若者に優しい社会よ、続け。
今、30歳なので、もう10年も前になるけれど、
入って1年も経っていないアルバイト先を辞めた。
「店長、すみません…。お話があるのですが。」
店長は私の話を真剣に聞いてくれた。
「私、これからの方向性を変えようと思っていて、
実は、もう、学校を変えることにしました。」
と打ち明け、職場に通えないことを詫びた。
店長としては、
丁度、昇級を考えていてくれていた頃だったらしい。
それでも、
「そうなんだ。それは素敵なことだね。応援するよ。
じゃあ少しの期間でも、次の級で頑張ってみようよ。」
と、提案してくれた。
昇級するということは、時給も少し上がる訳で。
まさか突然辞めると切り出した私に対して、
そんな寛大な処遇が待っているとは、
露ほども思っておらず、唖然とした。
その後、ぽかんと空いた口を閉めて、お礼を述べた。
本当にありがたかった。
もう一つ掛け持ちしていたアルバイト先では、
何故かお抹茶をいただいた。
趣味でお茶室を作り、
たまにお茶会をされているらしい。
私に至っては、お茶の作法なんて見様見真似で、
正座でぷるぷるしていた。
そんな私を横目に、
「適当でいいよ。」と声をかけてくれた。
その方は私が大学受験を失敗する前から、
それよりもっと前から、
私の事をよく知っている方だっただけに、
「学校を変えるので辞めさせていただきます。」
と言ったとき、大変驚いた様子だった。
だからこそ、お抹茶をたてるという方法で、
時間をかけて聞いていただけたのかもしれない。
慣れないお茶席でかしこまっていると、
「あなたは辛い経験をしてきたから、
その分、他人の痛みがわかる。
他人の痛みが分かるということは、凄いことで、
誰でも出来ることではないのよ。」
と言葉をいただいた。
今からすると、10年分、経験の浅かった私は、
ただただ有難くて、緩む視界をゴシゴシしていた。
なぜ、今日そんな過去を思い出したのだろう。
記憶はふとよみがえる。
10年経った今でも、ふと思い出す言葉たちは、
いろいろな種類があるけれど、
人生の先輩である、
素敵な人たちからかけられた言葉たちは、
どれも優しくリフレインする。
そんな人間に私もなりたい。
今日この頃。