
しずく流れ
昨夜から雨が降っている。
今はお昼だけど、
外はぼんやりと薄暗い。
シャーーー…と車が水しぶきをあげて通り過ぎる音
サーーサーー…
ボタン ボタタタン…
雨音もはっきりと聞こえる。
雨の日、ふとした瞬間
思い出す言葉がある。
『しずくながれ』
大学生時代、モノレールに乗って通学していた。
朝のラッシュも過ぎたあたりの頃、
今日みたいに雨が降っていた日
目の前に4、5歳くらいの女の子と、そのお母さんが座っていた。
女の子は、座席に膝をついて窓の外を眺めていた。
モノレールは結構高い所を走る。
シューン…と走るモノレールから、
雨の街を見下ろしていた。
『ママ~、見て見て!しずくながれだよ~!』
『ん~?どこ?』
しばらく窓の外を探すお母さん。
『ほら、ここ!』
『ほんとだね、雨がたくさん降って、川みたいに流れてるね~…』
『…』
こんなやり取りだった。
女の子はお母さんに『しずくながれ』を
見てほしかったんだけど、
お母さんはそれが何か、よくわからなくて
【道路を流れる雨が川みたいだね】と言っていた。
私はそのやり取りを聞きながら
ぼ~っと窓の外を見ていた。
そして、あっと思った。
女の子の『しずくながれ』を見つけたから。
モノレールの窓にたくさんの雨粒が
ついている。
モノレールが走ると、
その【しずく】たちが
ポロポロ、ぽろろろろ… と流れて行くのだ。
女の子はその様子が面白かったんだと思う。
素敵な感性だな、と思った。
女の子の不思議な世界を
のぞかせてもらった氣がして
私も嬉しくなった。
あの女の子は今はどうしているかな。
大人になって、今なにをしているのかな。
窓ガラスに張り付いていた
しずくたちのこと、覚えているかな。
そんな事を思った雨の日でした。
**************************************************
最後まで読んでくださりありがとうございます!
あなたとのご縁に感謝です☔