「ねぇ。」
ねぇ。
きっと、全ての期待に応えたいと願ったから、
小さな爆発をしてしまったんだよね?
---2007年、春。
当時高校1年生だった僕は、高校サッカー部で毎日汗を流していた。
中高一貫校に通っていたため、中学からの仲間とこれからも3年間サッカーができる。
この先の苦楽も共にすることで、中学3年間で築いてきた絆は、これからの3年間でさらに深いものとなる。
そんな想いが確かにあった。
---2007年、冬。
3年生が引退し、2年生が主軸となる時期。
決してたくさんの部員がいるわけではなかった部活なので、1年生ながら先輩と混ざって試合に出られるかもしれない。そんなチャンスに毎日の充実もあった。
実際、試合にも出させてもらって、次の大会に向けたチーム作りの輪の中に、自分は入れていたと思う。
ただ同時に、心のどこかが「きしみ」始めていた。
監督の期待に応えたいと思いながらも、うまくいかない日々。
「いい子」であろうと、背伸びしていた先輩との意思疎通。
勝利よりも娯楽を求めていた、自分のスタンス。
部活漬けになることで、少しずつ疎かになっていた勉強。
「充実」という言葉で丸め込んで来た「きしみ」が、徐々に大きくなっていくのを感じていた。
そんな時に起きてしまった怪我。
自分の心はぷっつりと切れた。
結果、僕はサッカー部を辞めてしまった。
春に抱いた希望は、たった半年で崩れ去った。
その後の高校生活は言うまでもなく、暗い日々。
苦しみ、怒り、罪悪感…当時心を覆い尽くしていた負の連鎖に、
今、名前をつけてみたいと思う。
僕へ。
勉強も部活も完璧であろうとした意志。
それが自分を苦しめていたんだよね?
今まで築いて来た「文武両道」な自分。
それが崩れてしまうことが怖かったんだよね?
掴みかけていたレギュラーの椅子。
それがライバルの手に渡るのが悔しかったんだよね?
・
張り合いをなくした日々。
やり場のない喪失感に投げやりになっていたんだよね?
逃げる選択をしてしまった自分。
そんな心の弱さを許してあげられなかったんだよね?
それでも続けていく仲間。
彼らへの申し訳ない気持ちでいっぱいだったんだよね?
大丈夫だよ。
完璧が自分を苦しめることを知って、
「今できる精一杯」に目を向けているから。
大丈夫だよ。
「文武両道」なんてちっぽけなプライドを捨てて、
仕事も運動もメリハリつけてやっているから。
大丈夫だよ。
誰かがいるから自分も頑張れると知って、
切磋琢磨できるライバルがたくさんできているから。
・
大丈夫だよ。
今では時間が足りないくらい、
のめりこめるたくさんの趣味を見つけているから。
大丈夫だよ。
一つのことを続ける大切さを、
見つけることができているから。
(そりゃあ、時々愚痴りもするけどね。)
大丈夫だよ。
当時の仲間は、今でも腹を割って話せる
かけがえのない財産になっているから。
「きしみ」のある心と会話できるほど、
器用ではなかった。
ずっと続けてきたサッカーだって、
才能で生きてきたわけじゃない。
それなのに、
あの時の僕は全てを否定することで、
きっと「もっとできる僕」の影を追っていたのだろう。
そんな虚栄が必要だったのかもしれないね。
だけど今、
あの時の想いを包み込むことができる。
等身大の自分を認められるのは、
少しは大人になれたから、かな。
だとしたらそれは、
たくさんの痛みを経験してきたから。
たくさんの痛みの最初が、
きっとあの時だったんだろう。
あの時心を覆い尽くしていた負の連鎖。
それは、
「しなやかに生きる第一歩」
そしてこれからも、
僕はきっと不恰好に生きていく。
だからこそ、
心が折れる日があって、
ずしんと悩む日もあるだろう。
でも大丈夫。
そんな時も、今できることに目を向けて、
歩みを進めていこう。
振り返れば大事な一歩になるはずと、
認めながら生きていこう。
ちょっとばかりの、「しなやかさ」と共に。