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「建築設計事務所」を選ぶときの違和感

こんにちは、YUKI(ゆうき)です。

多くの人があまり接することがない内容かもしれませんが、「設計事務所」という存在は実はよく知られていないように思います。

ぼく自身が建築士でありながら、「設計事務所」を選ぶことがあり、まわりの人に理解が得られなかった経験があります。

もし自宅を建てたい、リノベーションしたい、オフィスをつくりたい等を考えている人がいましたら、参考になればと思います。


はじめに

ぼくの立ち位置

まず、どこか特定の工事会社に所属している人間じゃないので、集客目的はなく、忖度することもなく、フラットな立ち位置です。「設計事務所に依頼すべき」という話でもありません。

最初のキャリアは、大学や総合病院などを手掛ける大手設計事務所で8年間ほど建築設計を行っていました。

いまはITサービス業に転身しましたが、個人事業主として法人のお客様から建築設計や建設プロジェクトのPM(プロジェクトマネジメント)のようなかたちでお仕事を受けています。

何が違和感なのか

この記事のタイトルを「設計事務所」を選ぶときの違和感としましたが、結論からいうと、「設計事務所」に依頼するのは少数派であり、依頼しなくても家(建物)が建つという認識の方が多く、「設計事務所を選びましょう」から始めると話が噛み合わないことを違和感と表現しています。

建物を建てるしくみ

では、建物を建てる際にどのような方式(しくみ)があるでしょうか。まず、大きく以下の2種類があります。

  1. 設計施工分離(建築家に設計依頼し、そこから施工会社を選定)

  2. 設計施工一貫(ゼネコンやハウスメーカー)

2つ方式の割合でいうと、非住宅(日建連*という業界団体のデータ)では2021年度は以下の割合となっています。

  • 設計施工分離(設計事務所を使う):44%

  • 設計施工一貫(設計事務所を使わない):56%

*日建連(日本建設業連合会)は建築や土木など一式工事を行う総合建設会社(ゼネコン)のうち、全国展開している企業、約150社で構成される業界団体

一方で住宅となると根拠となるデータがありませんが
非住宅と比べて、設計施工一貫(設計事務所を使わない)の割合が高いでしょう。広告でよく聞く○○ハウス、○○工務店などは「設計施工一貫(設計事務所を使わない)」に分類されます。

違和感を感じた具体的なシーン

建築のPM(プロジェクトマネジメント)を担当した案件で、お客様から以下のような質問をいただきました。設計事務所を決める前の企画段階で、建設会社へ工事費の超概算見積をとった後の場面です。

現在提示されている工事費の概算は、大雑把だと感じています。その概算をもとに「設計費」が確定されている状況に対して、「本当にこれで良いのか?」と思わざるを得ません。具体的には、以下のような計算式で設計費が算出されています。
【①工事費 × ②◯% = ③設計費】
この計算式を見ると、①の工事費が概算すぎる状態で、そこから算出された③の設計費も同様に精度が低いのではないかと疑問を持っています。

実際の質問から抜粋(note掲載用に体裁を整えています)

設計事務所を決めときに「設計費」という費用は発生しますが、工事費がFIXしないと設計費も決まらないのではないか?そもそも、「設計事務所」が必要なのか?といった質問意図があります。

設計事務所は必要なのか?

では、そもそも「設計事務所」が必要なのか?といった意図をもった質問に対する中立的な見解を以下にまとめます。

工事費のブラックボックス化を避ける

ハウスメーカー、工務店では、自分たちで設計して自分たちで工事することから、中立的なチェックができず、工事費にどのくらい利益が乗っているかがブラックボックスとなりがちです。

一方で設計事務所に依頼すると、施工業者から出た見積もりをしっかりチェックしてくれるのが大きなメリットです。例えば、単価や数量が適正か、漏れや過剰がないかを確認してくれます。その上で、作り方や工程を工夫してコストを下げられないか、材料を変えた場合のメリットやデメリットを施工業者と話し合ってくれます。希望と予算のバランスも考えて、減額の提案をしてくれるので安心です。

設計事務所の役割を踏まえ、例えば目標工事額3,000万の工事であれば、3,000万に合った設計図を作成し、金額がオーバーしてしまった場合は減額できるように設計事務所が提案して再度図面を作成します。(ここにも相当な時間がかかります)

工事発注の前に設計事務所と契約する

設計業務は工事発注額が決まる前に行います。
なので、施工業者の本見積前に設計事務所と契約しないといけません。

設計費の算出方法は、【工事費×○○%】が多いです。
一方で作業量を積み上げて算出する場合もありますが、作業量の根拠が分かりにくいというデメリットがあります。

繰り返しになりますが、本見積で工事費をしっかり積み上げて、チェックして業者と交渉するというプロセスは設計事務所がプロとしてやっていきます。 そこには多くの作業工数がかかるものです。

信頼できる設計事務所かどうかは別問題

設計事務所の良いところばかり書いていたかもしれませんが、おそくら「設計事務所に依頼して失敗した」という方もいるでしょう。

以下のような観点で設計事務所を選ぶのがポイントだと思いますが、本当に腹落ちした状態で決定するのは簡単ではありません。

  • ちゃんとしたスキルがあるか

  • 相性が良いか

  • 安心できるか

信頼できる設計事務所を探すための考え方は別の記事でまとめようと思います。

まとめ

日々の生活で既製品を買うことが多く、「最初から設計してもらう」ことは稀有でしょう。ましてや、マイホームも事業用の施設建設も総額が大きく、人生で立ち会うことがあっても数回ではないでしょうか。

もし建物をつくる機会があれば、「設計事務所」という役割について理解を深め、あなたの味方になるか考えてみてください。



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