知っているとより楽しめるガンダムの思想観 #閃光のハサウェイ
ガンダムの最新映画『閃光のハサウェイ』を見てから1週間経とうとしているのですが、いまだに夢に見ます。それほどよかった、、、
この感動をもっと人と共有したい!ということで、自分がこれまでガンダムシリーズを見てきて思う「ガンダム」の一貫した思想について紹介をできればと思います。
ガンダムを見たことがない人でも楽しめるのか
まずこれまでガンダムシリーズを一度も見たことがない人が『閃光のハサウェイ』を見て楽しめるのか?については、多くの人が言っているように、美麗なグラフィックや迫力の音響で映画として楽しめることは間違いないと思います。
※以下過去作のネタバレ
プロットとして知っておかないといけないのは下記の2つぐらいかと思っています:
・ハサウェイ・ノアがブライト・ノアの息子であること
→ブライト・ノアはファースト・ガンダム(一番最初のガンダムシリーズ)で主人公のアムロが戦った戦艦の艦長をしていた人です。その後のシリーズでも多く登場し活躍します。そのため物語的にはハサウェイが過去の英雄の息子であるということを知っておけば大丈夫です。
・戦争中クェス・パラヤという少女に出会い惹かれるが目の前で死なれてしまった
→今作の前作と考えられる『逆襲のシャア』(シャアの反乱)での出来事です。当時まだ少年であったハサウェイはクェスという少女に惹かれますが、彼女は敵側であるシャアのもとに走り去ってしまい、二人は戦場で再会します。そこでハサウェイはクェスを連れ戻そうとするも、味方の攻撃によってクェスはハサウェイの目の前で命を落としてしまいます。そして激昂したハサウェイは攻撃をした味方の機体を撃ち落としてしまいます(これが初出撃)。
下記サイトでも簡単な予習ができます!(自分も忘れていたりしたので事前に読みました笑)
ただ、これらプロット的な前情報だけだとやっぱり会話やストーリー性についてちょっとついていけなかったりするのかと思い、自分が考えるガンダムを見る上で注目して欲しいその世界観と思想についてここからは紹介したいと思います。
平和と安定の地球 VS 自由と革新の宇宙
ガンダムというのはどのシリーズをとってみても(名前は変われど)、地球圏を統治する「連邦軍」対それに対抗する「コロニー」(宇宙空間で人が住める衛星)の人々の戦いの物語です。
例えば有名は「アムロ・レイ」は地球連邦軍側のガンダムに搭乗して、コロニーとして独立宣言をするジオン公国の「シャア・アズナブル」と戦います。これがファーストガンダムです。
ただ地球軍側が常に「正義」かというとそうではなく、主人公が「宇宙」側であるシリーズも多数あります。実際ファーストガンダムの続編の「ガンダムZ」では地球圏を支配するようになったティターンズが今度は敵として描かれます。
ここがアメリカのアベンジャーズなどのキリスト教的なヒーローものとの違いで、どちらが正義でどちらが悪なのか物語が進むにつれて分からなくなってくるというのがガンダムの特徴だと思います。
「地球軍」と「宇宙軍」それぞれには対立する思想があります。
地球軍側は民主主義を建前とした官僚支配体制を基盤に恒久的な安定や協調による平和などを掲げます。
一方宇宙軍側は宇宙への進出が人類の進化と繁栄につながるという考えから、時には専制的に種の独立や保護、技術革新による破壊と発展を掲げることが多いです。
どちらも思想的な立場上の違いであり正義にも悪にもなりうるというのが言えるかと思います。
これがすれ違いや誤解によって戦争へと発展してしまうのがガンダムです。
戦場の兵士 VS 利権の官僚
同様に対立軸としてガンダムで描かれることが多いのが、兵士対官僚(政府)です。
ガンダムはいかんせん戦闘兵器です。そのため舞台は戦場が多くを占めます。
そしてどちらかというと戦場で戦う兵士に焦点はあてられ、政府である連邦や軍部は利権にまみれた独善的な人たちとして描かれます。
それが結果的に内部での歪みを生み、新たな戦いへと発展していくのもまたガンダムです。当初戦っていた地球VS宇宙の構図に新たな第三者が勢力として加わるということも多くあり、そこの駆け引きによってまたどんでん返しが生まれるというのがたまらないです。
少し脱線しました。
兵士と官僚の話に戻すと、ガンダムで描かれるのは基本的に一人一人の「兵士」たちです。
戦場での経験や葛藤を通して兵士たちは自らの戦う理由を求め、またより強い個の力を求めます。
そしてその兵士たちの延長線上にあるのが「ニュータイプ」というガンダム思想です。
ニュータイプというのは、ガンダムの中で登場する用語なのですが、作品の中でも明確な定義はされていません。ざっくりいうと、ニュータイプとはテレパシーを感じ取ることができたり、相手の思考が読みとれたり、テレパシーを使って機体を操縦をすることができたりする能力です。
そして多感で不安定な若者が戦場を経験することでニュータイプ能力は覚醒するとされています。そのため、ニュータイプというのは人類が戦争を通して獲得できる「進化」の形であるという考え方が徐々に人々の間で広まっていくのです。
対比して、地上にとどまり利権と保身にしがみつこうとする政府や官僚はオールドタイプと呼ばれるようになります。
ガンダムシリーズはこれまでニュータイプたりうる兵士を英雄扱いしてきたのですが、前作『逆襲のシャア』ではそのニュータイプの覚醒も人類を新たな進化の形に導くことはできず、ただの超操縦の上手い撃墜王と何も変わらないことが明らかになってしまいました。
今後ニュータイプに代わる新たな戦争に対する「答え」が示されるのかが今後の注目ポイントだと思っています。
理想を捨てない子供 VS 現実的な大人
ガンダムは子供対大人の物語ともいえます。
どのガンダムシリーズでも基本的に主人公は若い少年です。
そして子供たちはその若さゆえにまっすぐな正義感や、理想を追い求めるひたむきさ、歪んだ大人社会に迎合することなく疑問を問いかける素直さを持っています。
同時に、感情的であり、恋愛には不器用で、家族や過去に対してコンプレックスを抱えたままである場合が多いです。
ガンダムシリーズにおいて恋愛が基本的に成就せず、意外と付き合ったり別れたりとドロドロに描かれるのは、この若さゆえの不器用なすれ違いであったり、感情の純粋さを現していると考えることもできます。
対する大人は圧倒的なパイロットとしての能力や揺がない正義感を持って戦場に飛び出していく子供たちに振り回されながらも、先導されていくような形になります。
子供だガキだと罵っていても、結局は大人も完全に合理的にはなり切れない生き物なのです。
90分でここまでも!?というくらい詰まっている
『閃光のハサウェイ』ではこれらの一貫しながらも様々な形で表現されてきたガンダム思想が十二分に詰まっています!
これは間違いなく断言できます。
ぜひ初めてガンダムを見る方もそうでない方も、ちょっとこういう視点も持って見てみるとより深く考えさせられて楽しめるのではないか?と思った次第です。
早くもう一回観に行きたい!!!!!!!