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映画:『ウィズアウト・リモース』

 連休中は体調不良で半ば意識飛んでいるうちになんだかんだで終わってしまっていた。そんな時こそアマゾンプライム。
 新作が来てくれていて良かった。

 ウィズアウト・リモースを見た。

 マイケル・B・ジョーダンというと最近活躍が目覚ましい。劇場での公開は延期されてしまったが。このウィズアウト・リモースも予告編を見ればすごい作品だとピンと感じてしまう、そんな凄みは確かにあった。

 そんな俳優がトム・クランシー作品を新解釈する映画に出ると聞いて期待しない理由はなかった、はずだった。

 トム・クランシーが1993年に出した「容赦なく」が原作とされている。

 かつてシールズに所属していたジョン・ケリーと部隊は、シリアのアレッポにてCIA工作員を救出する。その時、シリア軍を支援するロシアと交戦する羽目に。
 帰国後、彼は軍を退役。
 妊娠中の妻との幸せな生活を始めようとしていた。

 しかし、ロシアはシリアで交戦したアメリカの隊員への報復を開始。
 ケリーの家にも暗殺部隊が送り込まれた。ケリーは1人で抵抗するものの、妻は無惨にも射殺されてしまう。怒り、絶望しつつケリーは失った妻子の復讐を決意する。だが情報はあまりにも少ない。

 それでもジョンは暗殺者がFSB工作員のヴィクトル・ルイコフであることをつきとめたが。追い詰められていた彼は公衆の面前でロシア大使館職員を襲撃し、射殺していた。逮捕された彼を政府はロシア人の多い刑務所に送り込むが……。あらすじは終わり。

 結論から言おう。

 トム・クランシー作品のジャック・ライアンシリーズにも登場する。。
 人気キャラクターであるところのジョン・ケリーことクラーク誕生譚となるはずのこの作品は、「時代に合わせるため」という言い訳の元で凡作以下のとんでもない意味不明な映画となってしまった。

 ジョン・ケリーを演じるのが黒人であっても自分は良いとは思う。
 しかしキャラクターの中身までゴリゴリかえてしまってこれでもケリーです、クラークですと言い張ってどうするのか。

 それでも製作者としての良心を信じたくて最後まで見たのだが、シリーズにつながるライアンのラの字も出てくることはなかった。ジョンはひとりでいいらしい。
 そうかそうか。監督と制作者たちは政治的な正しさであるところのBLMと愛国心にダンスさせたからこうなったとでも言いたいのだろう。

 キャストにはガイ・ピアースなども出ていて決して悪いわけではなかったのだが……。とにかくストーリーのひどさがキャスティングにも影響していて、悶絶させられる。

 いや、けなすのはもうやめよう。
 逆にこの作品の良い点について触れてみたらなにか変わるのかも。

 単純にアクション映画としてどうだっただろう?
 冒頭は気合が入っている。あっさりと任務は完了し、騒がしい突発事故が始まるが。不思議なことに無敵のアメリカ兵たちは相手を薙ぎ払って無傷で撤収していく。

 ロシア側のアメリカ国内での襲撃の始まりは、あの『コマンドー』の冒頭を思い出してしまい失笑したが、それはまぁいいだろう。
 負傷した主人公が病院に運ばれ。絶望の中でリハビリする姿には説得力があった。

 だが主人公が兵士だったのはここまで。
 この後、彼はテロリストになり、パニッシャーになり、ランボーになる。色々大活躍はするけど、復讐なのか陰謀なのかよくわからないままガイ・ピアースを誘拐し、拷問してなんか終わってしまう。とうとつで、あっけなさ過ぎて驚いたが。もしかしたらそうは思わない人もいるかもしれない。

 すべてを通してカメラの切り替えがおかしいのか、銃撃戦の緊張感を嫌ってるようで。なぜか主人公と黒人の女隊長が暴れるところだけが続いているように感じる。

 敵に撃たれて苦しんでいるはずの味方は大人しくし、死の恐怖なんて言葉にもしない。いやもういいだろう、とにかくアクションにも見れる部分は多くはない。ひどすぎる、画面に出てくる皆が活躍すべき人達のパートが終わるのを待ってくれているみたいだ。中学校の学芸会っぽさを感じる。

 つまり頭を空っぽにして、アクションだけ楽しもうとしても大変に難しいつまらない映画だということだ。

 そうそう、どうやらこの製作者たちは続編としてレインボーチームを描きたいと思っているようだが。自分は心の底からやめてほしいと願っている。
 マイケルは良い仕事をしたとは思うけれど、ジョン・クラークは彼には無理だ。その証拠に1994年に公開された「今そこにある危機」でジョン・ケリーを演じているウィリアム・デフォーをぜひ見てほしい。

 さて、最後に少し余計なことにも触れる。
 この作品では主役を演じたマイケルも制作に携わっていたようだ。後で知ったことだが、これを最初から知っていたらきっと自分の期待値はもっともっと低くすることができただろう。

 ネトフリでも彼は「レイジング・ディオン」という作品で出演だけでなく制作にも名前が入っている。
 とりあえずシーズン2があるそうだが。配信当時、期待値マックスだった自分は退屈過ぎて半分寝かけながら見た気になっていた。
才能ある彼には映像への愛はあるのかもしれないが、センスがもしかしたらないのかもしれない。

 以来、彼の作品を見るときは制作に名前がないことを少しばかり願い始めていたりもする。

 ところで噂ではあのクリードの3作目が動き出しているらしい。
 だが残念なことに制作にマイケルの名前があることも聞いているし。ロッキーを演じていたスタローンも参加しないと発表している。自分はクリードシリーズはできるだけ早く2作目まで見たいとは思っているが、3作目に関しては別に急いで劇場で今度こそ見ないと、とは思っていない。

 彼がかかわっているせいだ、とは断言しないが。
 今作と「レイジング~」にある共通点がストーリーがスカスカのゴミってことにある。

 だから彼の新作に私の腰が引けてしまっても、それを責めてほしくはないのだ。

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