辰巳(共産)と三好(れいわ)の衝突に関する見解
きょうは珍しくも、ヘッドラインに沿った内容の文章を書く。僕が両方の党を支持している関係上、どっちかを糾弾するような内容ではないので、身構えずに読んでもらって大丈夫だ。
何の話?
さて、まずこの騒ぎの事情を知らない人のために内容を軽く紹介しておこう。
能登の地震から 1 年、1 月 3 日の午後、れいわ新選組に所属する三好諒が X にこんな投稿をした。見た目の上ではこれが発端になる。
これに対して日本共産党の辰巳孝太郎がこのように返し、
そこで三好が「デマ? なんのことやら〜。ニュース記事にもそう書いてありますし〜」とすっとぼけると、「デマだろ」「事実じゃないか」で見解の相違を生じた両党の支持者や党員たちが次々と参加し、視聴者参加型場外乱闘レスバトルが巻き起こった。これがおおよその顛末になる。
しかしみんな元気であるな。火に油を注ごうとする卑しい政治系インフルエンサーも参加しているし、互いの評判を毀損する目的で暴れ散らすなりすましも存在しているとみられるが、僕は眺めるばかりだ。ま、止めようもないしね。当事者でないかぎり、フォロワーを持っていない人間は発言権が事実上ないのが SM の世界だ。
そこで、部外者たちの乱闘はひとまずおいて、この投稿の何がどうマズいのかを考えたい。
双方のやり合いが続くからには、最初のそれが完璧な主張である可能性は低い。つまり、完全に正しいわけではなく、また、完全に誤っているわけでもない。ある程度は正当性がないとこのような乱闘にまでは発展しないものだ。では、何が正しくて、何が誤っているのか? それを考えよう。
最初の三好の投稿は、前半部分と後半部分で性質が異なる。前半は事実に立脚した部分、そして後半は三好の類推(あるいは邪推)である。また、全体としては与党やその補完勢力と共産党とをわりと雑にひっくるめて「被災地である能登の支援を怠った者たち」という印象を与えるネガティヴキャンペーンになっている。
まず事実としては、与党は能登を救おうとしなかった。これは疑いのないところだろう。少なくとも、全力で復旧を目指した形跡はない。
丸一年たっても水道も復旧しない地域があり、瓦礫の処理も終わらず、にもかかわらず予算や人手は軍事費や大阪万博といった愚行に割かれている。地震が起きてすぐは「道路が通れないからどうしようもないんだ!」と叫んで支援に行かないよう働きかける謎の勢力があったが、道路が直っても解体などぜんぜん終わらない有様であるから、虚言に過ぎなかったことがわかる。
当時は晴れていたのに空路もなぜか使わなかったし、それでいて他国からの支援も断り、自衛隊も出さない。自宅から逃れてきた被災者に用意されたのは、空調の不十分な体育館と粗末な食事、それに使うのをためらうトイレだった。
結果としてそういう姿勢をとった政府与党と歩調を合わせて「能登の視察は見合わせよう!」といい、なにかするわけでもないのに志位和夫まで防災服のコスプレをして仲良く写真のフレームに収まってしまったのだから、それはもう悪い印象を与える利用法が出てくるのも避けがたくなった。
この写真はあちこちに出回り、それをパッと見て「当面は所属議員による視察を自粛」と書かれているのを目にすれば「お前らまで新年会のほうが大事なのか?」と驚く人間が出てきてもしかたないだろう。
ちなみに、このすぐ上にリンクした記事には「党首クラスによる被災地の視察を当面自粛」と書かれているが、媒体によっては「所属国会議員による[…]被災地視察について、当面自粛」とあり、なぜかばらつきがある。日本維新の会が「国会議員による視察の自粛を提言した」という話はあるので、どこかで誰かが混同したのかもしれない……これは憶測だ。
とはいえ、共産党ふくめて他党が支援に乗り出さなかったといったら完全に嘘になる。いくらなんでもそんなことは考えられない。もちろん実際に現地の地方議員らもふくめ支援は行われたし、現在も行われている。
なので、この三好の投稿の前半部分もそこまでの主張はしていない。つまり、明白に絶対に嘘と即断できる領域にまでは踏み込んでいない。
ここが三好の、良くいえば狡猾、悪くいえば邪悪なところで、全体としてはデマゴーグとなるミスリードを狙っていながらも、スタート地点では(ある程度の)事実にもとづいているため「え〜? 嘘じゃないですけど〜? ほらほらここ読んでください」と切り返せば、一瞬、なんとなくスジが通っているような気にさせられてしまう。
ワルい奴だ。人間は、枝の先にトマトの実がなっているからといって根の部分もトマトの木であるとは限らないのを識る必要がある。
辰巳も辰巳で、すぐに看破して「デマ」と言い切ったはよいが、1 月 5 日の出来事に対してそれより前の対応を持ち出すものだから、よけいな隙を生じた。といっても、むろん、このやりとりの本質的なところは「れいわ以外の党はそろって被災地の支援を怠った」という三好のデマゴーグであり、辰巳はそれを否定しているだけなので、この時系列の前後にたいした意味はない。
三好もそれくらいは当然わかっているはずだが、しかし、オンライン・レスバトルは議論の場ではないので、こうしたものも瑕疵になりうる。そこで「いやあ、ワタクシはそんな時点の話をしているわけではございませんが?」と、すっとぼけてみせたのだ。
リングの中がこれだから、その場外はさながら西部劇の酒場のようになった。 ヒドいやつだな! 政治家の分際でレスバトルに現を抜かすとは、まったくけしからん。
というわけで、この件は三好のせいで間違いない。だが問題の根源は、ただそれを指摘しても、ましてその支持者たちを非難しても解消されない。
この投稿はただのデマゴーグではなく、先の六党の会合に対する意趣返しになっている。
あの会合で「党首たちは被災地に入るのを当面見合わせる」と決めたとき、れいわ新選組の党首である山本太郎はすでに現地に入っていた。
「後から決めたことによって、その決定に先立った活動が非難されるいわれはないだろう」といわれれば、それはもちろんそのとおりだが、実際に生じた受け止め方の少なからぬものは「各党が自重しているのに先走って現地に入った山本はけしからん」であった。しかも、「被災者のために用意されたカレーライスを横取りして喰った」などというわけのわからない誹謗中傷のおまけ付きだった。
なかには「国賊」とまで罵るような連中まで現れ、僕も大いに憤慨させられた。あの会合で撮られた写真は、事実はどうあろうと、そのような空気の醸成に一役買った。今回はそのあたりから生じた遺恨のようなものではないかと思える。
まあ、だからといってこういうことをやっていいわけではない。そも攻撃範囲が広すぎて雑だし、仮にこのような欺瞞が一時的に通ったところで「幻滅しました……れいわに乗り換えます」となるともちょっと思えない。
本当の問題は、そんなことではない。共産党があまりにも情報戦に弱すぎるのが問題なのだ。
考えてみてもほしい。今回の三好による攻撃は、過去にあったまったく同じアイディアに、悪意をちょい乗せしただけのものにすぎない。いってみれば非常にシンプルな仕掛けだ。しかし、たかがそれしきを打ち消すためになんと時間と手間のかかっていることか!
こんな体たらくでは、もしも本気で悪意ガン積み殺意マシマシの攻撃が行われたら、絶対に手に負えないはずだ。
だいたい、初動からおかしい。写真ぶくみの記事を相手に文章で対抗しようとした時点ですでに間違っている。真実と嘘では、嘘のほうが数十倍拡散しやすいのだから、嘘に真実で対抗しようと思ったら、より伝わりやすい手段で対抗しなければならない。これは常識だ。
今回の場合は相手が写真なので、どんなに悪くても写真を使う必要があった。できれば「いえいえ、我々はこういう活動をしていましたよ」を表現する動画をずらずら並べるべきであった。欲をいえば、見やすい字幕とさわやかな音楽が添えられた短いそれであるとなお良い。
しかし、これができないのである。普段からカッコよく編集した動画つきで活動をアピールする習慣がないため、とっさに撃ち返すことができない。
じゃあどうして普段やっていないのかというと、これは個人的な観測にもとづく憶測になるが、共産党には「手柄を誇るのはちょっとみっともない」みたいな空気があるからではないかと思う。誰かを助けるのは当然であって、わざわざその成果を知らしめるようなものではない、とね。
それは非常に素晴らしい姿勢で美しいけれども、しかし SM には「写真がないのなら、起きなかったのと同じこと」という意味の警句がある。やらなきゃ意味ないよという言葉もあるが、いまは、やってもそれだけでは意味がない時代だ。それが良いとか見苦しいとかではなく。
だが支持者ものんびりしているもので、なかには、この期に及んでいまだに「他党のようにアピールするべきなのかどうか考えている」みたいな段階にとどまっている者までいる。僕が見かけたあの男は、こないだの選挙のあいだ宇宙旅行でもしていたのだろうか。
少なくとも、一般の人民を助けるための活動の素晴らしさで共産党の右に出るものはない。そして、日本の人民は悪政に苦しんでいる。もしも活動の内容や理念が同じ音量で歪みなく伝わるのなら、他党に後れを取るなどありえないと僕は信じている。
だからそれが伝わっていないと感じるし、それは喫緊の大問題である。もう本当に急いで解決する必要がある。僕が思ったのは、だいたいそんなところだ。
それから何が…
そんなわけで、誰でもわかるような決定打が出ずグズグズやっているうち、辰巳も三好も X のトレンドに入り、泥仕合が漏れ聞こえる事態となった。まったく正月からなにをやっているんだ……と思っていたら、れいわ新選組の支持者たちはこの機を逃さず、三好が街宣をしている動画を貼り付けてちゃっかりと宣伝に利用していた。これにはさすがに笑ってしまった。やりやがったぞ、あいつら。まさか乱闘中の酒場の壁にポスターを貼り始めるとは!
この行動は支持者としては呆れたんだけれども、一方で、他者として眺めれば、ずうずうしさというか抜け目のなさは恐るべきものがある。
先に書いたように出だしはそこそこ本当だし、最後に出てくるのは広告部分だから、ここにも嘘はない。途中の展開を知らない者は、三好の名前だけ覚えて帰っていくだろう。……いや、途中を知ったところで同じかもしれない。「悪名は無名に優る」という諺もあるのだから。
共産党は高潔を身上としているのでこのような行為はとてもできないが、だからといっていつまでも周回遅れでいてはいけない。本当に頑張ってなんとかして。よろしくお願いしますよ。