敵将殿
もう4月のことになる。
僕は、ワイオのセッションを受けた。
その中で、僕という「個人」を恨む方々がいることを知った。
考えてみれば不思議はない。
何回も何回も転生してきた中で、他の誰かを傷つけたり、殺めたりしたことはあっただろう・・と思うからだ。
以前、地元のスピの先生とのセッションで、僕はとある前世で侍であり、主君と共に、自害して果てた・・・ということも聞いている。
セッションが始まる。
以下、概要を紹介しよう。
※()は、介在者の言葉。
彼 ・・言うかどうか迷っておった。
言わねば・・と思って残っておった・・・
(ありがとうございます)
低い、低い声だ。闇の底から響いてくる感じ‥と言おうか。
彼 謝罪があるべきではないのか?
(過去生のことか?どんな内容?)
彼 えぐるようなことを聞くな。
過去生の僕が何をしたのか?思いが巡る。
一族皆殺し、家系の根絶やし、もしくは、首を刎ねる・・・
そんなことを思う。
だが・・
ここで僕は、意を決して発言した。
これは、介在者の問題ではない。僕の問題なのだ。
セッションを申し込んだ時点で、もう後には引けないのである。
僕 初めまして。
彼 ・・お前にとっては初めましてかもしれないが、こちらは違う。ずーっ
と見ておった・・・
(「ゆき(僕)」が苦労している)
彼 自業自得ではないのか?
(お互い、殺って殺られる、そういう時代だった。だが、時代は変わっ
た。「闇」から光に変わり、新たに歩み始める、というのはどうか。)
彼 私にとって、あなたは ”敵将” である。
敵・・・か。
「敵」という言葉に、僕は少し立ち止まる。
(・・協力ができるのなら、光として変身して・・)
彼 私にその可能性があるのか?
許してくれるのか?
私はお前の
敵将
であるぞ?
彼に戸惑いが見える。
僕は再び発言した。
僕 私の過去生でそういうことがあったかも知れない。申し訳ないが、正
直、私にはわからない。だが、今生きている身として謝罪申し上げると
ともに、出来る限りのご供養をさせていただく。その上でこれからは、
新たな時代、新たな目標に向けて、共に進んで行けたら、と思う。
後には引けない決意の中で、僕の口から出た言葉だった。
だが、どんな反応が返ってくるのかはわからない。
心臓の鼓動が高まる。
彼 偽りはないな?
ならば、一度やってみたいと思う。
心新たに、酒でも酌み交わそうぞ。
・・こうして一つのセッションが終わった。
意外な幕切れ。
介在者の方によれば、「敵だが、相通ずるものがある感じ・・」がしたとのこと。それは僕も感じていた。
例えば戦国時代、戦うことが定めの世の中であったとはいえ、「敵将」をあっぱれ、と尊厳していた武将はいたのではないか。
やむを得ず戦う。そういうこともあったのではないか。
そして、願わくば一献、酌み交わしたいと思うことがあったのではないか。
・・そんな気がする。
彼は、僕のこれまでの人生に何か影響を与えていたかもしれない。
だがそれをとがめる気持ちは僕にはない。
僕はそれを乗り越えるし、それが僕の「修業」と思っているからだ。
敵将殿との対話であのような台詞を言えたのは、これまでの修行で、知らず知らずのうちに、僕の内側に言葉が用意されていたからだと考えている。
結果として、僕は、「敵将殿」を供養し、彼は光に変わった。
僕は、これからは、時に助太刀をしていただけるよう願いながら、手を合わせた。
敵同士だったものが、今度は、共に戦う。
そういうことだ。
それから数か月・・・
時折僕は、「敵将殿」と飲みたくなる。
バイクが来た時は、「これは鉄の馬でござる。」と紹介し(笑)、桜の時期には「花見酒」に誘った。
僕には彼が見えないが、敵将殿がそこにいて、鎧兜の武者姿で酒を飲んでいる気がする。
敵将殿との酒宴。
これがなんとも、いい気分なのである。