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わがままがいい。素直がいい



お前らなんか、大っ嫌いだ。




こんなふうに
嫌悪感をあらわにしたのは
どのくらいぶりだろうか。


こんなにも嫌いだと表明したのは
いつぶりだろうか。


いや、違う。


はじめてだ。


こんなにも、ストレートに
人を嫌いだと言ったのは
はじめてだ。


今までこの人は苦手だと、
一緒にいると負担になると
思ったことは何度もある。


明確に嫌いと言わず、
苦手だと、怒りを抑えたかたちで
自分の負担感を表現したことはある。


でも、大っ嫌いだ、と
感情をあらわにしたのは
はじめてだ。




なぜ、そうしなかったのだろう。


そう考えると、
思い当たるふしが2つあった。




1つは、大人ぶっていたこと。


大人は感情をあらわにしてはいけない。


感情的になってはいけない。


嫌ってはいけない。


ずっとそう思っていた。


苦手だ、という表現にとどめ、
嫌うという行いはしてはいけない。


そう思い込んでいたことが
思い浮かんだ。




そう思っていたのは、
昔、そういう記事を読んだから。


理由は思い出せないが、
嫌いと思うのはよくないから
苦手と言い換えよう。


そんな文章を鵜呑みにしたのだ。


最近まで、そういう癖があったから。


自分は正しくない、他者は正しい。


そう思っていたからだ。


だから、盲目的にそれを実践していた。


試すということはせず、
ひたすらに身に染み込ませた。


拒絶反応があっても、
自分は正しくないのだからと思って
その感覚を無視した。


それで、
苦手だという表現を
するようになったのだ。




もう1つは、
恩を仇で返すことになる
思っていたことだ。


この人には恩がある。


これまで気にかけてくれたし、
守ってくれたこともあった。


迷惑をかけても許してくれた。


だから、怒りを向けるのはよくない。


嫌悪感を示すのは、
恩を仇で返すことだ。


どんなに憎くても、
それをあらわにすることは
許されない。


世間は許してくれない。


わがままはダメだ。


そう思っていた。




だから、そういう感情を
抑え込んできた。


抑え込みすぎて、
それが日常化し、
そうしていることを
もはや認識できなくなっていた。




だけれども、昨日、
すごく胸が苦しくなったのだ。


元彼のことを
思い出していたときだった。


彼の愛が僕の心を
満たしてくれていたことを
思い出していたとき、
唐突に胸が苦しくなったのだ。




痛い。


苦しい。


最初は、彼にこの感謝の気持ちを
伝えられないもどかしさが原因だと
思っていた。


しかし、それを自覚しても
胸の痛みはおさまらない。


なぜ?


それ以外に
思い当たるふしはないのに、
なぜこんなにも苦しいのだろう。


そんな思いが胸のなかを
ぐるぐるしていたとき、
ふ、と思った。




僕は怒っている?


憎しみを
いだいているのではないか?


誰に?


彼のように
愛してくれなかった人たちのことを。


なぜ?


あんなにも尽くしたのに、
言いなりになったのに、
彼のように
心をあたためてくれなかったから。


愛をくれなかったから。




すとん、と腑におちた。


腹落ちした。


胸のくるしみが楽になった。




そうだったのか。


ああ、そうだったのか。


とすれば、この思いを
明らかにしたらどうなるだろう?


好奇心が湧いた。


だから、
自分にこうすることを許してみた。




ぶちまけろ。


思いのたけを、
これまで抑圧してきた
怒り、憎しみ、嫌悪感、
すべての感情を出せ、と。




すると、僕のなかの
世間体や罪悪感が反発した。


大人であれ!


自分のことを棚に上げて!


人のことを言えないくせに!


自分勝手!


わがまま!


恥を知れ!


そんな罵倒が聞こえてきた。


けれど、無視する。




そんなこと、知るもんか!!


ぜんぶ吐き出すんだ!!


そうして、
その思いのままに吐き出した。




憎い。


許せない。


嫌いだ。


大っ嫌いだ。


お前なんか、お前なんか…、
大っっっ嫌いだ!!!!




そんな思いをぶちまけた。


止まらない。


あんなに尽くしたのに、
尽くしてるのに、
反応一つかえしやしない。


恩を仇で返してるのは
お前たちのほうじゃないか!


自分勝手!


自分ばかり可愛がって!


あんなに優しくしたのに、
責めなかったのに!


自分がされたら手のひらを返して!


お前なんか、お前らなんか、大っ嫌いだ!




自分のことは棚に上げて、
ひたすらに胸のうちをさらけだした。




お前らのために、心を砕きたくない!


もう絶対に尽くさない!


尽くしてやるもんか!




そう言い切った。


思い切って、断言してみた。


すると、胸の痛みがおさまった。


すっ、と苦しさが消えた。




そして、気づいた。


わがままになって
よかった
んじゃないか、と。


わがままになって、
好き嫌いをはっきりとあらわすほうが
よかった
んじゃないか。


自分勝手と言われようとも、
自分の気持ちに素直になるほうが
よかった
んだ。


そう、気づいた。


気づいたのだった。




どっと疲れた。


もっと早く気づければ、
苦しまずにすんだのになぁ。


そんな思いが胸のなかを駆けめぐる。


今までの自分ならば、
大人ぶっていた自分ならば
こう言っただろう。


「今だから気づけたんだよ」
「気づけてよかったじゃないか」


だけど、もうそんなことは言わない。


僕は、わがままになる。


素直になる。


だから、こう言う。


言ってやる。




あー、アホなことした!!!!


時間と気力をムダにした!!!!


早く気づきたかったなー!!!!


お前らに使った分を返せよ、もう!!!!




胸のつっかえが取れていく。


モヤモヤが晴れていく。




やっぱり、わがままがいいのだ。


素直なのがいいのだ。


だから、
これからはそうやって生きていこう。


生きていく。





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