そんなもんだから
カフェをやっていると「あんまり関わりたくないな」というお客さんもいれば、不思議と仲良くなるお客さんもいる。
運命の赤い糸が本当に赤いかどうかは知らないけど、引き寄せあう、ということはありそうだ。
毎週決まった日に生まれたばかりのお子さんを連れていらっしゃるお客様、カウンターで食事をしながらハイネケンを飲んで帰る話が独特な一風変わった男性、近くのお好み焼き屋のおじいちゃん、看護師の女の子、そりゃぁもういろんな人に会って来た。
でも、みんないつか来なくなってしまいました。転勤か、結婚か、体を壊したのかは分からない。サヨナラが言えればいい方で、そうではないことの方が多い。
お店の治安を乱すような人はいいんですよ、もう来なくて。
でも「あんなに仲良くなったのになぁ」というようなことは結構ある。
僕らの仕事はサーブ(serve)する、つまりは仕えることが仕事だからしっかりと給仕する。
話を聞き、好みを覚え、前回の会話の内容を思い出し、服装や髪型に変化がないか気を配り、知らない異性ときた場合は「いつもありがとうございます」を言うべきか言わざるべきかに思いを巡らせる。
そんなことを積み重ねていると、お客様からの信頼も厚くなり気づけば親密になっていたりする。
それでも、です。
いつの日か、お客様は必ずお店には来なくなる。不思議なもので、不思議というかずっとお店に来続けると言うことを信じる方が無謀なんだろうな、と思うようになりました。
ビールの泡のようにいつかは消えてしまう関係でもそこに至るまでに全力を尽くし奉仕する。
それがサービスという仕事で、まぁ結構面白いです。
いつかは別れがやって来る、っていいですよね。
ずっと一緒にいれるわけじゃない、っていう。さすが「お客様と店」ではなく「ヒトとヒト」だな、と感じる。
気づけばみんないなくなってるかもしれないけど、悲観的なニュアンスではなく、そんなもんだから。