負けてばっか、苦しんでばっか、地に這いつくばってばっか。
気が狂い始めている気がする。最近はキャンバス前に立つだけで呼吸が荒くなる。講評と時間に怯えて何一つしたい事もできない。比べられて、殺される。絵を描くことを考えると貧乏ゆすりが止まらなくなったりして、筆が重くなる。絵の質なんてどうでもよくなって、早く終わってくれ、殺さないでくれ、それだけが脳を絶望神サガのごとくループしている。3ターンで死ぬよ俺は。
どんどん性格が悪くなっていく。会話ではマウンティングと人の揚げ足しかとってない。薄っすら嫌われ始めているのかもしれないけれど、俺にもう俺自身に関する自制の機能はない。人をずっと茶化している。気持ち悪い人間だな、と思う。
どんどん行動がおかしくなっていく。塾のトイレの床に座り込んで、ボソボソ歌を歌ったりしている。頭を掻きむしって、脳回路に支障をきたした小動物のようにトイレでぐるぐると歩き回ってみたり、壁に体当たりをしてみたりする。俺は俺のことを狂人ぶりたいだけのおもんないしつまんないモブAだと思っているが、実際は頭がおかしくなりかけているモブAなのかもしれない。
何もかもの原因は、俺の圧倒的性能の低さにある。と言うよりは、脳機能に対する異様な実行機能の低さにある。つまりは、ADHDにある。つまりは、俺の性能の低さにある。精神疾患のせいにしたところで社会にはだから何だと一笑に付されて終わりなので、出来損ないとしてひたすら「出来なかったです、ごめんなさい。」っていうしかない。それらしい理由をつけて。できないから受験には落ちるんですがね。落ちました、ごめんなさい。
どんどんと他人に置いていかれる。努力していないのに努力をしていると勘違いしているので、さも置いていかれているように感じている。実のところ、お前は何一つ進んでいない。努力していないから。
今まで全部を上手くごまかしてきた。あたかも絵を描きたい人間のように親には振る舞ったし、なにか描きたい絵の傾向があるように講師には振る舞ったし、何か目的があって行動しているように社会に対して振る舞ってきた。でももう振る舞いだけじゃダメだ。姿勢だけじゃダメだ。姿勢を見せたところで大学に受かるのかよ?
全部の振る舞いが、努力から逃げるためだった。中学受験の時は逃げ場が無かったから良かった。逃げるすべが何一つとして無くて、心を無いものとして取り扱えば物事は解決した。大学受験には自我がある。そっとやちょっとじゃ無いものにできないタイプのものが。それのせいで俺はトイレにうずくまって半泣きでツイッターを見たり、貧乏ゆすりと脳内の氾濫が止まらない中意味もなく立ったり座ったりする羽目になっている。俺に自我が無ければ。脳に抵抗する能力が無ければ。何とかなったのだろうか。
そう言う「自分自身で自制をしようとしない他力本願な立ち振る舞いそのもの」がダメなのでは?そんなガキ臭い思考回路して大学生なれるのかよ?おい?黙ってて何になるんだよ。
皮肉なもんだな、と思う。小学校から学校でいい子にしてなさいと言われたから言われた通りいい子にして、大人びてるね〜なんて言われて校庭でドッヂボールをやってる人間を窓から見てたやつが今は自分のうまくいかないことを他人のせいにしてnoteで泣き言をグチグチこぼすだけのクソガキに身を落としただなんて。哀れだな、と思うし、何一つ自分で自分を縛り付けることも解き放つこともしてこなかった人間には当然の末路だな、とも思う。
他人の言われたとおりにすれば他人に褒められるから他人の言われたとおりにやってきた。大学受験になって、自我を得て自分を解き放つ機会を与えられた途端に俺の脳は勢いよく機能停止に陥った。取り敢えず機能が停止していることを悟られまいという自我の中で十数年育んだ傲慢なプライドの下、さも表現に興味がある学生のように振る舞うことになった。しかしながら自我のもとで同じく熟成された爆発的な怠惰はそう振る舞い続けるための最低限の努力をも拒んだ。本当は俺は何もしたくないんだと思う。死にたいとかでもなく、何もしたくない。寝て起きて、そして寝たい。もう何もしたくない。努力も継続も人生も責任も何もかもしたくない。
自制能力が完全に欠落しているせいで、何時間も自分の意志で身体を動かし続けることができない。学校の勉強と画塾は違う。画塾は自分の手綱を自分で持たなければ全くもって前には進まない。俺の手は手綱をもつだけの力も残っていなかった。毎回俺は絵に対して何一つ計画も目的もない。ただ6時間を消化するためだけに、来なければいけないという義務感の元にいるだけの話になっている。だから絵もうまくならない。だから「表現に興味があるので美大に入った人」というロールプレイが出来ないというので焦り始めているのだ。
何処までも俺は一枚肉の皮を隔てて俺を見ている。結局俺は本当にしたいことなんて無いんだと思う。ただ、薄皮の奥の自分のプライドを守ること以外何もないんだと思う。愚かで醜い。俺は俺に失望しながら、引っ張るでも無く手綱をただ手に置いている。何処にでもぶつかって壊れてしまえばいい、なんて思いで。
気が狂いそうだ。