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AIがシステマティックレビューを変革する?最新研究が示す可能性と課題

Marshall IJ, Trikalinos TA, Soboczenski F, Yun HS, Kell G, Marshall R, Wallace BC, In a pilot study, automated real-time systematic review updates were feasible, accurate, and work-saving, Journal of Clinical Epidemiology (2022), doi: https://doi.org/10.1016/ j.jclinepi.2022.08.013.

医療の世界では、エビデンスに基づいた意思決定が重要です。その中心的な役割を果たすのが、システマティックレビューです。これは、特定の医療トピックに関する全ての実証的エビデンスを網羅的に収集し、評価・統合する重要なツールです。しかし、従来のシステマティックレビューには大きな課題がありました。それは、常に最新の状態を保つことの難しさです。
この問題に対して、AIを活用した革新的なソリューションが登場しました。RobotReviewer LIVEと呼ばれるこのシステムは、自然言語処理(NLP)と機械学習を駆使して、システマティックレビューの更新プロセスを効率化しようとしています。

RobotReviewer LIVEの特徴と仕組み:

  1. PubMedデータベースを毎日監視し、新しい臨床試験報告を自動的に探索

  2. 広範なトピックフィルター、MeSH用語、PICOドメインを使用して関連文献を絞り込み

  3. BERTベースの機械学習モデルによる抄録の自動分類

  4. 人間の専門家による最終スクリーニング

  5. 新しいエビデンスを組み込んだライブステータス更新の自動公開

このシステムの有効性は、COVID-19ワクチンのシステマティックレビューを用いた評価で示されました。従来の手動更新と同等の精度を保ちながら、大幅な労力の削減が可能であることが明らかになりました。
しかし、このアプローチにはまだいくつかの課題があります:

  1. 複雑な選択基準を持つレビューへの適用可能性が不明

  2. 現在はランダム化比較試験のみに限定

  3. PubMed/MEDLINEのみを使用(他のデータベースは含まれていない)

  4. より広範なトピックでの検証が必要

この革新的なシステムは、オープンソースソフトウェアとして公開されており、他の研究者による検証や改良が可能です。今後、より多様なトピックやデータベースでの検証が進めば、システマティックレビューの世界に大きな変革をもたらす可能性があります。
特に、COVID-19のような急速に進展する分野では、このようなAIを活用したアプローチが非常に有用となるでしょう。読み手と執筆者の両方にとって、最新の研究結果を迅速に把握し、エビデンスに基づいた意思決定を行うための強力なツールとなることが期待されます。
AIとヒトの専門知識を組み合わせたこのハイブリッドアプローチは、医療エビデンスの世界に新たな可能性を開くものと言えるでしょう。今後の発展に注目です。

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