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Sequoia, Accel, GV…世界中から600名超が参加!VC Platform Summit⛱️訪問記
今年の春に、世界中のVC Platform Teamが集まるカンファレンス「VC Platform Global Summit 2024」がマイアミにて開催されました。ありがたいことに参加の機会をいただいたので、その振り返りを残したいと思います!当日の熱量とともに、前提となる「VC Platformとは何か」についても記載しましたので、VCのPlatform Teamや、VC業界全般のトレンドや人の動き・キャリアに関心のある方はぜひご一読いただけましたら幸いです🙌
そもそも、VC Platformとは何か?
50%以上のVCが抱える"Platform Team"の、その歴史と発展
ベンチャーキャピタルのファームの中に内在する、投資業務"以外"の領域でファンドパフォーマンスの最大化に貢献する組織を『プラットフォームチーム』あるいはValueup-Teamなどと呼びます。2007年にa16zにTalentの専門家が参画し、投資先の採用領域について多くの知見を溜めていることは有名なのではないかと思いますが、a16z以降、他のファンドもこの動きに追随し、現在ではTalent領域のみならず、マーケティング・コミュニティ・Biz Dev・ESG等の領域で、プロフェッショナルとしてファンドに貢献する専門家たちが存在します。
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日本でも2017年頃(※清水の観測範囲上)から、特にHR・コミュニティ領域でPlatformメンバーに人材が流れる動きが出てきました(私も2017年でした)が、まだまだメンバーの厚みや実践値等は米国の方が遥かに進んでいると感じます。
世界中のVC Platform Teamが集まるコミュニティ、VC Platform Global Communityの出した統計によると、下記のデータが明らかになっています。(※n=850)
2022年現在、VCの52.8%がプラットフォーム・チームを有しており、その割合は2000年の2倍となっている。AUM10億ドル以上のファンドになると、この割合は92.7%となる。
2022年には、VCファームの中核社員の8人に1人(中核チームメンバーの13.1%)がPlatformに注力しており、2000年の16人に1人割合と比較して2倍となっている。
また、全体的な人口でみると推測では2010年代前半から徐々にVC Platformに従事する専門家たちが増え始め、2016-2017年頃から急激に増えていることが分かります。VCの組成額自体が2015年以降に急激に膨らんでいるため、マネジメントフィーの増加にも連動しているといえそうです。
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では、VC Platform Teamは"VCのマネフィーが増えていて採用の余剰資金ができたから"増加しているのでしょうか?もちろんその前提もあると思いますが、その上でVC Platform Teamがファンドパフォーマンスに与える影響についても同コミュニティが発信しているのでご紹介します。
ファンドパフォーマンスに対するPlatform Teamのインパクト
Significant Platform(メンバーの10%以上がPlatform Team)を備えたファンドは、過去20年間のほぼすべてのヴィンテージにおいて、プラットフォームを備えていない同業ファンドのパフォーマンスを上回った。
過去10年間に、Significant Platformを備えた企業は、Platform Teamを備えていない企業と比較して、Net IRRが1,100ベーシスポイント向上し、TVPIが0.5倍となった。
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ファンドパフォーマンスへの影響については、元データをご参照いただけるとファンドヴィンテージ及びファンドサイズごとの詳細データも閲覧できます。どの切り口でも概ね結論は変わらなさそうです。
投資前と投資後、どちらにPlatformの人員を配置する?
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肌感覚では「そうだよね」と思っていても、データで見ると顕著で興味深いと思ったのは「投資前と投資後、どちらにPlatformの人員を配置するとパフォーマンスが出やすいのか」をファンドサイズごとに表したデータです。
$250M未満(約400億円未満)のファンド:投資前(ファンド自体のマーケティング担当やコミュニティ)の活動に人員を配置し、最適なソーシングに貢献する。(※なんならこの規模の47%のファンドではPlatform無し、というのが一般的な戦略)
$500M以上(約740億円以上)のファンド:投資前の活動はほとんど何もしておらず、投資後のプラットフォーム(=Biz Dev, Talent, ESG)に重点を置いているファンドは、Net IRRが40.6%で、全グループの中で群を抜いて最も高い収益を上げている。
日本においてはこのデータでいうところの$250M未満のファンドが主流だと思いますが、「日本発のグローバルユニコーンを創出する」という大きな目標の中では、海外のレイターステージのファンドが投資後にどのような支援をしているのかを学ぶことで得られる示唆もありそうです。
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年に一度の集結!VC Platform Global Summitについて
さて、前置きが長くなってしまいましたが、このような盛り上がりを見せているVC Platform Global Community が年に1度開催しているサミットに、ついに!参加することができましたので、レポートをお届けしたいと思います。
コミュニティ自体は2013年に発足。私自身は2017年にインキュベイトファンドに参画した当時からオンラインコミュニティには入っていましたが、実際のイベントに参加するのは初めてとなりました。
今年のサミットの特徴
初のMiami開催:アフターコロナ&地理的要因&市長の活躍でMiamiはスタートアップが米国で5番目くらいにスタートアップが盛り上がっているとのこと。クリプトの盛り上がりも影響していそうです。
ラウンドテーブル多め:例年まで「講演」「パネルディスカッション」を全員で聞くスタイルがメインだったが、今年は参加者からの要望もあり、少人数でディスカッションができるラウンドテーブル形式を多く取り入れたとのこと。
本イベントで得られた3つのインサイト
はじめに、イベント全体を通して感じたインサイトはこちら👇
1、Non-USの参加者は体感4割:北米ではシリコンバレー一強時代から、コロナを経てNY・カナダなどパワーが地理的に分散。また、MiamiのSUエコシステムの勃興には地理的・政治的要因*があった
*Miamiが米国No.5のSU地域になった背景
①地理的要因(ラテンアメリカの中心地):チリなど周辺諸国から起業家が集まる/英語が2nd languageの起業家フレンドリー(スペイン語が主流)
②政治的要因:Venture Cafeやカンファレンス・起業家誘致など、エコシステム形成のために政府が施策を主導
2、日本がプレゼンスをあげるためにまだまだ出来ること:日本への興味・関心はあるが、”Closedな国民性”と”言語バリア”でマーケットエントリー・共同出資などあらゆる側面で情報発信とネットワーキングの強化の余地を感じた
・会話の中心はUS/EUで、「最近はAPACも注目している」的温度感ではあるものの、100人ほど話して4-5名、かなり日本に興味がある人がいた(日本の大企業がLPなど)
・Linkedinをやっていないと始まらない
・「個別MTGで投資先のアップラウンドニーズを教えてほしい」「お互いにPRを協力しあおう」という協力的な態度ではあるので、こちらからガンガンいったら実際に成果に繋げられそうな感触
3、USの“VC Platform” の現在地:キャリア面やファンドへの貢献意識など、“Platform Teamの存在感”を感じた。一方、施策や戦略ベースでは極端な遅れは感じなかった
・学びたいと思ったこと:プロフェッショナリズムとキャリア
・以外と変わらないと思ったこと:似た規模・年数のVC間だと、悩みも共通している。例えば、膨らむファンドサイズ/本数/投資先社数に比較してPlatformの人数は必ずしも比例して増員しないけどどうするなど。AIやSaaSによる効率化は頻出したキーワード
その他、具体的に持ち帰ったノウハウやリレーション、また、「カンファレンスの歩き方/ネットワーキングのお作法」といった付随したTipsなどもありますが、まずは今後少しずつ実践して試してみたいと思います。
3 Days Conferenceの様子
ここからは、写真を交えて当日の様子をお伝えさせていただきます。
Day1🍸オープニングレセプション powered by Sequoia
初日は、夕方始まりの立食パーティ。開会の挨拶で、7回目となる今回では500名以上が参加し、そのうちの約半分は初参加のメンバーであることが知らされました。インキュベイトファンドの歴史や私の勤続年数を話すと「歴史長いねぇ〜」と言われることも結構あり、VC Platformの流れは世界的にみてもまだまだ黎明期なのだということを感じます。
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サンフランシスコ・NYから来ている人が体感60%ほど。その他はカナダ・メキシコ・ブラジル・ドイツ・エストニアなど、多様な地域から来たVC Platformメンバーと交流することが出来、日本のマーケットに関して質問を受けると同時に、US/Non-USの人たちのインサイトやその話ぶりに刺激を受けました。
Day 2🏝️ イベント本番!怒涛のセッション祭り
Day2はイベント本番、怒涛のセッション祭りです。7:30開始のメディテーションから19:00開始のDinnerまで、合計10個のセッションに参加しました。前日、夜遅くまで2次会をしていましたが早めに切り上げて正解だったかも。
Peer-connectでVC Platform共通の悩みを解決しあう
午前中興味深かったのは、Airtable, Appleなどにエグゼクティブ・コーチを提供する Velocity Coaching によるセッション。2023年に、50名のVC Platformメンバーへコーチングセッションを行ったところ、下記のような悩みが挙げられたといいます。
・自身の仕事の定義に明確な自信が持てない
・一見華やかな仕事だが、内実は非常にタフ
・自身の価値を低く見られていると感じる
・孤独を感じる
ファンドサイズや仕事の親和性、業務歴などでテーブル分けがされており、ペアになってお互いの話をすることで、一緒に壁を乗り越える仲間を見つけようというセッションでした。ひとり人事・ひとり広報など、「ぼっち⚪︎⚪︎」が発生しやすい日本のスタートアップ業界でも取り入れられそうなコーチングワークです。
具体的な課題ごとにラウンドテーブル
最初のラウンドテーブル*では、「投資委員会メモをどのようにコンテンツに落とし込み、LPコミュニケーションに繋げるか(Turning investment memos into content & LP comm)」というセッションに参加。
※10-15名ほどの少人数で分かれ、ファシリテーターの元、テーマについて情報交換し合うセッション。今回はこれを5回転やりました
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「投資チームを、LPからみて魅力的な存在にすることがMarketingチームの仕事である」「投資の”成功”を語ることは、”我々が世の中に投資した資金”の価値を、どのように世の中に伝えていくのかという仕事である」といった力強い言葉に、彼らのプロフェッショナリズムを感じました。
その他、「プラットフォームチームが投資先の追加資金調達を支援するためにできること(How platform leaders can help with follow-on funding)」というセッションでは、投資家<>起業家のマッチングの精度を高めるためのノウハウやAIを活用した効率化について。その他、「ファンドの成長にPlatform Teamの成長をアジャストするには(Growing your platform adjacently with fund growth)」「投資先のグローバル展開を支援する(Help! How do I help my companies go global)」「LPエンゲージメント(Keeping your LPs engaged)」など、具体的なテーマの元、様々なサイズ感・特色のあるVC担当者のディスカッションに参加することができ、他では得られない情報量と熱量を浴びることができました。
Day3 Hot Topicsばかりの講座中心
最終日となる3日目は、「AI活用」「アドバイザリーネットワークの作り方」「パートナーへのキャリアパス」など全員が関心ありそうなホットなテーマのセッションを開催。
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大盛況のうちに、3日間の「VC Platform Summit」の幕を閉じました。
〜その他、Miami でやったこと〜
IVSほどではないですが、招待制のサイドイベントもありました。企画者と仲良くなってご招待いただけたので、3日目の午後はスポンサーでもあるBolster主催のものに参加させていただいたり、
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また、翌日に大きなテックカンファレンス"eMerge Americas"が開催されるという情報をキャッチし、その前日夜のPre-Eventに参加。
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Miami滞在4日目は、飛行機の時間まで余裕があったので"eMerge Americas"に参加して
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Venture Cafe Tokyoの小村さんにVenture Cafe Miamiのコミュニティマネージャーを紹介してもらい、情報交換させていただいたりしました。
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最後に空港までのバスもタクシーも捕まらず、半泣きになって現地の子にLyftを呼んでもらったのですが、Miamiの交通にはかなり苦戦したのでそこはもっと事前調査しておくべきだったな…と反省。
IFとして、そしてTeam Japanで🇯🇵
ということで、今回はVC Platform Summitのレポートをお届けしました。
インキュベイトファンドをグローバルで勝てるファンドにするため、また、支援先をグローバルで評価されるスタートアップへとご支援していくため、海外VCの考え方や施策を学ぶ機会は今後も積極的につくり、可能な限り提案・実践もしていきたいと思います。
また、1社だけではなくまだまだTeam Japanとして動く必要性も感じており、IVSのような影響力のある機会で海外VCを誘致したり(今年は5Fのセッションを企画させていただきました)、VCの有志の皆さんと「海外ナレシェア会」的なものも開催しています。少しずつ日の目を浴び始めている"スタートアップ業界"ですが、インパクトを出していくのはこれからなので、海外の誘致はもちろん、人材流入にしろESGにしろ、業界全体での横連携・底上げはまだまだ必要と感じます。
世の中の動きと投資先のニーズを行き来しながら、エコシステムのプレイヤーの皆さまの課題感が何で、VC/IFとしていま何を仕込むとインパクトを出せるのか?という視点から、今後も精進していきたいと思います。
まだまだ学び途中なので、ご意見交換、あるいは何か出来ることがあればお気軽にDMにてご連絡ください👇
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