによって取得できるデータは以前と比べて増えていますが、健診と比べ、まだまだすべてのデータを取得できるようにはなってませんし、今後も当面は厳しいでしょう。
一方で、診断部分については、法的な問題はあるにせよ、データをどう解釈するか、という問題なので、医師の診察スキルといった専門技術を、アルゴリズム化する、又はAIの活用によって精度を高めることができる可能性があります。
 特定のバイタルデータと疾患の関連性をビッグデータを用いて分析することで見出すことができれば、場合によっては医師にすら判断できなかったことが、専門の仕組みを活用することによって実現できるかもしれません。ウェアラブル機器に限らず、家庭でも活用できるような医療機器を組み合わせることで、より取得できるデータの範囲を広げ、診断できる傷病や対応策を増やすことができます。例えば、パルスオキシメーターで血中酸素濃度を取得する、血糖値測定器で血糖値を測る等、取得データを増やせますね。

 こういった施策によって得たデータを、大量ビッグデータ(レセプト、健診結果等)を用いて分析することで、仕組みによって、状況を把握・診断に近い判別ができるようになれば、健診のみでは実現できなかった早期発見やトレンドの把握といった情報を得ることができ、健康増進に繋げていくことができる可能性は高まります。
 みなさんいろんな人生の目的がありますが、何事も体が健康でなければ進めることができません。こういった仕組みを実現することによって、みなさんのヘルスケア向上に貢献できるように取り組んでいきます。ヘルスケア向上、リスク管理の機能提供は、何も保険会社だけが提供できるサービスではありません。健保組合や、ヘルスケアを提供する企業等、いろんなプレイヤーが参入できる領域です。

 それにも関わらず、保険会社がサービスを担う意義はどこにあるのでしょうか。データに基づき、適切な施策を打っていたとしても、100%効果が見込めるかというと、厳しいものがあります。そういった環境の中であるからこそ、もしもの時にも備えが可能なソリューションを提供できるプレイヤーとして、経済的な側面から支援が可能なプレイヤーとして、保険会社の存在意義があるのではないでしょうか。

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