発達心理学の応用レッスン♪
こんにちは、辰巳です。
前回、前々回と発達心理学を応用した子どものレッスンについてお話しました。
その時に、小さな子どもの発達上の特徴などはいくつかご紹介しましたが、
今日はもう少し詳しく、他の年代の特徴についてもお話します♪
発達心理学では、
0〜2歳を「感覚運動期」
2〜7歳位を「前操作期」
7〜11歳位を「具体的操作期」
11〜青年期を「形式的操作期」
と、それぞれ呼びます。(J.Piaget)
レッスンを開始する生徒さんは、前操作期か、または具体的操作期初期の場合が多いですね。
この「操作期」という言葉、気になりませんか?
一体何を操作しているの?
と思いますよね。
これは、「表象操作」の事です。
「表象」というのが、またまた分かりにくい言葉ですよね(^_^;)
「表象」とは、心の中の世界で、抽象的な概念や、心に思い浮かべる外的対象の事です。
抽象的な概念とは「愛」とか「勇気」など。
心に思い浮かべる外的対象とは「母親と離れた場所にいても母親は存在していると認識出来る事」、のように、目の前にないけれど心の中にある物です。
「見えないけれど存在する物事」位の理解でオッケーです(^^)
すなわち、前操作期とは、表象操作が出来るようになる前の段階という事です。
表象操作が出来ないという事は、目の前に見えている物事しか理解出来ないという事です。
幼稚園位の子供が、母親と離れる時に「お母さんがいなくなる」と感じてしまって不安で大泣きしてしまったり、
「離れて暮らすおじいちゃんが死んじゃった」と聞かされても、ピンと来なくてあまり悲しまなかったりするのはこのためです。
内発的達成動機(やりがい、達成感など)が理解出来ないのも、抽象的な概念が理解出来ないためです。
なので、
「表象操作が出来ない」→「見通しが立てられない」→「視覚からなら理解出来る」→「イラストを活用する」となるわけです。
イラストは抽象的な概念を可視化してくれるというワケです(^^)
市販の楽譜やテキストをご想像ください。
幼稚園児を想定したテキストはイラストがすごく多いですよね。これが、小学生向けになると、イラストの分量が減ってきます。
これは、イラストがなくても音楽の表現を想像出来るようになってきていると仮定された発達心理学に基く作り方だと思います。
前操作期の特徴は他にも色々ありますが、また機会がありましたらご紹介しますね。
前操作期の次は「具体的操作期」です。
小学校低学年〜中学年位までの子どもです。
この時期には「表象を具体的に頭の中で操作」出来るようになってきます。
つまり、今までイラストでしか理解出来なかったような事を、言葉だけで理解できるようになってくるわけです。
「概念」を「イラスト」ではなく「言葉」から可視化する事も可能になって来ます。
とはいえ、そこはまだ小学校低学年。
イラストも併用しながら、分かりやすい説明なら理解出来るというところでしょうか。
ここで大切なのは、「先生の言語化スキル」です。
つまり、「難しい事をどれだけ簡単に説明出来るか」「見えない物をどうやって言葉にするか」という事です。
テクニックって感覚的な部分が大きいと思いますから、言葉で説明するのって難しいと思います。相手がもっと大人で、体の構造の話なども理解してくれるならばジックリ説明出来るかもしれませんが、子ども相手にその説明は無理でしょう。
説明は出来るだけシンプルである事が望ましいです。
さらに具体的操作期になると、物事をカテゴリー分けして考えられるようになります。
ですから、レッスンでは、「指のためのハノン」「基礎力のためのツェルニー」「表現のためのブルグミュラー」のように認識して、目的別に複数のテキストを使えるのです。
幼児のレッスンでは、あまりそういったテキストの選び方はしませんよね。
目的別に複数のテキストを使えるという事は、発達が進んだ証拠です。
しかし、ただテキストを与えるだけでは、自分でテキストの目的を考えて理解するところまではいけないと思いますから、そこは先生がよく説明してあげるようにしましょう。目的が明確でなければ、ハノンやツェルニーは飽きられてしまいやすいので注意が必要です。
もう一つ注意点があります。
9〜10歳の子供は、成長のスピードに大きな差の出る年齢です。
体力、理解力、また精神的にも、体格も、まだ2年生位の子もいれば、成長の早い子はもう、大人のような考え方、体格の子もいます。
成長の遅い子はきっとしんどいですよね、勉強もまわりにどんどん置いていかれる気持ちでしょう。
レッスンでも、みんな難しい曲を弾いているのに自分はまだ簡単なものしか弾けないのです。
ここで、「もう五年生なのにこの子だけ進まないなぁ、、どうせサボってるんでしょ!」と思ってしまわずに。
先生のイライラって、生徒さんが「出来ない」時に起こりがちですよね。でもその時に、イライラではなく、「出来なくてしんどいんだろうな」と思ってあげられたら、生徒さんだけでなく先生ご自身の気持ちも穏やかになる事と思います。
気持ちにしっかりと寄り添って、劣等感を持たないように接してあげる事はとても大切です(^^)
次は「形式的操作期」です。
小学校高学年位のイメージです。
この時期には、複雑な内容や、仮定に基づく表象であっても頭の中で操作、理解する事が出来るようになります。
「仮に愛が人を苦しめる物であってたとしても彼等は愛から逃れる事は出来ない」
みたいな文があったとします。抽象的な概念の話を仮定でしていますよね。しかも主語が三人称ときていますから、抽象的度マシマシです。
こういう言葉や文章であっても、「何となく分かる感じがする」、
つまり、大人と同じ思考能力になる、という事です。言語理解もほぼ大人と同等です。
ちなみに反抗期もこの時期ですよね。
これは、形式的操作期に入った証拠です。
大人と同じ考え方が出来るように成長してきたからこそ、まわりの意見に疑問を持ち始めるのです。
「今まで言われて来た事、ホントにそうなの?」
「まわりの大人は正しいのか?」
とりあえず、言われた事をすんなり聞きたくありません。自分の頭で考えたいのです。
でも、まだ経験未熟な小学生。
素直に従いたくはないけれど、かと言って自分に確固たる意見があるワケでもない、それも悔しい!
モヤモヤーームキーー!うっせークソババア!
、、となるわけですね( *´艸`)
この時期は、レッスンでも色々大変な事が多いかもしれません。
でも、「大人の階段、絶賛登り中♪」の姿を暖かく見守ってあげたいですね(^^)
ここを越えた子供達は、本当に大人らしく成長するので、過程を見てきたコチラはジーンとしてしまうものです。
レッスンでの嬉しい瞬間の1つです(*^^*)
ちょっと反抗期に話が逸れちゃいました、
「概念を可視化するには言語化スキルが必要」
に話を戻しましょう!
「概念を言語化する」トレーニングをしてゆきましょう(≧∀≦)
まずは「脱力」。
言葉での説明、難しいですよねコレ。
脱力の方法を、前操作期、具体的操作期、形式的操作期の生徒さんそれぞれに、どのように説明するのが良いでしょう?
次は「音楽的な演奏」
これも言葉での説明が難しい物の1つです。
年齢に合わせて、どのように説明の方法を変えますか?
生徒さんに伝わるよう、考えてみてください♪
、、、、
いかがでしょう?うまく出来そうですか?
脱力や音楽表現の説明はレッスンには付き物ですよね。こういった事を色々な年齢の発達段階を踏まえて説明出来るようになっておくと、とっても役立つと思います。
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演奏家と先生の違いは、
「演奏家」•••自分が出来れば良い
「先生」•••自分が出来る事を相手も出来るようにする
という事が出来るでしょう。
相手にも同じ事をさせるためには、
自分の技術を言語化する能力が鍵です🗝
さきほどの「脱力」「音楽的な演奏」の言語化が難しかった!と思われた先生!
コレを鍛えるトレーニング方法は、、、
機会がありましたらまた別の記事でご紹介しますね( *´艸`)
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今日は発達段階の特徴のお話でした。
これをキッチリ意識してレッスンを進めるとなると、かえって窮屈でレッスンがしづらくなる事もあるかもしれませんね。
1つでも良いので、「役立つかな?」と思われる事を、先生方が使いやすいようアレンジされる事で、レッスンの困り事が1つでも減ってくれると嬉しいです。
お読みくださってありがとうございました♪