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成功と運
2022年のイグノーベル賞を受賞した、才能と運そして成功の関係性に関する論文をまとめてみたいと思います。現論文はopen accessなので無料で読めます。最後に引用を記載しておりますので、興味のある方は一読ください。
著者が論文を執筆したきっかけは、才能=IQは正規分布するが、成功=金はべき乗則に乗っ取った、偏った分布であることから、その二つの才能と成功の関係性を疑ったことから始まります。
(人類全体が大金を稼ごうとしている訳ではないので、個人的には怪しい仮定だとは思いますが、きっかけとしては分かります。)
この実験は調査による統計学ではなく、ある前提の下での”シュミレーション”の結果が実際と似ていたので正しい、という話であることに注意が必要。
前提としては、下の図1のようなシュミレーションをしています。黒の1000人がランダムに動く緑の〇(幸運)と赤の〇(不運)に遭遇し、その結果、幸運に当たるたびにある確率で金が二倍に、不運に当たるたびに半分になります。才能のファクターは正規分布になるように各人にとりあえず設定していて、幸運に遭遇した際に才能に高い人は金が二倍になりやすくなります。
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シュミレーション後に金の分布を見ると、ほぼ才能に依らず見事にべき乗分布でした。
結論としては、才能は収入に関係なく、適切なタイミングで適切な場所にいるかが収入に大事=挑戦回数を増やすことが大事、としています。しかし例えば分野が大事かもしれないし、収入じゃなくて新しいものを生み出しているかという点では分からないし、正直あまり意味の無い論文だと個人的には感じています。
そして、この研究を以って挑戦回数を増やすことが絶対であるという論は正しくなく、であれば単にその人の経験則、なんとなくの統計で、という理由の方がもっともらしいと思います。
イグ・ノーベル賞がそもそも「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」ということで、内容には意味は無いにしても、成功と運の要素について考えるきっかけになるという点においては正にイグ・ノーベル賞らしいと言えるのではないでしょうか。
元論文:https://doi.org/10.1142/S0219525918500145
他に参考になりそうな解説記事を見つけましたので、下に記します。
2022年のイグノーベル賞の「才能と運」の注意点 | Econome (e-econome.com)
イグノーベル賞Talent vs Luck論文にPythonとRで反論を試みる - Qiita
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