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通訳の仕事③ 必要な能力編その2

こんにちは。

今回も前回に引き続き「サッカースクールでいい通訳になるために必要な能力」について考えていきます。

・的確な状況、文脈認知能力

なぜこれが重要になるのでしょうか。サッカーに例えてみればわかりやすいかと思います。


前回の記事で「高い日本語力」とは「説明する対象や、その状況や文脈にあった言葉や表現を選び訳す力」と言いましたが、つまりこれはサッカーに例えれば認知→判断→実行の中の判断と実行の部分となります。状況理解した上でそれに適切な日本語を届けることで訳す作業は完結しますから。

では、今回の焦点となる「的確な状況、文脈認知能力」はどれに当てはまるかというと、まあ文字どおりそのまま認知の部分に当てはまります。通訳においても、ただ言葉を訳すだけではなく、その前に状況を認知するプロセスは存在するのです。


ここで思い出してほしいのが、エコノメソッドの4つの構成要素です。その一つに、「認知」という要素がありましたよね。
認知は次の判断を助けるための重要な作業ですよね。

通訳も同じです。コーチが言葉を発する時に、的確に状況や文脈を認知できていなければ、次の言葉選びのプロセスに支障をきたしてしまいます。



例えば、こんなことがありました。あるひかU11を対象にトラップをコンセプトとしたトレーニングを行なっていた時。「前にスペースがあったら大きいタッチで進んでいく」が主な判断基準、キーファクターでした。

選手たちはみんな言葉では理解してるものの、スペースがあっても大きくトラップすることを躊躇していました。僕は恐らくボールを取られるリスクを負いたくないという心理的な部分が理由になっているのかなと感じていましたが、そんな中コーチが

“Determinación "

という言葉を大きな声をなげかけました。

一瞬僕は混乱しました。というのもこれは辞書では「決心、決断力」を意味する単語で、決心することや決定する様を名詞化したものと解釈される故、日本語で訳すには少し言葉を変えなければいけなかったからです。


しかし、ここで僕はとっさに「思いきり!大胆に!」と訳すことに成功し、子供達からも思いきりあるプレーに傾き始める様子が見られました。


正直、ここでこの言葉を発したというのは素早い状況、文脈認知というよりも「閃き」の要素が大きいのではないかと思われそうですが、まあ確かにそれもあるでしょう。しかし、それができたのも事前にそのトレーニングのキーファクターを理解していたこと、子供達の様子からできない原因を探れていたこと、あとはまあコーチの性格とかからなんとなく言いたいことは察することができたことなど、あらゆる状況や文脈を認知できていたことが大きく影響したのではないかと思います。

それが、最終的な閃きや、前回の内容に照らし合わせるなら、状況や文脈にあった言葉や表現を選び訳すことに繋がったのではないかと思います。


スピードや正確性が求められる中、サッカーと同じようについつい実行の部分(訳される日本語)に注目されがちですが、その前のプロセスも同じくらいもしくはそれ以上に重要なんですよね。


だからまあ、今後は仕事がいの時間は実行の部分(語彙力、純粋な語学力)を磨きつつ、トレーニングを重ねる中でより良い訳ができるよう、その前の2つのプロセスを実行する上で重要な能力の研鑽に努めていきたいです。


子どもたちの成長に少しでも大きく貢献するために。


それではこの辺で。



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