ありがとう。またどこかで
電車の中、隣に座ったマダム二人の会話が聞こえてくる。
話が弾んでいるのでお友だち同士かと思っていたら、どうやら偶然同じタイミングで乗り合わせた全く初対面の二人のようだ。
「私ももう91(歳)でね。あなたはおいくつ?」
「私はまだ70代ですよ」
「あらー!若いわねー」
人生の大先輩お二人からしたら、アラフォーなんて子どもみたいなものなんだろう。
自分もずいぶん大人になった気でいたけど、まだまだ先は長いんだよなぁと思う。
それにしても、お二人のコミュニケーション力の高さ。
程良い距離感を保ちつつ、それでいて親しみを込めて、互いに会話を楽しんでいる。
年を重ねるごとに初対面の人との関わり方もこなれてくるのは私も実感しているけれど、
それはたいてい社交辞令の会話で、どこか気疲れするものだったりもする。
でも、お二人は本当に楽しそう。
これも人生経験の成せる技なのだろうか。
「ありがとう。またどこかでお会いしましょうね」
そう言って91歳のマダムは電車を降りていった。
実際また会えるかどうかなんてわからないけれど、楽しかったひとときへの感謝としてその言葉を選んだのだろう。
ともすると嘘っぽく映ってしまいそうな言葉もサラッと使いこなす。
最後までレベルの高い、マダムたちの会話なのであった。