偽りなき者
2012年(日本では2013年)公開のデンマーク映画。
冤罪で変質者のレッテルを貼られたルーカスと、その周りの仲間、社会との関わりが苦しいほど生々しく描かれている物語。
題材がハードすぎる。
北欧映画は暗いイメージが多少あるが、ここまでとは思っていなかった。
とにかくずっと辛くて観ていられなかったが、観て良かったと思う映画だった。
あらすじ
離婚と失業の試練を乗り越え、ようやく穏やかな日常を取り戻したルーカス。しかし、親友の娘の作り話が元で変質者の烙印を押された彼は、町中の人から白眼視され、仕事も親友も、そして信用も全て失ってしまう。そんな理不尽な目にあいながらも、無実の人間の誇りを失うまいと必死に踏ん張るルーカス。彼が体験する世間からじわじわと迫害される恐怖と、自らの尊厳をかけた孤独な戦いの行方を、北欧の真冬の空気のように張り詰めたタッチで描いた
引用:http://itsuwarinaki-movie.com/intro.html
ルーカスは冤罪で世間から孤立。
親友の娘の嘘が元凶ではあるが、「子供は嘘をつかない」という親や保育士たちの盲目さにも恐怖を感じる。
日本映画でいうと、「それでもボクはやってない」と似たものがあって、絶対悪が存在していないのが余計辛い。
強いていえば警察などになるのかもしれないが、人間は盲目になると真実を判断できなくなるのだろうか。
やはり主観だけに頼ってはいけないなぁ。
そしてこれが現実で起こり得るからこそ、真実が見えない、盲目で最低な社会に絶望してぶっ壊したくなる時があるなと。自己に対しても然り。
これくらい全力で殴りかかってきてくれると、こちら側も思考せざるを得ない。
映画は制作側の意図が伝わるくらい全力で攻撃してきてくれる作品がやっぱり好きだ。
人間の脆さ
この映画を観た感想としては、社会的な生物である人間の不平等さ、脆さが素晴らしく描かれている作品だなぁということ。
お互いが正しさを主張しても分かり合えない。結局はマジョリティが正義になってしまう。
これはかなり社会の現実だと思う。マイノリティはマジョリティによって排除される、結果的には居場所が減ってしまう。
だから強かに、優しく立ち向かう必要があるのだが、それでも救われる保証がないという不平等性を背負っていかなくてはいけない。
現実は厳しい。
主観の怖さ
映画を見ている時の感情として、途中から怒りの感情を周囲の人間たちに向けながら見てしまった。
しかしそれはルーカスの立場で見ているわけで、客観性が欠如していると気づきなんとも複雑な気分になった。
これだから人間は間違いを引き起こすのかと、少し自分に対して恐怖さえ覚えた。
これは『JOKER』を観ている時にも感じたもので、やはり攻撃性の強い感情、怒りや憎しみは恐ろしいなと。
これを疑似体験できるのは映画の良いところだ。これは良くないぞ、と自戒する機会になる。
こんな状況に立たされたと仮定して、私はルーカスほど強かに、そして寛大に生きられるのだろうか。
とても考えさせられる映画だった。
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