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元マイナビ副編集長が転職をきっかけに新卒就活を考え直してみた

2024年4月をもって、丸15年務めたマイナビを円満退社しました。
(いまだに講師の仕事の相談をもらえたり、ありがたい)
新卒採用のマイナビ副編集長として5年、学生や採用関係者向けのさまざまな機会で話をしてきました。
基本的には素直に就活を語ってきましたが、辞めてみると、ふと「もっと学生に対して、企業に対して言いたかったことがあるかも」と感じてきました。

ということで、、、
ここではマイナビという会社だからこそできた経験と、辞めたからこそ話せる話を書き残しておきたいと思います。


就活に対する違和感

小説として話題になった「何者(朝井リョウ 著)」や、最近だと「六人の嘘つきな大学生(浅倉秋成 著)」。
もちろん取材や実体験に基づくものであり、就活を表す一端であることは事実である。とはいえ、これらの世界観が一般的かというと、就活に長く携わる身として違和感がある。

これらの小説や学生の間で漂う違和感とは?
それは、就活が「辛い」「嘘をつくのが当たり前」として考えられがちなことだ。
上記のいずれの小説も嘘で繕うことが、当たり前の所作(ルール)のように書かれている。

確かに、就活は難しい。
自分自身のことを言語化することは社会人でも難しいし、日本だけでも300万社以上ある企業から自分に合う企業を探せというのもムリゲーと思われてしかたない。
就活生あるいは就活前の学生と話すと、過度な不安や嫌悪感、忌避感を口にするシーンと出会うことも多い。
ただし、就活に長く携わると、就活を語る上で必ずしも「苦しさ」が当たり前で最も大きい要素とは言えない。

就活は”選ばれる”意識が強すぎる

多くの就活生は「内定をもらう=選ばれる」ことを中心に就活を語る。
「売り手市場(就活生有利)」といわれる昨今、売り手(就活生)は「内定後」に強く出られるようになり、内定辞退が問題になったりもするが、こと「内定前」、特に「NNT(無い内定)」においては選ばれることに必死だ。
このように、就活生はある種”生殺与奪”の権利を企業に委ねすぎている。

本来、求人企業と求職者は対等であり、お互いに選ぶ権利がある。
ところが、就活生は初めて就活をする一方、企業の採用担当者は基本何年も経験がある(だろう)という経験・情報の偏りがあるため、就活生はついつい風下に立ってしまう。
ただ、マイナビの立場で両者の間に立ってみると、正直大した差がない。

そもそも就活において、両者ともに情報が”全て”揃うことはない。
なぜなら、両者とも自らのすべての情報を認識できていないからだ。
就活生の自己分析が不十分だ、ということは想像しやすいだろう。

一方、企業に目を向けてみると、ほとんど就活生と同じであることに気づく。
面接に出てくる採用担当者や先輩社員、管理職が、他社と比較した強みや、自身の5年後・10年後について、会社の5年後・10年後について、どれほど理解して語れるだろうか?
採用担当者や企業の役員が、はたしてどれくらい現場の”今”、”リアル”を語れるだろうか?(採用担当者においては、現場の汚い部分、泥臭い部分をあまり知らないからこそ、心を込めて会社のキレイなところを話せるという側面もあるだろう。これはよく企業が嘘をついて会社のキレイなところしか話していない、の事実の一端ともいえる)

あくまで両者の違いは、立場に関する”意識の差”と、”慣れ・経験の差”でしかない。
ただし、この差がとても大きくなっているのが現状だ。

改めて、就活は希少性の高い機会

今回、久々に転職活動をして改めて実感したが、、、
就活(特に新卒)は極めて有用で、希少な機会だということだ。

なぜか?
それは、就活は「なんでも聞ける、教えてもらえる場」ということだ。

就活生というだけで、説明会など情報収集の場が保証されており、質問をすれば概ねほとんどに回答してもらえる。
さらには、最近ではインターンシップやオープン・カンパニーという形で、その企業の職場やメンバーと直接触れられる機会まで増えている。(プログラムや参加時の心構え次第で、能力開発までできる)
企業側にとって採用確度の高い就活生に対しては、現場社員やOBOGを紹介してもらえることもある。

”慣れや経験”で劣る就活生ではあるが、そのビハインドに対して十分すぎる対価としてチャンスが用意されている。

大事なことは、”Bet”すること

これまでの話をすごーく簡単にまとめると、、、

  • 就活生は”選ばれる”ものと思いすぎ!

  • 就活中の機会は思っている以上にチャンスで、希少なことに気づけ!

となると、どのように就活に取り組んだらいいのか?
学生や就活生にとっては、もしかしたら少しわかりづらいかもしれないが、、、
就活は”投資”の感覚で取り組んでほしい。

投資で言われるように、「必ず儲けられる銘柄」というものはわからない。
最後は信じて賭ける(=Betする)ことが求められる。
就活も同様に、「必ず自分に合った、活躍できる企業」というものはわからないため、最後は自分を信じて”Bet”することが必要だ。
どこまで調べても、何度説明を聞いても、すべての不安を払拭することはできない。
とはいえ、「できるだけ安全安心にBetしたいよ!」というのが本音だろう。(いや、攻めの投資やギャンブラータイプもいるかもだが、、、それも投資スタイル(自身の特性)といえるだろう)
”投資”の例えに倣うと就活をする上で心がけることは大きく2つだ。

  • 自身がBetできるものを積み上げる

これは就活でよく使われる「自己PR」を1つ見つけろというものではない。
就活生がBetできるものは1つではない。経験・能力・夢(期待値と言い換えることもできる)など、さまざまなものをそれぞれ積み重ねている。

もちろん、社会的な基礎能力の高い人や多くの経験を経ている人は、たくさんのBetできるものがあるので大きな勝負をすることができる。
就活中でも多くのチャンスが用意されているため、機会を有効に使うことで多くのものを得てBetできる材料を急増させる人もいる。
逆にBetできるものが少なく悩む人や、「嘘」という贋金を作って自分がなんなのかわからなくなる人もいる。(正直、就活を違うゲームにしてしまっていて、もったいないと感じる人だ)

・自身がBetできるものは何か?どのくらい評価できるか?
・どのようなBetの仕方をするか?
・Betできるものを増やすにはどうするか?

といった考えで取り組んでもらいたい。

  • できるだけ対等になるための準備をする

”対等に”ということが重要である。
共通の話題として、その企業のことを調べて知っておくことはもちろん大事だが、それ以前に「会話力」の方が必要だ。

「会話力」とは、「面接の力(≒プレゼン力)」ではなく、社会人や年長者など自身と価値観が異なる人と”普通に”話せるようにすることである。
これは多くの就活生が誤解していることであるが、面接以前に、そもそもである”普通に”話せるトレーニング、経験をしていない学生が多い。
これはインターンシップなどにたくさん参加していても、学生同士で与えられたワークやロール(役割)しかやっていない学生が勘違いしがちなことでもある。

日常生活に置き換え、服やスマホ、家電などを購入するときを想像してもらいたい。
お店で店員さんが、自分に合ったもの、ほしいものを提案してくれるか(=プレゼン力)はもちろん大事だ。
だが、その前、声をかけてもらった際に、明らかにたどたどしかったらどうだろう?あまりに間が悪かったら?そもそも相談をしたい、プレゼンを聞きたいと思えないのではないだろうか。
もちろん、コミュニケーションは人によって得意不得意がある"スキル"ではあるが、「会話力」だけでいえば”慣れ”や”練習量”の要素が強い。

就活生はついつい「面接」というパワーワードに引っ張られてしまうが、まずはそもそもの「会話力」を身に着けるために、たくさんの話す機会を持つことを意識して取り組んでもらいたい。

おわりに

今回は就活のノウハウというより、心構えのような概論的な部分からまとまりました。
就活のセミナーなどでは、なかなかこの粒度の話をする機会ってないんですよね。(目先のTips・ノウハウが欲しいのが就活生ですし)

ひとつずつ、整理をしながら書き残しておくことで、就活に必要な情報が網羅されるような記事なればうれしいなと思いつつ、、、
時間を見つけながら就活生に役立つ、というより、一方的に伝えたいと感じたこと?を書いていければと思います。
(最後は、本にできるくらいになったら・・・とか願いつつ)

最後までご一読いただきまして、ありがとうございました。

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