US/Biotech/Startups 投資検討メモ-Neo Genomics
今回はアメリカのスタートアップNEO Genomicsのビジネスを多角的に評価していました。投資判断の参考になれば幸いです。レポートでは、10-kや、株主向けプレゼンテーションを引用するとともに、評価基準としてマッキンゼーの”企業価値評価”https://amzn.asia/d/3yNfsuVxを参考にしています。投資の判断は自己責任でお願い致します。
この企業は、がん検査サービスを主力としている検査サービス会社です。がん検査、結果の解釈コンサルティング、遺伝子検査、ラボにテクニシャンの派遣などを行っています。ほかにも製薬業界向けのサービスも手掛けています。
1. ビジネス概要
この会社は、クリニカルサービス部門とアドバンストダイアグノスティクス部門で構成されています。クリニカルサービス部門の顧客には、地域密着型の病理学および腫瘍学の診療所、病院の病理学検査室が含まれます。連結売上高の84%を占めます。アドバンストダイアグノスティクス部門は、臨床試験を支援するための検査やその他のサービスを提供する製薬会社向けのサービスを提供しています。
2. 会社が参入しているマーケットの概要
この会社ががんの遺伝子検査をターゲットとしているのは明確な理由があります。まずは、新たながんの原因遺伝子やパスウェイが毎年発見されていること。また、がん患者の母数が増えていることと、その治療方法の選択肢が増えていること。さらに、それをサポートする保険制度が充実していることが挙げられています。
また、この会社はモニタリング(リカーリングビジネス)の用途に使われる検査キットを主力に開発しているそうです。
3. 成長戦略(マッキンゼーのフレームワーク)
2024年 3半期決算の資料によると、NeoGenomicsは下記の重点戦略を掲げています。これらの重点戦略が、企業価値向上に繋がるのか検討しました。
Profitaliby grow the core business
Accelerate ADx and Innovation
Drive value creation
企業の成長戦略の良し悪しを比較する方法として、マッキンゼーの企業価値評価が提案している分類基準がある(マッキンゼーの企業価値評価、Exhibit9.3)。
・インパクト大ー新しい製品の導入により新しい市場を作る、既存の顧客に対して新しい製品を売る、新しい顧客を引き付ける
・インパクト中ー成長している市場でマーケットシェアを拡大する、企業買収により製品成長を加速する
・インパクト低ー競合他社からマーケットシェアを奪う、プロモーションや価格戦略、大規模な買収
このフレームワークを用いてNeo Genomicsの成長戦略を評価した。
Accelerate ADx and Innovation:新製品の開発 ネオジェノミクスは、NEO|AMLExpressやNEO|PanTracer LBxなどの製品を発売し、高度な診断機能を備えたポートフォリオを強化している。 これにより、臨床顧客と臨床試験に従事する製薬会社の両方に対応するプレシジョン・オンコロジー分野での製品提供を拡大することで、新規顧客を獲得し、収益源を拡大する機会を創出しているため、インパクトの大きいカテゴリーに入る。
Accelerate ADx and Innovation: ネオジェノミクスは、特に次世代シーケンシング(NGS)において積極的に検査量を増やしている。 市場浸透とシェア拡大をめざしており、 インパクトが中程度である。また、 RCMの取り組みにより、検査の平均単価(AUP)が9%上昇した。 サービス価格を変更することなく回収と財務実績を改善したことは、大幅なコスト調整を伴わない成長戦略の加速を示している。
Drive value creation :オペ 粗利率を改善するため、ネオジェノミクスはラボの生産性向上、AI、自動化に注力している。 ラボのフットプリントの最適化: ネオ・ジェノミクス社は、運営経費を削減するために拠点を縮小した。 短期的な利益には効果的だが、これは顧客ベースや製品提供を直接拡大するものではなく、インパクトの小さいカテゴリーに入る。
4.マネージメント
2022年8月から新しいCEOに代わっています。彼は、この会社に参画する前に、オーソクリニック(臨床検査装置を設計開発しているメーカー)のCEOとして勤めていました。ほかの企業でもCEOを経験していることから、彼は、この業界における人脈を持ち、秀でたリーダーシップを持っている方だと推測できます。現在のCEOの就任にもかかわらず、株価は低迷しています。
5.財務状況
Neo Genomicsの売上は近年増加傾向にありますが、赤字経営です。ここ三年間は、2023年の年間売上は前年に比べて成長しています。特に、Q1 2024, 14%の売り上げ増加しています。
次に、ウォーターフォール解析によって、赤字の原因を検討してみました。COGSは50%程度ですので業界平均だと思われますが、やはり販売促進費が足枷となっているように思われます。
この検査業界では、法規制の対応(QMS、ISO)に関する要求事項の対応には人員が必要です。さらに、検査結果のコンサルテーションや示唆を提供するなら、医師や博士を雇う必要があり必然的に人件費が高くなってしまいます。このビジネスが、現時点で安定成長のステージに移行したとするならば、急激な売り上げ拡大が見込めないため、営業管理のコスト削減やオペレーション改善により黒字化を目指し、キャッシュフローをプラスにする必要があります。実際に、IT技術の導入により検査センターの効率化を実施し、検査センターの最適化(不要なラボの閉鎖、移管)したようです。
6. 所感
またがん検査のマーケットは急成長していることもあり、売り上げは着実に増加しています。また、継続した新製品の発売およびコストの削減に取り組んでおり、将来的には黒字化が実現できるのではないでしょうか。ただ、既存の大手臨床検査センターとの差別化が懸念されます。