ダレの大冒険(前編) #短編小説
「冒険型バーチャルリアリティー
あの人の過去をおとどけします」
バーチャルリアリティもここまできたか。
2050年、我々人類は未曾有の感染症を乗り越え、直接の触れ合いなく仮想世界で触れ合う技術を開発した。
今や、どこにいても仮想世界にトリップできる。
国境を越えることになんの新鮮味もなくなった現代社会に、投入された新サービスが冒頭の冒険型バーチャルリアリティーだ。
誰かの過去にタイムトラベルし、
記憶を追憶するような体験ができる。
主人公は誰かになりかわった体験者だ。
非常にリアルな体験ができるという口コミで、提供開始直後から人気は大爆発。
今や世界中を虜にしている。
誰の体験をするかは、提供会社が独自開発したAIが決める。
体験者の体の中にあるあらゆるセンサーから、その人が1番望む体験を探し当てるらしい。
色褪せない天才、●ティーズジョブ●や、
あの世界的な宗教家、ゴータマシッ●ールタ
の過去を体感した人もいる。
これらはゴールド体験と呼ばれ、体験記事を投稿するものまで現れた。
ゴールド体験をした人を預言者と呼ぶものまで出てきたというから驚きだ。
僕は誰のどんな体験が出来るかな。
安月給、毎日カツカツの僕には高額すぎるサービス料だ。しかし、色彩を描く毎日に未来を描けず、ブツブツになった僕の心と頭は機能停止寸前。
誰かの過去で暴れてやれば、少しはこのブツブツが取れるんじゃないか。
そんな不穏であり、救いを求めるような期待から僕はつい先ほど、全財産をこのサービスに注ぎ込んだ。
頭をすっぽり覆うヘッドセットをして、椅子に横たわる。
ポチっとおせば、そこは仮想世界だ。
※
「ようこそ、冒険型バーチャルリアリティーへ。お待ちしておりました。
今弊社のAIが貴方に最適なサービスをお探しいたします。そのままゆったりとお待ちください。」
驚くほど美しい人の出迎えを受け、僕は暗くなった世界でサービス開始を待つ。
しばらくは、AIが僕を解析するらしい。
不安を誘う真っ暗とは違う、安心感のある暗闇だ。
お母さんのお腹の中ってこんな感じなのかな。
それにしてもさ、A Iってなんだよ。
ただ、ランダムに偉人の体験を再現してるだけなんじゃないの。
僕は、金の使い方間違えたのだろうか。ブツブツの僕は、未来を描くことが出来ないあまりに、明日の生活費をドブに捨ててしまったのか。
※
どれくらいたっただろう。
少しウトウトし始めたころ、パーっと視界が開けた。
※
ここは、電車の中?
いや、列車といった方が正確か。
あの子たちと生きるため。
あの人がいない今、手段は選べない。
出来る事をしなければ。
なんだ?この感じ。
あ、誰かの思考が僕の中に響いているかもしれない。
東京へ。
東京に向かえばきっと見つかる。
何を見つけに東京へ向かうんだ?
これは一体、誰の体験?
ダレの大冒険?
《つづく》
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(あとがき)
念願の小説に挑戦をしてみたいと思います^_^
タイトルは、日本中を感動させた、
あの有名マンガをもじらせていただきました(o^^o)
画像はみんなのフォトギャラリーにたくさんの魅力的なイラストをあげていらっしゃるamanocco様からお借りさせてください!
ゆっくりサックリ書いていくので、
お時間のある時にお読みいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします。