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何故Kensmith Burner BHF5(Hadrien Feraud Signature Model)を手放したか?

自分はHadrien Feraudというベーシストが大好きだ。ジャズコードワークを理解したソロやボイシング、その上で並外れたテクニックを持ち合わせ、完全に虜になった時期が長い事あった。具体的には2016年から2023年くらいがアドリアンのソロをひたすらコピーし、左手の運指、ポジションの全てそっくりコピーし、ソロ内容の分析も全てして、自分のプレイに落とし込んだ。
自分がKensmith Burner BHF5(Hadrien Feraud Signature Model)を手に入れたのは2017年5月の事。それまではFodera Emperor 5st スーパーロングスケール(35 inch) を使っていた。これはJanek Gwizdalaというイギリス出身のベーシストが好きで、彼がFoderaを使っていたので憧れで手に入れた。彼のFoderaは確か少しショートスケールだったが(33-34 inch?)そんなことも知らず、ただ同じFoderaを使いたい一心で手に入れた。(そのFoderaを弾いている時代の動画は自分のYouTube channelの昔の動画に上がっている。プレイは今見るとかなり未熟だがぜひ興味があれば見てみてほしい)
2017年、そのFoderaを売り、そのお金でそのままKensmith Burner BHF5を購入した。大阪の島村楽器だったような気がする。実際にHadrien Feraudのプレイを生で観たのは2016年9月ぐらいのLee Ritenour バンドで金沢ジャズフェスティバルに来日してる時に、自分も違うバンドで金沢ジャズフェスティバルに出演していて、Hadrien Feraudが金沢にいるなんて直前まで全く知らなかった。開演ギリギリでA席を購入し、初めて生で観た。感想は「本物だ...」と身も蓋もない感想だが、釘付けになってHadrienのプレイを観た。その時は確かMayones JABBAを弾いていたが、ずっと動画で観て憧れていたベーシスト、あっという間に時間が過ぎた。
自分にとって運が続いた。同年12月、上原ひろみトリオのベーシストであるアンソニージャクソンが体調不良によるドクターストップで、代理でHadrien Feraudがベースを弾く事になり再び来日が決まったのだ。(現在アンソニージャクソンの体調は健康に戻った。)
急いで払い戻しでキャンセルが出たチケットを買い、東京国際フォーラムで上原ひろみトリオを見た。これが本当に感動した。過去一番、今だに生で観たライブであんなに感動したライブはなかった。その時使っていたベースはKensmith Burner BHF5。自分と同じベースだった。でもあまりにも自分と力量が違う。というかそんなことを考えることなく「感動した」が99%の感情を占めた。
それ以来Dean Brown バンドでの来日では1st 2nd通しで観たり、ずっと虜の時期が続いた。まさにアイドルだった。ひたすらコピーした。コピーした動画は自身のYouTube channelに上げているので是非軌跡を見てみてほしい。始めにちゃんとコピーしたのはInvitation。どのようなアプローチでソロをとっているのかその時は全然分からなかった。でもとりあえず全く同じように弾いているベーシストがYouTubeで検索してもいなかったので、弾き切れば世界で初コピーした人になると思ってひたすら練習し、YouTubeに上げた。(この時はまだFoderaを使っていた気がする。後にKensmith Burner BHF5で弾き直した動画も上げている)
基本的にコピーする時の基準は「自分の身になるソロかどうか」「完璧に全て弾けそうか」「YouTubeで検索して世界で誰もやっていないか」などがある。勿論例外はあるが(Michael BreckerのPeepのソロはロシアのフュージョンベーシストのAnton Davidyantsが先に弾いていたが、自分もチャレンジしたいと思いコロナ禍の一ヶ月半Peepしか練習しなかった。ちなみにこの動画のおかげでRed Hot Chili PeppersのFrea氏やRIZEのKenKen氏にInstagranでフォローして頂き、KenKen氏にはEIGHT-JAM"関ジャム 完全燃SHOW"で「今一番尊敬するベーシスト」として地上波で紹介していただける事になった)。
その後Ibanezからベースを2本提供していただき、F-bassのフレットレスを手に入れて、Jaco Pastoriusをひたすら研究しコピーする期間もあった。
近年使っているMayones Comodeus 5st Customは2022年10月に手に入れた。これは海外のテクニカルフュージョンベーシストのMohini DeyやAnton Davidyantsが使っていて、フュージョンジャズには合っていると思ったからである。やっと本題に入るが、これはKensmith Burner BHF5から離脱する第一歩となった。何故かというと、Hadrien Feraudが好きでひたすらコピーしてフレーズも同じ、使っている楽器も同じだとHadrien Feraudの超下位互換にしかならないと思ったからだ。それにプロベーシストとして生きるうえで、プロのそっくりモノマネをしてしまうとオリジナリティがなく、だったらHadrien Feraud聴いた方がいいじゃん、となると思ったからである。
とはいえアドリアンフレーズは染み付いているので近年はテナーサックスのソロ、Michael BreckerやEric Alexanderのソロのコピーを多くする様になり、少しずつ脱Hadrien Feraudが進んでいる。守破離ともいうのだろうか。一度のめり込み研究しまくり、アプローチなども大体把握し自分のプレイにも落とし込めて、その後それを破棄していく。ベーシストがベーシストのコピーをするのは至極当たり前だが、どこかで離れなければならないと思っている。特にその人のシグネイチャーモデルを使い、その人のプレイをすると非プロベーシストならいいかもしれないが、やはりプロだと少なくとも自分は疑問が湧いてしまう。オリジナリティを確立するのは非常に困難なことではあるし、自分にはまだそれがない。ただこの守破離がその一歩になるかもしてないと願って手放した。
つい最近はIbanez SR5005 Prestigeを手に入れて、メインベースにしようと思っている。個性を出すのは苦労する。アートの世界にはアプロプリエーション(既存のイメージや作品を自身の作中に取り込む手法)やシミレーショニズム(ジェフ・クーンズのマイケルジャクソンとバブルスなど)などのオリジナリティの限界を自覚した後の最終手段があるが、今の自分にはその最終手段はまだ早いと思っている。だからどこにあるか分からないオリジナリティを模索して日々悩みながらベースを弾いている。

と長々とそれっぽく書いたが、Kensmith Burner BHF5を手放したタイミングは、長年使っていたMac Book Proが急に機能停止し再起不能に突然なってしまい、PCがないと自宅での作業(宅録、動画編集など)ができないので、この際だから売ってそのお金で新しいMac Book Proを買ってしまおうと思ったのが理由の一つでもあったのだが、、、

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