Social Dreamers Vol.1|株式会社qaraq代表取締役 大橋希さん | ヨルダンで暮らす難民に雇用をつくる。
持続可能な未来を創り出すことを目指し、ビジネスに挑戦する社会起業家にインタビューする『Social Dreamers 100 PROJECT』。
第1回目は、株式会社qaraq 代表取締役の大橋希さんをお迎えして、お話を伺いました。
社会課題から得た気づきや、事業を始めるに至った想い、そして立ち向かった困難や叶えたい『夢』について語っていただきました!
ヨルダンで創り出す、新たな仕事の機会
ーーあなたの現在の活動内容について教えて下さい
今は中東のヨルダンという国で、難民の人たちに仕事の機会を届けることを目的にして、木工の工場を運営しています。 そこでオリーブの木を使って、キッチンツールを作って、日本やヨルダンで販売するMUUT(ミュート)というブランドを運営しています。
その前は、日本のピープルポートという会社で働き、『日本に住んでいる難民の人たちに仕事を提供する』というのを目的に、リサイクルパソコンの事業に所属していました。
生まれた国が運命を決める、残酷な現実
ーー現在の活動を始めたきっかけはなんですか?
はい、きっかけに関してなんですがその前にヨルダンというのがどういうところかというのを説明します。ヨルダンは中東地域の中でも真ん中あたりに位置していて、ヨルダンの隣国というのが、シリア、サウジアラビア、イラク、イスラエル、パレスチナになります。
急に、この国名を聞くと、「治安は大丈夫なのか?」とよく聞かれますが・・・ヨルダンはそういった位置にあるので、紛争国が残念ながら周りに多くて、特にイスラエル・パレスチナの問題もありますけど、周辺国から紛争で母国に暮らせなくなったような人たちが難民として、ヨルダンにたくさん逃げてきています。その結果、ヨルダンでは現在、70万人ぐらいの難民の人たちが住んでいます。
私自身、何でこの事業を始めようと思ったのかというと、少し長くなるんですが・・・最初に貧困問題や格差問題に関心を持ったきっかけは、高校生の時にフランスへ行った1年間の留学でした。フランスは移民の人たちが多く住んでいる国でして、人種の格差を目の当たりにし、貧困問題とか格差問題に取り組みたいな、と思うようになりました。ヨルダンには、大学生になってから初めて来ました。中東地域は、「あまりよく知らないところ」という意味で関心があって行ってみたいと思い、夏休みの約2ヶ月間、ヨルダンに滞在しました。
当時は、シリアの内紛の問題が非常に大きく取り上げられていた時期で、シリア人の難民問題がヨーロッパの中で、注目されていました。実際に私もシリアの難民キャンプを訪れたり、 難民家庭に訪問したりして話を聞いていく中で、私が育った日本は、非常に経済的にも恵まれていて、治安も良くて、すごくラッキーな国だなって思ったんです。『日本に生まれた私に、何かできることはないのかな』っていうのを考えるようになったのが、一番の大きなきっかけだと思います。
ーーありがとうございます。高校時代の経験や、住んでいる日本の暮らしとのギャップに何か揺れ動かされる感情があったのでしょうか?
そうですね。フランスは割と先進国のイメージがあったのですが、実際に行ってみて、移民の方たちが目に見えて治安の悪い地域に住んでいたり、教育格差が生まれていたり・・・感情でいうと『理不尽だな』っていうのが一番大きいと思います。
フランスに行き、「何でこういった格差が起きるんだろう」って思ったのですが、その後、大学生になって難民キャンプを訪れて、「すごく理不尽だな」っていう想いが強くなりました。ただ偶然、シリアという国に生まれ、他の国でも、パレスチナという国に偶然、生まれただけなのに、何でこんなに大変な思いをしなきゃいけないんだろうって。そこに生まれた彼らの責任って、本当にゼロなのに、何でこういうことが起きてしまうんだろう・・という悔しさや、ちょっと怒りみたいなのもありました。
ヨルダンへの挑戦:覚悟の裏に潜む不安
ーー社会起業の道に進むことに対して、不安や迷いを感じたことはありましたか?
そうですね。私は元々ピープルポートという会社で働いていたんですが、その前に遡ると、株式会社ボーダレスジャパンという、ソーシャルビジネスを行っている会社に新卒で入社しているんです。
ボーダレスジャパンに在籍したこともあって、周りに社会起業家の知り合いが多い環境でした。国内で立ち上げている人も多くいますが、いわゆる途上国と呼ばれる海外の国、例えばケニアやカンボジアなどで起業をされている方もいました。このような環境にいたということもあり、ソーシャルビジネスで起業するハードルが恐らく、世間一般の方より、低かったんだと思います。
私は、ボーダレスジャパンを辞めて独立し、一人で起業しているんですが、ちょうどコロナ禍の2021年だったんです。その時、ヨルダンは渡航や外出ができるようになったくらいの時期でしたので、『よし!まずはヨルダンに行こう』と一人で決めました。
でも、実際、渡航するってなったとき、『私、ヨルダンに一人で突然行って、何をすればいいんだ』・・・もちろん起業したいって想いはあるけど、ヨルダンに着いた次の日から、一体どういうふうに動けばいいんだろう?って、ふと頭に浮かび、急に不安が押し寄せてきました。振り返れば、一番その日が不安だったと思います。
勢いで決めた渡航と起業で、それこそ前職のピープルポートの社長にも、「ヨルダン行きますんで、辞めさせていただきます!」って言っていたのですが。ヨルダンに行くことは決まっていたけど、実際、自分の中でどうしよう、何からやろう・・・みたいな不安がすごくありました。
彷徨い続けて、ようやく見つけた大切な仲間
ーー大橋さんの転機となった人との出会いや出来事を教えてください
そうですね、これだ!みたいなのがあったわけでは実はなくて、少しずつ大切な出会いがあったという感じですね。
例をあげると、トレーニングできる木工職人を見つけたことですね。オリーブの木を使って木工の事業をやりたいことは決まっていたんですが、私自身、木工の知識が無かったんですよね。そうするとまず最初に、木工技術を持っていて、かつ難民の人たちに教えられるような人っていうのを見つけなきゃいけなくて。そこがまず最初に苦労した点でもありました。
元々、知っていたヨルダンに住んでいる日本人に、「こういう人を探しているんだけど知っているかな?」と聞いて、またさらに紹介してもらった人に聞いて、というのを繰り返しました。そうして、やっと一人、木工の工房を自分で持っていて、トレーニングしてもいいよっていう方に出会ったっていうのがあります。そこは事業を進める上で、すごく大きかったかなと思っています。
ーーありがとうございます。その方に出会えるまでに、どれくらいの時間がかかったんですか?
1ヶ月〜2ヶ月とかだと思います。本当に、毎日のように紹介をしてもらっていて、Googleマップを使い、オリーブの木工について調べて訪問していました。結局、その方法では見つからなかったのですが、オリーブ工房を何箇所も見て回りました。おそらく1ヶ月近くやっていたかなと思います。
材料の調達に関して言うと、知り合いを通じて連絡をとる方法をやっていたのですが、結局ちゃんと見つからなくて・・・これだったら直接、現地に見に行った方が早いなと思いました。 オリーブの栽培が盛んな地域があるんですけど、そこまで行って車で見て回って、 『ここオリーブの木が多いから、調達できるかもしれない』というので最終的に見つけました。今でも継続して、その場所から仕入れをしています。
働く価値観の違いに直面して、悩んだ日々
ーー起業してから今まで、特に困難だった出来事や試練は何でしたか?
先ほど、お伝えしたような原料の仕入れの話もあるのですが、一番大変だったなって思うのは「人」でした。ヨルダンという土地は、みな同じ価値観を共有してない地域でもあって、例えば『仕事に時間通りに来る』とか、『責任を持って仕事をやる』とか、そういう価値観がない人も多いです。
例えば、経験がないと難しい、大きな丸太を切る工程を手伝ってくれる人がいたんですが、その方とは仕事の価値観が合わなくて。「時間通りに来ない」「作業日に来ない」ことがあり、注意をしても逆ギレされることもありました。信頼して、仕事を一緒にやっていけるって人を探すことが一番の困難でした。
ーー働くという考え方が日本と全く異なりますね。今は、信頼をおける方が見つかったのですか?
そうですね、考え方の違いに、非常に苦労しました。結果的に価値観が合わず、辞めてしまう方もいれば、「毎日9時、3時に工房に来る」ことができないからと、働くことを断った方もいました。その考え方が新鮮といいますか・・・私は時間通りに働くことが仕事だと思っていたのですが、ルーティーンで仕事をすること自体が、あまりにも新しいことで難しいという現実がありました。
そういった中で、私も徐々に学んでいき、『仕事ってちゃんと責任を持ってやることだよね』や『木工そのものが楽しい』って思ってくれる方を優先しなきゃいけない!と考えるようになりました。それから採用の見直しをし、今では『自分が与えられた仕事に、責任もって取り組める人』たちと一緒に働いています。
想像以上に大きかった、基礎教育と価値観のギャップ
ーーその困難が、大橋さんにどのような変化をもたらしましたか?
そうですね。やっぱり一番大きかったのは『基礎教育や価値観の違い』が、これだけ世界では大きいんだなと感じたことです。難民の人を採用するにあたって、以前、働いてた方で、『円の概念とか、定規をちゃんと読めない・測れない』といった方がいました。基礎教育の部分から違うのか、という点は非常に驚きを感じました。
驚きと同時に、この内容から教育することを考えると、想定以上に大変だなというか・・実際に商品を作れるまで、どれぐらいの月日がかかるんだろう?と感じました。自分が想定していたレベル、『これぐらいでいけるだろう』という思惑は、全く当たらないんだなと学びました。
私が採用した難民の人達って、小学校は普通に出ているんですけど、その後の人生が大変で教育を受けれなかったり、そもそも日常生活で使わなくて分からなかったりという人が恐らく多いです。識字率は世界平均と比べると、アラブ圏は非常に高いので、文字を読むことはできる人が多いんですけど。教育はちゃんと受けたけれど、円の概念や定規の使い方などは日常生活でほぼ使わないから忘れてしまっているという印象です。
難民問題を超え、『誰もが居場所を持てる』社会に。
ーー大橋さんの抱く夢は何ですか?
私は、難民問題に出逢いました。紛争や人権侵害などが原因で母国を出なきゃいけない人たちというのが、難民と呼ばれています。難民がいなくなる世の中を創るのなら、紛争を止めなきゃいけない。でもそれは、すごく難しくて・・・だから将来的に難民ってすぐにはなくならないと思ってるんです。
例え紛争がなくなったとしても、人種差別や宗教差別、小規模な争いが起きて、生きづらい人たちって、生まれてくると思っています。その生きづらい人たちが、自国を出て他の国にも受け入れられるような環境づくりが、世界中で必要だなと思っています。
もちろん難民の人たちが今すぐ収入を稼いでいくことが大事で、一番それを目的に活動しているんですが、プラスとして『社会が、他の場所で生きづらかった人を受け入れて、社会の一員として生活できるよう整える手伝いをする』、そんな世界になっていけばいいなっていうのが、一番、私の壮大な夢です。
難民の人たちが逃げた先で雇用を創出して収入を得ることも大事ですが、受け入れた側の国の人たちとも交流が生まれ、どんどん社会に溶け込んでいくような場所もつくっていきたい。
まずは、一人や二人からになるけれど、そういう居場所をつくるために、これからも仕事を提供していきたいって思っています。
失敗を恐れず、まずは小さな挑戦から
ーー最後に、読者に伝えたいメッセージがあれば、お願いします!
おそらく読まれているのは、これから何か取り組もうかな!って思っている方が多いのかな、と思います。それをふまえて、一言お伝えします。
『まずは、やりたいことがあったら、すごく小さな形でも一つやってみる』というのが、とても大事と思っています。
私自身、起業というのを決断するまでに、時間がかかりました。ヨルダンに行ったのが大学生の時でしたが、そこから5〜6年経過してから、『よし起業しよう!』って思ったんです。すごく時間がかかってしまったんですけど、関心があるなら小さなことでも、例えば、「ヨルダンにもう一回行く」や「ヨルダンのかわいいお土産を買って日本で販売してみる」とか。そういう小さいところから、一歩早く踏み出しておけばよかったな、っていうのは思います。
本当に小さい一歩だったとしても、「これ、うまくいかないかも」や「これって、すごく楽しいから早めにやったほうがいい」など、大切な気づきが得られるので、小さな一歩を踏み出すっていうのが大事かなと思っています。
そこに付随して、もう一つお伝えするとすれば、やっぱり『失敗が怖い』という感情が起業する上では、すごくあると思います。
クラウドファンディングを例にすると、最初、リターンとかもほとんどない状態でお金だけ集めるっていう、自分のやりたいことだけを語ってお金だけ集めるっていう方法で実施しました。本当に、こんな方法でお金が集まるのかな?とか、この商品を作ったところで、一体、誰が買ってくれるんだろう?とか、そういう不安がすごくありましたが・・・実は、ほとんどのことが失敗するんです。
よし、これをすると、うまくいくかもしれないって思ったことって、ほとんど失敗します。でもそれを続けていると時々、これはうまくいく!というのが、20回に1回や、100回に1回かもしれないですが訪れます。それぐらいの確率なので、例え失敗したとしても、「この選択肢は消す」っていう意味での良い経験だったと捉えてもらえたらいいなと思います。
私自身、失敗があるのは当たり前の世界だと思っています。そんなに凹むこともなく、とりあえず100回に1回は当てにいこうっていうのだけ考えて、行動してほしいと感じています!
🔥クラウドファンディングのお知らせ🔥| 難民のない世界を創るための、新たな挑戦🔥
ーー今、実施しているクラウドファンディングについて、想いを聞かせてください。
はい。元々はMUUT(ミュート)を運営して、木工の事業をやっていたんですが、「難民の女性に仕事を作る」ことを考えると、日本人と同様、仕事の向き・不向きがあるということに気づいたんです。
例えば、木工は、重い木を運ばなきゃいけなかったり、危ない刃物が付いてるような機械を扱ったりするので、そのような環境で働くことに抵抗を感じる女性が多くいます。
もっと多くの難民の女性に仕事の場所を提供していくには、木工事業とは別の形で、仕事をつくることが必要と考えるようになり、たどりついた答えが『ジュエリー職人』という仕事です。
今回実施するクラウドファンディングでは、ジュエリーの職人さんにアラブのデザインを取り入れたイスラムのモザイク柄のシルバーのアクセサリーを作ってもらい、日本で販売したいと思います。
その売り上げたお金を、難民の女性をジュエリー職人に育てるトレーニング費用に充てたいと考えています!
ぜひ、クラウドファンディングのプラットホームから、シルバーアクセサリーを購入いただけたらと思っています。こちらの支援金は、更なる難民の女性の雇用促進に繋げていきたいと考えています!
🔥🔥こちらのリンクから、熱い支援&メッセージをお願いします🔥🔥
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・ブランドページ(MUUT)
・Instagram(MUUT)
・X(大橋希さん)
最後まで、お読みいただき、ありがとうございました!
インタビューを通して、大橋さんの想いや夢が、皆さんの心に響いたなら幸いです!!
これからも『Social Dreamers 100 PROJECT』は、社会にインパクトを与える挑戦者たちの声を届けてまいります!
インタビューから何か感じたことがあれば、ぜひ“スキ”で応援を。また、シェアしていただけると嬉しいです!
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