![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62746873/rectangle_large_type_2_c1d7aec3134f58ac4d57279e490dcb05.jpeg?width=1200)
未決定状態が長引く3つの要因【進路が決められない人向け】
こんにちは!
"どこに生まれてもどんな環境にいても、世界中の生き方に触れられるようになり、より良い人生を考えることができるようになる"
をミッションにしているCenaka Mediaです。
今回のnoteでは、進路未決定研究の中でも重要なテーマとされる
「未決定者はなぜ決めていないのか」(なぜ未決定状態が長引くのか)
を若松養亮『大学生におけるキャリア選択の遅延 そのメカニズムと支援』(風間書房, 2012)にて考察されている内容を中心に紹介します。
※その他の引用についてはnote末尾にて
主に自発的にキャリアカウンセリング室などに来談はしないであろう、一般大学生に見られる進路未決定の解明を目指した著書では、調査結果から要因について考察しています。今回は3つに絞って紹介します。
1)インサイド・アウト的な発想を持っているから
2)進路選択は「オープン・モデル型の意思決定」だから
3)現在の選択肢に十分には興味を惹かれていないから
今回の内容は、個人差を紐解くというよりかは、時代影響や意思決定の性質といった、どの未決定者にも関わってくる要因になります。
「進路選択や就活が難しいのは感覚的にわかるけど、なぜ難しいのかしっかり知りたい・・・!」
という方には参考になる情報かと思います、それでは早速どうぞ!
---------------------------------------------
要因1)インサイド・アウト的な発想を持っているから
考察されている要因の1つ目は「考え方」に関するものです。
インサイド・アウト的な発想とは?(溝上, 2004)
まず自らの内面からやりたいこと・将来の目標を定め、興味や好みによって職業・進路を考え、選択肢としても既知のもののなかから選ぼうとする
(内側から外側へ)⇔アウトサイド・イン的な発想
対照とされるアウトサイド・イン的な発想は、労働や職業、経済状況や雇用の現実に即した考え方です。(図にすると以下)
インサイド・アウト的な発想はいつ頃から生まれたのか?
この考え方は、1990年代以降に生まれたとされています。
提唱した溝上は、1960年代から1980年代の青年の生き方ダイナミックスを「アウトサイド・イン」、 1990年代以降のそれを「インサイド・アウト」と呼んでいます。
80年代までは内面の志向がどうであれ、将来・人生の保障を得ることができたとされています。しかし、それ以降における日本経済の構造的破壊により、青年が参入すべき大人社会の権威が失墜し、アウトサイド・インによる将来・人生の保障は得にくいものとなりました。
代わって生まれたのがインサイド・アウト、すなわちまず自らの内面からやりたいこと・将来の目標を定め、それを実現できる職業世界に出ていこうとする生き方です。
インサイド・アウト的な発想が悪いわけではない
ちなみにインサイド・アウト的な発想が、必ずしも進路選択を妨げるものとはされていません。溝上はこの発想の利点を享受できる人、できない人がいるとしています。できない人が困難を抱えやすいとされます。
享受できない人の特徴としては、以下が挙げられています。
インサイド・アウト的な発想+「適職信仰」「受身」「やりたいこと志向」
この発想においては、主体的な判断や決定が重要となります。
しかし、主観的な内面世界から出られないタイプの人においては,その判断や決定には限界があり困難を伴うとされています。
安達(2004)は、大学生の質問紙への回答と実際の行動の間の不一致を指摘し、「(キャリアについての)意識はあるが行動できない」としています。
インサイド・アウト的な発想に加えて「適職信仰」「受身」「やりたいこと志向」の特徴がそろうと、まさにインサイド・アウトの困難につながるといえます。
要因2)進路選択が「オープン・モデル型の意思決定」だから
2つ目は、意思決定の性質に関するものです。
意思決定には種類があり、進路選択は難しい方の意思決定なんだよということを「オープン・モデル型」というキーワードで表しています。
オープン・モデル型の意思決定とは?/Osipow, Walsh, Toshi(1980)
1)目的:不明確
⇨クローズド・モデル(以下クローズド)では明確・既知
2)代替案の集合:未知のものを含む集まり
⇨クローズドでは既知のもの
3)代替案の順位づけ:探索的比較を行うもの
⇨クローズドでは首尾一貫しており、すべては代替案の比較
4)選択原理:「満足化」
⇨クローズドでは「最大化」(例:利益や効用)
(図でまとめるとこんな感じ)
POINT)
オープン・モデル型の意思決定である進路選択は、すべての選択肢を探索できないにもかかわらず、一定の「満足化」を見出して意思決定を終えなければいけません。(ここが難しい点)
探索的比較の過程で、適切と思われる選択肢に出会えれば意思決定は終わりますが、出会えなければいつまでも探索的比較が続くことになります。
しかし企業のなかから選択する場合などは、業種・職種とも膨大なものであり、会社は無数にあります。
そのため、系統的でない短期間の探索行動によって「満足化」を得ることは事実上困難です。
ましてや学業や課外活動、アルバイトなどにより日常生活のなかで時間がとりづらい状況にあれば、なおさら・・・という結果になります。
若松(2012)は「意思決定に対するそうした取り組み方(要因1)、意思決定のオープン・モデルの性質(要因2)とあいまって、それ以降の選択行動を遅延した、しかも合理的でないものにしている」と指摘しています。
要因3)現在の選択肢に十分には興味を惹かれていないから
3つ目の要因は「未決定者なんだから当たり前」のように感じますが、研究における調査の中で、未決定者と決定者との違いが現れた部分です。
著書の中で紹介されている調査では「能力に関する戸惑い」や「実現可能性への不安」には、決定者も未決定者も同様に悩まされていることが明らかになり、その上で違いが出る部分が「現在の選択肢に興味を十分に惹かれているか」でした。
惹かれている場合:
「それがこなせればやりがいにつながる」 といったように、プラスに転化して考えられる(決定者の傾向)
惹かれていない場合:
・それを深く追究する探索行動にも動機づけられにくいため、結果的に意思決定に対して「受身」(安達, 2004)的に向き合うことになる
・そして、自分から自己内省的なもの以外の方法で探索することも少なく、それも行き詰まりをもたらす(未決定者の傾向)
結果として「満足化」できる選択肢にはなかなか出会えないまま、意思決定は停滞します。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回挙げた内容は、やはり時代影響や意思決定の性質といった、どの未決定者にも関わってくる要因かと思います。そのため上記から逃れるというよりかは、理解した上でどのように立ち回るか?この観点が重要になるかと私たちは考えています。
さらに詳細な未決定者の個人差については、特集を終えた以降のnoteにて順次紹介していきます。(例:膠着傾向、情報不足など)
次の#03では「決定者はどうして決められたのか」について書いていきます。実は、決定者もさほど異なる意思決定の方略や発想を有していない
とされています。ではこの方々はなぜ決められたのか?
・強く惹かれる選択肢にたまたま出会った人たち
・考え方の違い
という今回と似た視点が挙げられています。
次回もよろしくお願いしますー!
引用文献
若松養亮(2012).大学生におけるキャリア選択の遅延 風間書房
溝上慎一 (2004). 現代大学生論 ユニバーシティ・ブルーの風に揺れる 日本放送出版協会
安達智子 (2004). 大学生のキャリア選択 -その心理的背景と支援 日本労働研究雑 誌,533,27-37.
いいなと思ったら応援しよう!
![井端 裕輝(Yuki Ibata)/C, Inc. CEO](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/26637799/profile_12a6113f6516c970b6859b36c88a8e27.jpg?width=600&crop=1:1,smart)