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東京カフェ10選②

以前に東京カフェ10選というものを書かせていただきました。順位があるわけではなくて、自分の中の偏愛を書いただけではありましたがなかなかたくさんの方に興味を持っていただけたようで書いてよかったな、と思っています。
流行っているからとか、インスタにアップしたいから、とかそういう理由ではなくて、きちんと自分が長く通えているお店を勝手にシェアするみたいな感覚です。
不思議なもので書いているうちに「あ、自分はこういうものが好きなんだ?」という共通点のようなものが浮かび上がってきてとても面白かったです。

今回も一応カフェ10選なんですけど少し守備範囲を広げようかな〜と思って書いていたら僕がひたすらお薦めしたいお店10選になってしまいました。
(夜だけのお店は今回は泣く泣く入れていません)

が…皆様の飲食ライフが少しでも楽しくなりエンゲル係数が高くなることを祈って、そのままシェアさせていただきます。
カフェのみをご覧になりたい方は上のリンクもどうぞ。


ではいきます。

①エスカルゴ(外苑前)

表参道nid cafe出身のスタッフさんたちによるビストロ。カフェでもありレストランでもあり、というまさに自由度の高い店。
「いつ行っても同じ人(スタッフ)がいる」というのが飲食店での最高の価値になるわけだけどそれってとても難しいのです。
少数精鋭というものは一夜にしてならず、歴史が必要だからです。
しかしここはそれをnidで築いてきた。
それぞれにスタイルがあり、それが店のカラーとなり「あぁ最高…」と行くたびに思う。なによりもnid cafeとして東京カフェの黎明期をリアルタイムで見て感じてきた経験がある。

「あ、山路さんだ〜」と迎えてくれるこの暖かな場所はいろんな人にシェアすべきであると感じています。
エスカルゴがある街に住んでいる人たちは心底羨ましくて仕方がないです。

野菜が本当に美味しい
パリブレストとコーヒーに食後酒でシェリーを。


②バワリーキッチン(駒澤大学)

ひょんなキッカケで、2000年のブルータスを知り合いのライターさんにお借りしました。
それがバワリーキッチン特集だったのです。(これは、もはや歴史的遺産…)

「廊下は歩くし、教室は学ぶし、目的が決まっていた。でも屋上は何も決まりがなくて、自由な場所で、カフェは屋上のような場所です。」

当時、記事の中でバワリーキッチンの山本宇一さんが「ダラダラしにきてもらっては困る」と話されていました。
今は過ごし方の自由度はどんどん低くなっていき、関係性や親近感を押し売りされる異常事態。繋がりとか。珈琲屋に行けば珈琲を飲む、ということが決まってしまっている。
ユルさしかなく、緊張感や、程よいテンションが失われつつある。
と、考えるとまたこの当時に逆行していってるのかなぁ、と考えると切ないです。ダラダラするだけなら家でいいよなぁ。
常に、絶妙なテンションと程よい緊張感のあるお店がいい。
店側も、お客側も。
関係性とか親近感とかいろんな小手先のテクニックはどうでもいいから「世界観」だけで納得したりさせたりできるのがいちばんいい。

お店の立地は大事です。
「いい立地」は郵便ポストのようにみんなが行きやすい場所や、雇用が沢山ある場所である必要があるのだけど、バワリーキッチンは入り口の目の前に郵便ポストがあるんです。
そういうデザインも含めて改めてカフェブームは起こるべくして起こった、いや起こされたのだな、と感じます。

東京カフェブームの火付け役


③武蔵野珈琲(吉祥寺)
吉祥寺の井の頭公園の近くにある喫茶店。
「古き良きね…」と思いきやメニューにはファーブルトンがあったりタルトがあったり、フランスの風を感じることもできる。
フランスってちょっと物憂げな感じというか、狭いエレベーターで登っていくアパートの寂しさとかがあると思うのだけど。
フレンチポップとかそういう少し退廃的な匂いがこの店にもあって(いい意味で)「昔ながらの純喫茶っていいよね」みたいな回顧主義だけの店ではないのです。
きちんとスタイルがあってそれがそういうメニューにもちゃんと反映されている。
味も雰囲気もとてもいい。

ファーブルトン


④月光茶房(表参道)

現在は通常営業を終了し、月に4回ほどの営業。
ジャズやコンテンポラリーミュージックで知られているドイツのレーベル「ECMレコード」の音源がコンプリートされているお店です。
「沈黙の次に美しい音」をコンセプトにしたECMの音源を聴きながらゆっくり過ごす時間はまさに至高。
ここでは他のお客への配慮も忘れてはいけない。音が美しくても過ごす側がいきでなければ台無しだ。

「お店は一回行ったら終わり」のハズなんだけどたまに"また行きたい"と思うようなお店が突如として現れたりする。
そこには必ずそのお店の「仕掛け」があるはずで、それを探るのがとても楽しい。
さらに「また行きたい」と何故自分が感じたのか、という感情の機微を自分で探っていくという作業も好きなのです。
メニューなのか、内装なのかBGMなのか、はたまた全てか、それともそのどれかの組み合わせなのか…
お店の仕掛けと、自分の感情の円の部分の重なる部分が大きければ大きいほど、いい。

ホットコーヒー


⑤ organ(西荻窪)
お昼からワインを楽しむための店です。
ここではみんながお店のルールに従い、みんなが楽しんでいます。ふたりでもひとりでも。贔屓してるわけじゃないけど、ここに来ると飲食にかかわる仕事というのは、なくてはならないし、神聖なものだと感じる。

退店までに1時間半は必要ですよというアナウンスがあって、本当に素晴らしいと思った。これってネガティブなアナウンスに見せて「1時間半は楽しんでいいよ」という時間的な赦しですよね。

自分の店のアカウントなどでいつも書くのですが「そこにいていいと感じさせること」がいいサービスで、それを全然違う切り口でやっていたのがとても勉強になりました。

なによりスタッフさんが全員パリッとしていて、訓練しているのだな、と。お店と同じでスタッフさんがみんな上品で奥ゆかしい。BGMもジョビンのstone flowerや高木正勝さんのものが流れていて、それも「あぁ…!!!」という感じなのです。(語彙)

そういう空気がワインと食事のセレクトにも現れていて、大事にしたい店のひとつです。

グラスワイン赤
グラスワイン白



⑥ブルックリンパーラー(新宿)

新宿といえば、です。(BLUE NOTEが母体)
近くにマルイとか伊勢丹があるから土日は特に混んでいます。
混んでるし、サービスも大味なんでしょ?と思いきや、結構ちゃんとしている。
例えば、ランチタイムにお酒を頼んだりすると、セットのソフトドリンクについては何を頼むか聞かれないとか。
勝手に無かったことにされたりして、でもお酒飲むんだからいらないよ、ってこっちの気持ちをちゃんと察してくれてる。ランチでお酒を飲む人には食事についてくるソフトドリンクはいらないってわかりますよね。ビール飲みながらジュースは飲まないから。
そうゆうサービスって心の底から格好いいと思う。
何でもかんでもお客さんに聞いてはいけない。
混み合っていて席数も多いのだけどきちんと全部のテーブルについて全員がきちんと把握している。
僕も苦手なタイプのお店ではあるんですけど…どこか奥ゆかしい感じっていうか…苦手だけど気になるなぁ、みたいなお店です。
ここはひとりで行くのではなく是非誰かと一緒に。とにかくハンバーガーとビールを流し込んでエネルギーをもらってきてください。

ハンバーガー
ブルックリンラガー



⑦wired cafe(上野)

仙台行きの新幹線に乗る前にひとりで上野のwired cafeに寄るのが習慣です。こういうカフェがほんとうに大好きです。
(最近は減ってしまいましたが)
トータルで雑に見える(見せている)のに「いい店だったな」と思うのです。

これってとても難しくて、逆に「おそらくいい店なのだろう」と思っても、お店に入る前と出た後で「何も変わってない自分」に気づいてガッカリするお店もあります。ただ消費して終わったな、みたいな。

nidやバワリーもそうだけど昔のカフェブームにできたお店たちはとっても上手だな、と思う。
お客さんを「楽しい」「ワクワク」した気持ちにさせてくれる。新しい機械も道具も、もうなにもいらなくて、あるのは「アプローチ」の仕方なんだよな、と感じる。

行くたびに「こういうカフェって楽しいな!!」と思う。


⑧オーボンヴュータン(尾山台)

フランス菓子のテーマパークです。
尾山台の駅から少し歩きますがそれがまたテーマパーク感を演出し、ワクワクが高まる。
オーダーの方式が少し難しいのでそれは現場でスタッフさんにお尋ねください。
勝手にウロウロするのは粋ではありません。お店のルールを教えてもらうのがスタート。

僕はもともとこちらのウィークエンドというレモンのケーキが大好きで行くようになりました。
そう、ここはフランス菓子の巨匠河田さんの店。
ウィークエンドの火の入れ方が絶妙でとても美味しいのです、芸術。

店名を冠したオーボンヴュータンは洋梨とカスタードの菓子。
(これ憧れが強すぎてずっと食べてみたかった、、!)
表面の焼き付けた部分に水分や湿気が戻らないようになってるのも驚愕。
水分の移動など細かいところまで決まってる。
"とことんまでやった"
のが伝わる。

イートインもできて、シャルキュトリーなんかも充実しています。

コンテンツの力、というのは改めて基本であり、そして最強なのだ。

フロマージュクリュ


オーボンヴュータン
イートインではシャルキュトリーも

⑨ブルーボトルコーヒー(清澄白河)

いろんな店舗がいろんなところにあって、それでもほとんど同じクオリティで楽しめる。「困ったときはここ」っていう位置付けになっています。
ファストな店のようでそうでもなくてきちんと「店」として楽しむことができる。
実は昔は自分の中で水出しコーヒーの評価があまり良くなくて(ちょっと薬臭いというか雑味が気になって)敬遠していたのですが「ほとぼりも冷めただろう」とこちらでなんとなく飲ませていただいた水出しが本当に美味しかったのです。クリアで香りが高くてするするっと飲める。すぐにその豆を買って帰りました。その時は確かスリーアフリカズという豆でしたが。
う〜んとにかくバランスが良いお店なのです。コーヒーと同じで。
ちょっとしたエンターテイメントとして「行ったことがないなら是非一度は!」と自信を持って言えてしまう店です。清澄白河か表参道の店舗が個人的には好きです。
何がどうということはありませんが広々としていて、風通しが良くて…っていう気持ちのいい感じが気に入っています。
「気持ちのいい店」というのはこれで結構難しいのです。

三軒茶屋も目黒も、渋谷ももちろ他の店舗も、どこも良いです。

清澄白河の店舗


スコーン


⑩リュファヴァー(恵比寿)
もともと下積みの時働いていた社長がこのお店を教えてくれたのがきっかけです。天井の絵がすごいんだよ、と。

フレンチトいうかビストロというか、非常にクラシックなカフェ。
もう10年前くらいですがランチどきに行ったらメニューのカレーが売り切れてしまってビーフストロガノフがあります、とのことでそれを頼みました。どうしてもお米が食べたかった…
自分史上それを超えるビーフストロガノフには会えていません。思い出補正もありつつ、人生の最高のひと皿です。
控えの層が厚いスポーツチームのような印象がそのときからずっとあります。スキが無いというか。

またその後に伺った時は、サイモン&ガーファンクルのサウンドオブサイレンスのカバーが流れていて「これ誰のカバーですか?」と帰りがけに聞いた時もお忙しい中わざわざメモを書いて渡してくれました。

いろんな思い出(出来事)が自分の中にある、ちょっと特殊なカフェです。

ここに行くと何かが起こって自分の何かがちょっと変わる。

カフェに求められているのはまさにそれです。

内観


【番外】PENITENT(本所吾妻橋)
手前味噌ですが自分の店も。

第一弾と第二弾(今回の記事ですね)で挙げさせてもらったお店の血を継ぎながらも自分なりにやってきたこととそれを総動員した自分の好きなカフェの最新型です。
「20歳の自分が行ったら格好いいと思える店」という裏テーマで作りました。


2021年の8月にオープンしました。僕にとっては念願の東京店舗。
東京に出店するのが目的ではなくて東京に住みたかっただけです。(そう考えるとめちゃくちゃ高い引越し費用になりましたが)引っ越してきたのは2019年末。すぐにコロナ禍となりオープンが2年もズレたというわけです。
「大人の遊び場」です。
珈琲もケーキも食事もある。クラフトビールやナチュラルワインもあります。
ひとりはもちろん、お友達や、恋人と来てワイワイするのも楽しいと思います。何をしててもいいです。営業は12時から21時までですが今は短縮して20時までとしてます。(気まぐれで21時までやります)ラストオーダーは1時間前。誰もいなければそこで帰ります。不定休です。用事があれば休む感じです。

完全キャッシュレス決済のみです。
現金は使えません。

スカイツリーからも雷門からも歩いて10分弱くらいなのでアクセスもいい感じです。
浅草線の本所吾妻橋駅からは10秒。

見知らぬ人と同じ空間で自由に過ごすことがとても意味のあることだとコロナ禍を通じて感じました。結局はアナログなことに価値があるね、というのがPENITENTのスタートです。

そんな感じでやっています。

是非、気軽に遊びにいらしてください。




という感じで東京カフェ10選②いかがでしたか。是非、行ってみて、そして可能であれば通ってください。
スタンプラリーではなく、人生を彩る名店との出会いがもしあれば、これ以上嬉しいことはありません。


カフェに関わる執筆のご依頼などはクリエイターへのお問合せからお願いします。

そして、instagramもぜひ!

店主のアカウント
https://www.instagram.com/yamajiyuki/


宮城県の店舗JAMCAFE
https://www.instagram.com/jamcafe_jp/


東京店舗PENITENT
https://www.instagram.com/penitent_jp/


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山路 裕希(YUKI YAMAJI)
お店にも来てくださいね〜〜!!