あのお騒がせコンビが 3 年ぶりに再結成!? 最強のふたりが今度は冬のニューヨークを舞台に大暴れ!! 全米を驚嘆させたドライヴが装いを新たに帰ってくる!!
タイトルの安い煽り文句はおのおの好きな声優に脳内で読んでいただくことにして、そんなわけで既知の通り、レイダース (Las Vegas Raiders) に所属していたダヴァンテイ・アダムス (Davante Lavell ADAMS; #17 WR) はジェッツ (New York Jets) へとトレードされた。「トレードしてくれ」と本人が言ったからしかたないね。
しかしジェッツか。
ア・グッド・イズ・ノウン・ウェン・イット・イズ・ゴーン
フットボールのファンは隙あらばディスを入れるよう教育されているため、一部は「ダメなチームからダメなチームへ連れて行かれた」などといって面白がっている。僕もその一部だ、すまんな。
まぁいちおう謝るけど、これはしかたないだろう。ジェッツの成績と内紛をふくめた全体を外から眺めれば、機能していると思うほうがどうかしている。
とはいえ、この加入は今季のジェッツを助ける可能性が大いにある。単純に WR が不足しているチームを補う意味はいうに及ばず、アダムスは NFL で最強の WR のひとりであったし、まもなく 32 歳になる今でもおそらくまだそれに近い。
なによりチームにとって良いのは――もちろんそれを期待して獲ったわけだが――ロジャース (Aaron Charles RODGERS; #8 QB) との連携が良い点だ。ふたり合わせるとこの 12 月で 73 歳になるのは懸念事項だけど。
ドラフト 2 巡目で指名されたグリーンベイ (Green Bay Packers) で過ごした 8 シーズン、最初のうちはポロポロと落球を繰り返していた不安定な WR に諦めず投げ続けたのがロジャースなら、ときにスナップ前のアイ・コンタクトだけで意思を汲み取ってルートを変更できるまでになったのもアダムスだ。その特別な信頼の威力は、他の誰よりも多い通算 76 TD という数字に現れている。
ジェッツの公式が集めてきたこのクリップひとつでもわかるとおり、このふたりの連携は非常に素晴らしい。それだけでなく、アダムスがキャッチングに関して優れた能力を持っているのが見てとれるだろう。
グリーンベイのファンからすると「なんか気がついたら捕るのがめちゃくちゃ上手いやつになってた」という印象で、彼がいなくなったらとたんに「このチームのレシーヴァーはパスをめちゃくちゃ落とす」傾向にあるとわかった。アダムスがたくさんターゲットになることによって、潜在的なその他のレシーヴァーへのパスとドロップの数は表面への噴出をまぬかれていたわけである。
しかしそのような活躍をしようと無意味なディスはあるもので、"最強 QB からパスを受けているのだから成績が出るのは当たり前だ" 論があった。一言にすれば、スゴいのはロジャースであってアダムスではない、という主張だ。
もちろんそれは事実ではなく妄想に過ぎない。お気に入りのレシーヴァーだった "白い稲妻" ジョーディ・ネルソン (Jordy Ray NELSON; WR) をプレシーズンで失ったときに成績を下げたことからも推し量れるように、QB を支えるには強いレシーヴァーが必要だ。いかに全盛期のロジャースがチャンスを見逃さなかったといっても、空いていないものや落とすものについては原則的にどうしようもない。
逆に、優れた WR は QB が[NFL の水準で]ポンコツでもそれなりに数字を出す。良いボールが来るから捕れるのではなく、オープンになる能力があるからボールが来るのだし、OL がパス・プロテクションを保たせているから QB は投げられるのだ。この因果関係に目をつむると、たいてい悪いことが起きる。
だから最後にグリーンベイが彼を引き留めようとしたときにはレイダースよりも良い条件を出したといわれたし、パッカーズに留まるほうが優勝には近かったはずだが、結局はまとまらなかった。それには、この錯誤も少なからず影響したのではないかと僕は思っている。だって腹立たしいじゃないか……せっかく最強の称号を手にしたと思ったら「*ただしセンターの後ろに MVP がいる場合に限る」なんて注釈がつけられていたらさ。
もちろん家族のことやカレッジでともにプレイしたデレク・カー (Derek Dallas CARR; #4 QB) の熱烈な勧誘も影響しなかったはずはないが、超一流 QB と袂を分かつことは、彼が力を証明するための必要条件と捉えたのではないかと僕は考える。カネは力だが、それ以外にも原動力はありうるのだ。
そして結果として、わりとでたらめな球を放る QB たちの横に立ったときでもアダムスは輝かしい成績を記録してみせた。
やりたいことはやったし、家族への義理立てもできた。たとえ次の試合を待たずに引退したとしても、通算のパス獲得ヤード 10,990 は NFL 史上第 41 位になる。もうどこからも文句は出まい。いつも言っているけど、これほどになるなんて本当にあの頃は考えもしなかった。
あと残っているのは……そうか、指にはめるためのリングか。うーん。それは……期待して球場で待とう。