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史上最高級に「いかにもジェッツ」なプレイが披露される

ファンには悪いけれども、ジェッツ (New York Jets) といえば根本的にネタ扱いされているチームである。こればっかりはしょうがない。このゲームは勝つ以外に栄誉を得る方法がほとんどないし、ジェッツは負け続けているのだから。
しかし、そうなるとハイライトを当てて面白くなるのはいわゆる「やらかした」瞬間になる。勝たないからやらかしたところが目立ち続けるともいえる。

ただ、いくら負けているといっても勝ちそうになったことはあるわけで、できればそういうときに間抜けなプレイが出るとなお盛り上がる。同じように道端で転倒するにしても、両手に買ったばかりのコーヒーのカップを持っているほうがより面白いし、ランウェイで顔をキメているときのほうがより見栄えがするのと同じ理屈だ。

現物はこれだ

場面は試合前半終了の間際。ジェッツはこの直前にインターセプション (interception) からリターン・タッチダウンで 6 点を返し(キックは失敗)、さらに続けざまにインターセプションを食らわせて盛り上がりまくっているところだ。
ボールはほぼフィールドの中央。ただし、残念ながら時間が残り 2 秒しかないため、原則 1 プレイしかできない。距離的にフィールドゴールは難しいので三択だ。

  1. ニールして終了。このまま後半に進む

  2. ヘイル・メリー (Hail Mary; 直接エンドゾーンに投げ込む)

  3. ラグビー方式のパスを繰り返してエンドゾーンを目指す

選ばれたのはヘイル・メリーでした。
異論もあるかもしれないけれど、基本的には正しい判断だと思う。互角の状況なら黙ってロッカーに引きあげてもよいが、なにしろジェッツのオフェンスはリーグの中では控えめに言ってガラクタの山だ。まがりなりにも得点のチャンスがあるなら、指をくわえて見ている場合ではない。また、急にラグビーを始めるのは単にいちかばちかで投げ込むよりも難しい。

大きなモーションを取って自陣 43 ヤード地点からボイル (Timothy Kevin BOYLE; #7 この日で通算 4 先発) のパスが飛ぶ。ボールはまずまず……うーん、残念。ちょうどエンドゾーンの線くらいのところまでしか飛ばなかった。捕ったのはドルフィン、ホランド (Jevon HOLLAND; #8) だった。これはしょうがない。誰か味方が捕ってくれたらラッキーというだけのプレイだ。

問題はここからで、リターンしていくホランドに誰もついてこない
とにかくエンドゾーンまで戻されるまでのどこかで止めるだけで十分なのだが、広いフィールドに対して各個バラバラとやってくるから簡単にかわされてしまう。また、ホランドは直線を走れるわけではないから後ろから追いついてもよさそうなのに、途中で諦めてジョギングしているやつまでいる。
結局あれよあれよといっている間に 99 ヤードのタッチダウン。まともな得点源を欠いているジェッツにとって 11 点差はほとんど棺に打たれた釘と同じだ。

インターセプションで本来はなかったはずのスナップを生み出し、やらないという選択もできたヘイル・メリーに挑み、失敗したのみならず致命傷にまで持って行ってしまうのがじつに、まことに、いかにもジェッツらしいプレイになったといえる。

ジェッツらしいといえば、おなじみ "バット・ファンブル" はお披露目から 10 年以上が経ってもなお「最高にジェッツらしいプレイ」として君臨しているわけではあるが、シチュエーションを合わせれば今回はそれに比肩しうるのではないだろうか。偶然ながら、今回も 11 月の第 12 週だった。


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