僕は女から男に性別を変えた。LGBT FTMトランスジェンダー。鈴木優希 42歳。仕事は地元名古屋でLGBTQ、今はFTMを主に雇用したBARを経営して16年。
物心ついた時から僕の心は女じゃなかった。そのあべこべさに漠然とした不安と将来への絶望を感じていた。
心と体の性別が違う。男とか女とか、本来なら悩む事ない「性別」という枠。
そんな当たり前の人生のスタート地点から僕は迷子だった。
それでも人生は進んでいく。
親との時間、学校、将来、恋愛..
生きていく中での全ての出来事が人知れず性同一性障害を抱えていた僕にとっては悩みの材料だった。
皆さんも想像してみて欲しい。
自分の性別と逆の身体を持ったらどうする? 一瞬だったら、女風呂に入れる。とか女の身体を楽しもう!とか思えるかもしれないけど..
それが一生死ぬまで続くとしたら?
本当の性別で誰も見てくれないこと。
どこもクレームも受け付けてくれないし、自分以外の人は不具合に気付いてはくれない。
僕はとても辛かった。
家族と居ても、いつか僕がこの事実を伝えたらこの家はどうなってしまうんだろう。
きっと悲しみ悩むんだろうな。なんて心のどこかで常に思っていた。
楽しい事があってもどこかでふっとよぎるこの身体と心の性別が違う事実。
ずっと秘密にはきっとできない。
一瞬逃げれてもいつか必ずぶち当たる大きな壁だということは心のどこかでハッキリとわかっていた。
性別。
今となっては「LGBTQ」、「個性」「性別なんてなくていい」「性はグラデーション」などと言われて、理解も進み何ならちょっとカッコイイ感じになってきた。
しかし、当時の僕にそんな強さはなかった。
きっと今のこの時代でも、同じように思っている子、悩んでいる子もいるはず。
みんな一緒じゃない。
性格や環境によってどれだけ世間が認めてくれても、自分を受け止めることや周囲へのカミングアウトが難しい人も多い。
人と違う。普通じゃない。女であるのに女が好き。同性愛? 違う、心は男。女の身体が嫌。女の名前が嫌。男になりたい自分。
親のこと。子供のこと。仕事の事。将来の事。
頭がグルグル回る。そしてそこには、性同一性障害という変えられない事実だけはあるがどうしたらいいかという正解はない。
そんな時救われるのが「友」
「英理子は英理子じゃん」
18歳の時、いっぱいいっぱいになって初めて友達にカミングアウトした時にかけてくれた言葉。
その言葉から、僕は少しづつ強くなれた。
それから23年。
今は戸籍も変えて、性別違和や治療で悩む事は無くなったけど、仕事の事、健康の事、人間関係に疲れた時、救ってくれるのはやはり「友」という存在。
この歳になると、家族には「心配かけたくない」という気持ちになって悩みがあっても言えない。
ただ、落ち込んだ時一人では何とも出来ない瞬間がある。
それは42歳になっても変わらない。
そんな時、ひとりでも話を聞いてくれる人がいたら、また気力が湧いてくるもの。
人は一人じゃ生きていけない。この歳になって痛いほどに実感している。
救われるたびに、自分も大切な人としっかり付き合っていこうと思う。
困った時だけ、自分ばっかり、ではいけない。
大事に思う人の事を大事に思う事。そして行動すること。
尊敬できるところをお互いに持っているとなお良い。
人によって悩まされるけど、人によって救われる。
大切にしよう。大切にしたい。
友よ、僕を救ってくれてありがとう。これからもよろしく。
2022.7.19(火)LGBT社会人交流会「BRUSH UP」第10回無事終了。沢山のご参加ありがとうございました!
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鈴木優希のセミナー活動関連のお知らせ、性同一性障害のお子様を持つ親御さんへのメッセージなどLGBTについてのコンテンツを掲載しているオフィシャルサイトもご覧いただけたら嬉しいです。そしてコメントもお気軽にお待ちしています。