登山道の草刈り①
「・・そこを何とかお願い出来ないですかね。」
市役所さんに相談されたのが春先のこと。それが
登山道の草刈り
で、そのうち幾つかは、誰も作業の受け手がないのだという。
詳しく聞けば聞くほど、「それは誰もやらんでしょ。」という条件である。
だが、市役所さんにはお世話になっているし、続けるもやめるも、一度やってみないことには判断がつかない。
何より、今は全ての「草刈り」をやってみるべき時期であろう。
そういうことで、
わかりました。
と僕は受諾したのである。
さて。
登山道の草刈りには「適期」ってのがあるんだろうけど、こちらの時間が空いたのは9月に入ってから。満を持して(?)の作業開始である。
刈り幅は1.5mが指定。そうなると2人並んで作業する必要はない。
また、普段愛用しているバッテリー機は不適だろう。
それに、蜂や熊の危険がついて回る。
これらの理由から、僕が先頭でエンジン式の刈払機を回し、少し離れてD氏が燃料タンクや蜂スプレーを持って追従する、というスタイルに決定した。
あとは、「えいや!」である。
このところ気温は下がって来たが、山の中は湿度100%、汗が吹き出る。これは涼しい時期を選ばないとかなりしんどい。
だが、草は田んぼのように生えているわけではないから、メリハリつけて作業していくことになる。
ひたすら登山道を登り、下る。もう草刈りなんだか登山なんだかよく分からない。(笑)
初日の山には登山道が3つ。そのうち一本は荒れて入口すらわからない。そこで僕は、村の旧友に尋ねたのだが、
あそこには数年前に崩れたし、熊が居着いているから気ィつけや!
そして
一人は絶対にアカンで!!
と、しっかり釘を刺された。
命の危険とは、こういうことを言う。
わけのわからん人間界であるが、いつだって自然は変わらない。そこにあるのは四季の移ろいと静寂。人間なんて取るに足らない存在なのだ。
この仕事を、来年も受けることはないだろう。
だがこれも試行錯誤。そう思いながら、僕は山を降りる。
雪解け水の渓流を下る風が心地よい。
夕方、僕達は無事に下山した。