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SNS動画クリエーターから教えられた。TVの映像スタッフは古い、今は動画配信の時代「老兵は去るのみ」とね。
SNS動画時代の動画を学ぶ学生たちの幸せな期待感
今や動画なしでは話にならない時代です。若い世代は朝から晩までほとんどスマホ動画見っぱなし。彼らは自宅でテレビを見ることは無いし、一人暮らしの学生はテレビすら持っていないし買う気もない。新聞も当然見てません。すべての情報はスマホの動画から得てる、いや全ての情報が得られると思っていますから、テレビはいらないというのも仕方ないでしょうね。
ある調査で小学生のなりたい職業「ユーチューバー」がベストファイブに入るのも分からないではないですね。
それを反映するように、映像専門学校には放送演出科から「動画クリエーター科」「動画配信科」と学科名を変える学校が増えています。私も今年の春開講した「動画配信コース」の講師を頼まれた一人です。鼻息荒く若い学生の前に立ったことを思い出しています。
長年人々に喜びや感動を与えてくれた映画やテレビ放送の話は知ってほしい。世界中に感動を与えた名画など、その生まれた歴史や基礎的な話から始めようとした。なぜなら私も専門学校で映画やテレビマンを志したとき、先生から現場の話や昔の作品、その制作秘話などを聞くは楽しかったからです。
わかりやすく楽しく見せるために昔の映画など多くの素材を用意して見せたら、その時だった。いきなり「眠いな〜何の話してるの」と教室の隅から聞こえてきた。思いっきり出鼻をくじかれたとはこの事でしょうか。
分かってはいたことですが、話を中断し、学校で何を学びたいのか聞いてみた。
卒業後の希望は何。殆どの子はユーチューバーになりたい。
それでは「何の動画を撮ってアップしたいの。」と聞くと、「わたしの踊りもっときれいにとって流したいの。みんなに見て欲しいの。」君は、「編集覚えたい。」まだわからないけど編集ができると仕事がありそうだから。
同じ学生でも映画やテレビ専門学校では、アカデミ賞とった〇〇作品とか〇〇テレビ番組の〇〇の監督とかカメラマンになりたいとか、漠然とした夢があるのだか。そのようなものは感じられない。
撮影の授業の話です。一眼カメラを持っての高校生といえば
線路端で迷惑する「撮り鉄」などが話題になるが、鉄道だけでなくカメラ小僧はたくさんいます。彼らは立派な一眼カメラに望遠レンズをつけて撮ってますが、ここの動画学生はスマホでの撮影しか経験がないのです。撮影の授業の先生曰く「誰もカメラを触ったことがなく、持たせたらおっかなびっくり触っていた」と言うから高校生の写真部より分かっていない。まずは「絞りとはね」から始めたそうです。
古いテレビ時代の幻想と次世代メディアの可能性が見える動画配信
テレビ時代。自分がテレビ全盛時代に過ごしてきたことを誇っているわけではない。今ではテレビ離れは活字離れと同じ道をたどりつつあります。
現実的に私が関わっているスタッフの管理組織での話では、テレビの若いスタッフも男性のなり手がなく、カメラマンもディレクターもなんと半部以上が女性スタッフだそうです。かつては裏方に女性は誰もいな時代から見たら大変な変化です。
たしかに、テレビを作っている時の不満はありました。放送法の縛りと多数の視聴者を対象としているため、政治的にも厳しく突っ込むことも出来ない、漫然とした情報しかだせないテレビにはタレント中心のエンタメが中心となってしまう。しかし高視聴率で支えられていた時代は、限られたチャンネルでは仕方ないことでした。
しかし、今はネット時代。企業も政治評論家も投資家もテレビでは言えなかった突っ込んだ情報を発信しています。情報には規制がないので見るものは偏った情報を与える可能性が有るものの面白い。
民放やNHKにもない、病気になった時の病気への解説は役に立つ。経済評論家などの政治批判や投資家向けの金融解説など、日経を超えると思われる。これこそ情報だ。
これらを見ると、特に年配者のテレビ視聴者の多くがユーチューブを見るようになっているのがわかる。
しかし高校出たばっかりでユーチューバー希望の学生に世の中に影響を与える未来と力があるとはわからないでしょうね。当然、高校出たばかりだからしょうがないですね。
学生たちも約一年を経過して少しは成長したのだろうか。
結果、何も変化なし、編集はうまくなりました(つまり編集ソフトの使い方は覚えた)ということ。本来映像作品はテレビでも映画でも何を伝えるか感動させたいとかが大切だが、「それってなんですか」と言った感じは変わらない。
たしかに、スマホのショート動画十数秒単位での動画を見てると、踊ってる姿など見てるとテーマなどどうでも良いのでしょうね。
この学生の中には高校時代から仲間とユーチューブを配信している学生はいるようで、内容的には仲間のバンドを撮って流してるとか、廃墟探検動画とか、社会性も何も考えずに興味本位で撮って発信する。再生回数をふやす方法を、学校なら学べればと思っているようだ。
動画クリエーターと言うが、この学生はクリエーターでなく再生回数で稼ぐだけが目的と見えた。
動画学校の卒業後の就職の考え方
卒業して、動画関係の会社に入って働くことは考えてますか。と聞くと「会社に行きたくない。編集覚えると家で編集で金がもらえるから。」と言った学生が多いのには驚いた。
テレビや映画の撮影現場ように多数のスタッフが汗を流して話題作を作り上げるなど全く眼中に無い。勤めに出るのも考えたくないらしい。
ただ、ユーチューブで生活できるほど稼ぐには大変だよ。ユーチューバーは自ら企画を立て撮影して情報を発信して、一定の広告収入があれば生活できるのだが、それは一部だ。
やはり食えなくなるユーチューバーが出てくる。自称プロが食うために安くとも短期で企業動画を受注するケースが多くなってくる。
それでも話があれば良いのだが、フリーのユーチューバで稼げなければどうする。と聞くと一部の学生から「編集を覚えるとユーチューブプロダクションから仕事はもらえる」と聞いたと言ってきた。
確かに、フェースブックなどのCMで「編集スタッフ募集。編集の仕事が多数あります」をよく見かけます。
ユーチューブプロダクションとはなにか
昨今このように編集ができる人を集めるユーチューブプロダクションが増えています。しかも上場しているユーチューブプロダクションも沢山増えています。
では、このユーチューブプロダクションとは何だろうか。
今までは、企業の動画というと、典型的なのがテレビCMやその会社のPR動画や展示場での大型映像などが有ると思いますが、これらが企業動画です。
多くは広告代理店経由か企業の宣伝部から受注するのが一般的です。これらは大手企業の宣伝部や大手広告代理店はマーケッティングやブランディングを担当してきました。予算も数百万円から数千万円でしょう。
制作する会社も元映画会社だったりテレビの制作会社やデザイン事務所などプロ集団でした。
流石に中小企業では手が出ません。マーケッティングやブランディングと言われても何のことかわからないでしょう。わかりやすく言えば中小企業や商店の開店セールの場合はチライ印刷をして駅前で配るのが一般的でした。
しかし、SNSの時代になってフェースブックなど途中に小さな動画CMなどを見ることが多くなりました。また「5万円以上で貴社の動画を短期間作ります」と言った広告も見かけるようになりました。
確かに、今までテレビCMなど考えもつかなかった中小企業でもネット上で安価なCMが流せると知れば作りたくなるのでしょう。しかもネットですとエリアを絞って流せます。
例えば居酒屋の紹介ショート動画を作りたい。すると登録してるユーチューバから居酒屋や店舗紹介の経験有る人とつなげる。といった感じで。しかも従来の映像プロダクションと比べ、桁違いに安価でスピーディです。
つまり、動画CMを安価に作りたい中小企業と編集は出来るが仕事が欲しいユーチューバー。その両者を結びつけたのがユーチューブプロダクションの存在ですね。
ユーチューブプロダクションの中はどうなっているのか。
元事務所にいた人の話では、「芸能事務所のイメージのようなところです。」と言う。つまり、仕事が欲しいの多数のユーチューバーを登録させ、企業からの案件にに相応しいユーチューバーへ紹介する。芸能事務所では売れ無いタレントも所属だけさせて、話があれば出演させる。物件を仲介する不動産屋さんのようなイメージでしょうか。
たまにお祭りのようなイベントで多数のユーチューバが参加してお互いに交流させるとかなど行われてるとか。
昨今、素人のユーチューバー希望者へ通信教育で育成した後、巣立ったユーチューバーと契約して仕事を出す一貫した組織も増えつつ有るようです。
しかもこのこの組織の若い経営者とお話すると、一月で企画から撮影、編集とユーチューブチャンネル運営まで教えられる。中小企業からの案件は沢山あるので巣立ったユーチューバーとウインウインの関係で発展していますと豪語していた。
一月で育成するところと、専門学校で2年間学ぶクリエーターの違いは何だろう。
最近では上場するレベルのユーチューブプロダクションに所属以外にその下にぶらさがユーチューバーをまとめてる会社も現れてるようです。
つまり二次請けの構造になっているでしょうか。これらユーチューバーはかなり搾取された金額での作業となっているのでは・・・闇ですね。
課題は何だろう
最近、私のような従来のプロに泣きつかれるケースがいくつも聞くようになています。問題は、彼らは企業の受注時に内容が自分のテクニックや感性と合わないと言って、途中で放棄してしまうユーチューバーが増えてると聞きます。
私の知人は、ある企業は以前はプロに出していたが、コロナ禍でコストダウンとあまり長期間かけられないとのことで、紹介された若手動画クリエーターへ発注したら、途中でそのような内容は出来ないと言って作業を放棄して、こまった会社は知人のところへ泣きつくなんとかならないか。と言った声は聞こえてきます。
そのようなトラブル回避のためにユーチューバープロダクションでは、他のクリエーターでの対応など解決策を持っています。と彼らは言いますが、やはり従来のプロの世界から見た場合、プロとは言えません。この考え方が古いと言われる原因でしょうか。
一方従来のプロが企画から制作完成まで時間をかけてるプロは仕事が減っています。理由は、景気後退で予算削減などが原因なのと、企業の宣伝担当などには従来のプロよりライトにスピーディに作ってくれる若手のクリエーターと仕事をしたいと思う傾向も有るようです。
従来の動画のプロは高いだけ、理屈ばかりだ。従来の映像のプロはオワコンだ。「老兵は去るのみ」と聞こえてきそうだ。
今後の動画ビジネスはどう変化するのでしょうか。多数いる安価な受注の動画クリエイターは質の良し悪しからいつか淘汰されのか。それともその安価でライトな世界が主流となるのでしょうか。従来の映像のプロは高度なコンテンツで生きていくさいかないのか。間違いなく2極化すると思われます。
動画ビジネスの今後の変化を従来の映像のプロとユーチューバーの仕事のあり方については、いろいろ若いひとから学んだこと、考えてみたことを以下のような視点でまとめてみました。
動画ビジネスの今後は、安価で短期間の制作体制と、従来のプロの持つ簡単に真似できない技術やスキル、経験を活かした動画制作体制の2極化か
動画ビジネス(1)強調すべきことは安価で短期間の制作体制
安価で短期間な動画クリエイターの今後は、高品質を求めるクライアント層とは別市場として成長する
特に中小企業や個人事業主は、予算や納期の制約が大きいため、手軽でコストパフォーマンスの高い動画制作を求め、これに応える形で、YouTube世代のクリエイターや彼らを囲む代理店が市場を拡大し続ける可能性がありそうです。しかも十数秒の短尺動画(リール動画やショート動画)が主流化しつつある現在、制作費を抑えたスピーディなコンテンツ制作がニーズを満たしている状況です。
淘汰と成長の分岐、質が低い動画を量産するだけのクリエイターは淘汰される可能性があります。一方で、効率的かつクリエイティブに質を維持できるクリエイターは、継続的に需要を獲得すると思われます。
生成AIが仕事を失う可能性、一方忘れてはいけないことが生成AIの進化です。今では簡単な企画書や撮影台本、イラスト、生成AIが自動でできる。動画の編集やCGの動きもつけられる。そうなると安価な中小企業の動画を今までユーチューバーに頼っていてたクライアントも社内スタッフが自ら作れる可能性があります。
動画ビジネス(2)従来のテレビ映画等のプロが強調すべきことは変わらない価値
品質と信頼性、長期的なブランド価値を築くための「高品質で信頼できる映像制作」は、依然として重要です。特に大手企業やブランド力を重視するクライアントには、プロの価値が認められ続けます。またテクノロジーが進化しても「心を動かすストーリー」は普遍的な価値を持ちます。感情に訴える動画制作を強化すべきですね。
付加価値の提供、クライアントの深いニーズを理解し、企画や構成台本を通じて「企業の課題を解決する動画」を提供することが求められます。他のクリエイターが簡単に真似できない技術やスキル、経験を活かした動画制作に注力することが重要だと思います。
新たな市場への対応、短尺動画やSNS向け動画の制作ノウハウを取り入れ、既存のプロの技術を応用してクライアントに「安価ではできない本格的な短尺動画」を提案する戦略が有効と思われます。動画制作以外にも、マーケティングや広告戦略の一環としてのサービスを拡充し、プロデュース的役割を担うことも検討すべきですね。
スキルアップと学び直し、AIや新しい動画編集ツール、VR/ARなどの技術を取り入れ、未来に向けた技術力を高めることが重要です。
結論、動画ビジネスは二極化が進むと予測される。
有名なユーチューバーの多くは、自ら情報を発信し再生回数を稼いでいます。
これが本来ユーチューバーと思うのですが。再生回収つまり広告収入等が無いユーチューバーが飯の種に編集技術を売りにプロダクションへ入る状況があります。
またテレビ局の仕事をしてた制作スタッフはテレビ局の放送外収入として高度な大規模コンサートやスポーツ中継などを受注して電波から配信として仕事場を変えていく状況もあります。
YouTubeプロダクションは、今後の進化によって広告業界の一部として大規模化する可能性と、単なるユーチューバーのマネジメント会社として留まり淘汰されていく可能性の両方を抱えています。
成功の鍵は、マーケティング戦略の多角化と、プロフェッショナルとしての差別化にあると思います。単なる「安価な動画制作」の域を超え、総合的なブランド戦略のプロデューサーとしての役割を目指す必要があるでしょう。専門学校でしっかり教えるのなら編集のテクニックにとどまるのでなくマーケッティング戦略まで広げることも良いと思います。
やはり残るのは、高度な経験と技術とビジネスセンスをもつプロでしょう。