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インド一人旅の初日にiphoneを失ったら~Vol.3~

〜Vol.2からの続き〜

寒さと不安で泣きながらバイクタクシーに運ばれ、僕はホテルに到着した。
翌日はタージ・マハルのあるアグラに行くために、早朝の電車に乗る必要があった。
しかし、考えるべきこと、調べるべきことは山のようにある。
そして、何かを調べたくても、その役割の筆頭を担ってきたiPhoneを失ってしまった。

おそらく一般的には、警察に届けたり、大使館に助けを求めでもした方が良いのかもしれない。
しかし、やっとの思いで仕事を調整し、土日に有給3日間をくっつけ、ようやくもぎ取った5連休でのインド旅行だ。
絶対に自分の描いたスケジュール通りに行動したい。タージマハルも見たいし、ガンジス河にも浸かりたい。

僕は、腹を括った。
届け出や捜索活動の類の一切をせず、明日以降も当初の予定通りに行動することを決めた。

ほとんど眠れずに、翌朝を迎えた。
僕の心情を映すかのように、辺りはまだ暗い。
とりあえず、ニューデリーの駅まで行かなければならない。昨夜、チケットを買うために右往左往した、あの駅だ。

普段だったら、Uberでタクシーを呼び、車の到着状況でも見ながら、優雅にロビーに下りていけば良い。
しかし今はそれもできないので、流しのタクシーを捕まえるしかないかなと、かなり時間に余裕を持ってホテルを出た。

実際にはその心配も杞憂に終わり、ホテルのドアマンらしきおっちゃんがタクシーを呼んでくれて、僕は無事にデリー駅に到着した。第一関門突破だ。

ホッとしたのも束の間、第二関門はすぐそこにあった。
自分の乗る列車が、どこのホームに来るのか、さっぱりわからないのだ。
日本のように、整備された案内表示や電光掲示板などない。時刻通りに来るわけでもない。
仮にホームまでは見当がついても、乗る車両がどこなのかもわからない。

とりあえず近くにいたおっちゃんに英語で聞いてみたら、キョトン顔をされてしまった。かわいい。
身振り手振りを交え必死にコミュニケーションを試みたところ、何とか正解っぽい場所に辿りつくことができた。

余談になるが、以前、イタリアのベネチア駅から、ナポリに向かう高速列車に乗ったことがある。
その時は駅員らしき人に尋ねたのだが、英語は通じたものの、とても対応が冷たかった記憶がある。
それと比べたら、言葉が通じなくても、キョトンおじさんの方が1億倍ありがたかった。

キョトンおじさんのおかげで、無事に列車に乗り込むことができた。
「出だしで大きく躓いたけど、本当の旅はここから始まるんだ」
そんな淡い希望は、またしても打ち砕かれることになるのだが、その時の僕はまだ知る由もなかった。

〜続く〜

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