水田の畦畔管理64 ~テクニカルなフィールド~
「ここら辺りを刈ってくれ。」
圃場図をまるく指差しながら、親方が言う。
親方たちの本体は、大麦の収穫作業に入る。また忙しくなる。
そうなると、草刈りなどは「二の次」みたいなことになって、大麦の収穫が終わるまで棚上げされる。そして、まあ、大変なことになる。(笑)
なので、僕という「別動隊」が有効なのだ。
そんなことで僕は、「ここら辺り」というフィールドに向かう。
県道の北側に位置するゾーンだ。
三角とかの、不整形な田んぼが並ぶ。
先ほどの県道、農道、道路直下の太い用水路、お墓・・なんでもアリだ。(笑)
僕は、作業する田んぼの観察をする。
一見してわかるのは、
これは、かなりテクニカルなフィールドだな・・
ということだ。
一口に「水田畦畔」といっても、草刈りがしやすいところと、なんか、妙にやりにくいところがある。これは、実際やっている農家さんならよくわかる事だけど、このフィールドは、まさに後者なんである。
先ほど書いた、道路なんかの種々の「構造物」だけでなく、圃場自体に高低差があり、4m程度の「法面」が付随している。
また、除草剤で土がやせて、石がむき出しになった農道畦畔が何本もある。さらに、県道の法面は、急で深い。交通量も多い。
・・・そんな具合だ。
植生的に言えば、ススキなどの「固い草」が伸びきっているから、ナイロンコードでは歯が立たない。
場所によっては、クズのような「つる草」もはびこっている。
さあ、どうする?ってことになるのだが、僕は、
道具を使い分け
て対処する。
具体的には、
・刈払機+三枚刃
・刈払機+ナイロンコード
・ポールヘッジ・トリマー
である。
手順としては、
1 まず、畦畔の天面など、条件のいいところを「三枚刃」で刈り倒す
2 1で作業できなかった部分で、石が浮いているところは「ナイロンコ
ード」で刈り飛ばす
3 法面は、天面から届く範囲まで「三枚刃」で処理した後、上から「ポ
ールヘッジ・トリマー」で刈り下げて、最後は法下からの作業で仕上
げる。
4 農道畦畔など、足場が良くて、直線状に長いところは、「ポールヘッジ・トリマー」で往復作業する。
5 太い用水のコンクリート際は、対岸に渡って、「ポールヘッジ・トリ
マー」で処理する。
・・こういう内容だ。
こうして、黙々と作業するわけだが、いろんなことが見えてくる。
ここ、ずいぶん荒れてるなあ・・・
ということだ。
担い手に農地を集積するのはいいが、こういった、基本的な
圃場のメンテナンス
がおざなりになり始めている。
写真をご覧ください。
この一角では、「排水路」が埋まってしまっており、草が生えていた。
水路の行き止まりだとは言え、これはちょっと悲しい状況だ。
手が回らないんですね、担い手さんも。
「構造」的な無理が、こういうところに現れる。
やはりなんとかしないといけない!と思う。
この日は所要により、午前で作業終了。まあまあの仕上がりか。
従前がひどい状況であるほど、終わった後は、サッパリ気持ちがいいものである。
最後に・・
このような、変化に富んだ地形・植生のところでは、「たすかる」はうまく機能しない。だから、勢い「刈払機」の出番となる。
刈払機のいいところは、
それ一台で、どんなところでも作業できる
ってとこだけれど、急な法面とか、刈払機では危険なところもある。
なので、適材適所で違う道具を使うことも是非考えてほしい。
能率以前に、あなたの身体を守るためです。