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[#仕事の心がけ] 漫画を描く時に心がけている事

私の本業は、妻と一緒に開いているお店で、空いた時間に漫画を描いています。漫画は基本的には趣味で、仕事ではないのですが、ほんの少し収入があるのと、漫画についての話は多くの人にとっても身近で興味深い内容だと思うので、「#仕事の心がけ」のテーマでブログを書いてみようと思います。

https://note.com/yuki1192/n/nff8565ed5834?magazine_key=mb12727671f13

私は漫画は、読者との対話だと思っています。対話とは、会話・コミュニケーションと言い換えることもできます。あなたが何か話題について人と話す時を想像してみてください。例えば怖い話をする時はこわ~いトーンで、爆笑できる話をするときはテンション高めで話しますよね。これは漫画においては絵柄なのです。怖い漫画は怖い絵柄で、ギャグ漫画はギャグっぽい絵柄になっていますよね。たまにギャグっぽくないシリアスな絵柄のギャグ漫画もありますが、それは真顔でぼそっと爆笑ギャグを言う系の人と同じことだと思っています。また、シリアスな話をするときも、あえて冗談を交えて相手がうんざりしないようにすることもよくあります。同じように私の漫画も、テーマ自体は心の病み的な暗い内容が多いので、ゆるめの絵柄にすることで読者が暗くならず、気軽に入りこめるようにを心がけています。

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また、話の内容がうまく伝わるように整理して話すことも大事ですよね。これは漫画においてはコマ割りやセリフ量の調整なのです。ある意味ここが会話においては一番大事です。例えば、学校の歴史の授業はつまらない内容が多いですが、それをうまく整理して教えてくれる先生に当たったら理解しやすくなりますよね。プロの漫画家が編集者と一緒に漫画を作る際、主に打ち合わせるのはこのコマ割りとセリフ量の調整の部分なのです。どんなに面白いテーマの漫画でも、コマ割りが読みづらかったり、セリフが長すぎor足りなさすぎだと、読者にその面白さが伝わりません。多くの場合、読むのをやめてしまいます。わかりづらい歴史の授業で寝てしまうのと同じことです。そうならないよう客観的な目線でアドバイスするのが編集者の仕事なのです。

さらに、会話には具体例を出すことも大事です。例えばすごく感動したアニメの話をする時に、「神」とか「涙が止まらない」等の例え表現をしますよね。アニメは映像なので神様ではないですし、涙もまあ実際のところは3分くらいすれば止まります。つまり架空の存在や現象を出すわけです。これは漫画におけるキャラクターやストーリーです。漫画は作者の概念を架空の存在であるキャラクターや、架空の現象であるストーリーに置き換えて語るものです。例えば作者が「努力しないでモテモテになりたいな~」という概念を持っている場合、隣の家におてんば美少女の幼馴染キャラクター(架空の存在)が住んでいて、毎朝窓から主人公を起こしに乗りこんでくるというストーリー(架空の現象)を作ったりします。こういった具体例を出すことで相手は、努力しないでモテモテになる気持ちに感情移入することができるのです。

私は常に、こういった会話・コミュニケーションとの共通点を心がけながら漫画を描いています。これは若い頃プロを目指して持ち込みを繰り返していた時期に気が付いたことです。雑誌に連載されている漫画は基本的には読者のためにあるものです。なぜなら、読者がいなければお金が発生せず、漫画家は収入を得ることができないからです。スーパーに売っている大根は食べる人のためにあるのと一緒です。大根くんのためにスーパーに置かれているわけではないですよね。

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その際、漫画、つまり会話のスタイルにもいくつか種類があります。私は主にこの3つに分類できると思っています。

①俺の話を聞けタイプ
②読み聞かせタイプ
③ピエロタイプ

①は、会話において延々と自分の話ばかりするタイプです。自分9:相手1です。話してるうちにアツくなって話の内容に合わせてジェスチャーや声色がオーバーになっていく人、いますよね。漫画でいうと、すごいパワーで俺ワールドを展開する漫画がこれに当てはまります。
②は一番オーソドックスで、自分の話を正確に伝えたいタイプです。自分5:相手5です。相手の表情を見ながら慎重に話を進め、あ、ここわかりづらかったかな?という所は繰り返して説明したりもします。漫画でいうと、安定して毎回読みやすい漫画です。
③はひたすら相手を楽しませようとするタイプです。自分1:相手9です。おせじを言ったり、相手と価値観が合わない場合は自分のほうを曲げてまで相手に合わせてしまうタイプです。漫画でいうと、流行をリサーチして今求められているであろう漫画を計算して描くタイプです。

例えば学校の教室だったら、この3パターンの人たちが混ざり合っていますよね。そして、①の人はクラスのリーダーになるか、場合によってはハブられてしまうタイプだと思います。バーンと目立ちつつ肝心な所では空気を読む技術も必要だからです。ある種の天才型です。なのでリーダーになれる人はクラスに1人か2人しかいません。そして学校の教室は、漫画でいうと漫画雑誌なのです。①のタイプの漫画は大ヒット看板漫画になるか打ち切り漫画になるかだと思います。大ヒット漫画ってそう簡単には産まれませんよね。読者のためにある漫画雑誌において、逆に読者が漫画についてくるカリスマ性/天才性を持っている必要があるからです。なので多くの場合①のタイプは、読者がついてこれず打ち切りになってしまいます。
②のタイプは教室でも一番多いタイプだと思います。みんなそれぞれ正しく会話をしたい、自分も相手も楽しくありたいと思うのは当然のことです。
③は一見人気者だけれども、本当の自分を封印しすぎてどこかで疲れてしまう、もしくは面白いけど実は割り切って人付き合いをしているだけというタイプだと思います。漫画で言えば、流行りものよりやっぱり自分の描きたいものを描きたいな…となったり、逆に生活のためと割り切って描いているタイプです。

実際、漫画雑誌も、多くの連載作は②か③のタイプです。①でしかも看板になる作品は1作か2作あれば十分なのです。基本的には↑↑で書いたようにプロの漫画は読者のためにあるので、①俺ワールド中心の漫画よりも、②自分も読者も楽しい漫画、もしくは③ピエロ型で読者楽しませ重視の漫画の方が、理論的には漫画として面白くなるのです。これには作家それぞれの本質が関わってきます。本質的に俺の話を聞け!の人がピエロにはなかなかなれないというようなことです。自分の場合は、今も昔も②を心がけて漫画を描いています。それは、自分の本質には「人間好き」という部分が大きく存在するということに気づいたからです。

https://note.com/yuki1192/n/n1d8f14be8c0d?magazine_key=m99be84dd6d2f

私はこれまで色々なタイプの友達がいました。地元は時代的にも不良が多かったのでそういう友達グループから始まり、バンドをやってる友達、応援団の友達、オタク/サブカル的サークルにいたこともありましたし、チャラい友達とビリヤードのサークルを作ったこともありました。水商売や風俗関係の友達、援助交際している友達、メンヘラ系や地下アイドル的な活動をしている友達、ひきこもりの友達、逆に余計な苦労や外部の悪意から守られ続け健やかに育った優秀な…要は上級国民な友達もいました。最近は外国人の友達と交流することがメインです。色々なタイプと書きましたが、実はそのタイプって表面的なもので、本質は共通点が多いんです。私はそういう本質に触れるのが好きなので、自然と誰とでも仲良くしたくなるわけです。①は相手の本質は無視して俺の話を聞け!ですし、③は自分を出さないので本当に仲良くはなれません。やっぱり私の本質にあるのは②なのです。デビューのための模索段階で①や③の漫画も試してみたことがありました。具体的には①ではハジケ全開のギャグ漫画、③では美少女系の漫画です。でも、どちらも持ち込んでも良い評価は得られませんでした。漫画は自分の内面を描写するものなので、自分の本質から外れたノリを描いてもだめなのです。やっぱりなんだか不自然になってしまうんですよね。そういったことも常に心がけてています。今もたまに流行の絵柄や内容を真似してみようかなーと思うこともありますが、あまり引っ張られないように心がけています。

②の象徴的な出来事が、海外の友達との交流です。ここ数年はそれをメインに漫画を描いています。私はいつも最初に日本語で漫画を描いて、そのあと英語に翻訳してTwitterで公開しているんです。日本人を1億人とするとそれ以外は60億人以上いるので、本当にたくさんの読者と交流できて楽しいです。そして何より、住んでいる国や文化が違っても、内面の本質は我々と共通点が多く、「なるほどね~」と興味深さを感じるのです。メールは毎日誰かとしますし、日本語を教えたり、恋愛相談にまで乗っています。最近よくTwitterでコメントをくれるのは、ブラジルのコミック作家のこの方です。

https://www.webtoons.com/en/challenge/miyako-chan-no-kare/list?title_no=124733

とても気さくで陽気な方で、我々の持つブラジルのイメージぴったりです。日本の文化も大好きで、きっかけはラルクアンシエルのこの曲だったそうです。

なんと日本のお笑いも好きだそうです。ダウンタウンの似顔絵です。そっくりですよね!

お笑いって感覚的なものなので、日本以外でもウケることがあるというのはビックリでした。浜ちゃんをゴリラで描いているのも、ダウンタウンのノリを「わかってる」感がありますよね。自分が漫画を英語に翻訳する際、あまりに日本独特な感覚(厳しすぎる部活とか)は理解されづらいかな~と避けることが多かったのですが、こういう交流を通して「意外とわかってもらえるかも」の範囲が広がるのです。現在は日本語の勉強を始めたようで、いつか日本に来たときに会えるのを楽しみにしています。

もう一人、最近よく交流する方を紹介します。アメリカ中西部に住んでいるこの方です。

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私の妻に関する漫画を特に気にいってくれています。私の妻は小さい頃から心と体を病んでしまい、みんなが出来ることが出来ず、私がサポートしつつ日々一生懸命に暮らしています。そしてそういう妻に彼女はすごく共感をしてくれるのです。

「あなたの漫画を読むといつも、私は一人じゃないと思えます。私もあなたの奥様と同じでとても不安を感じやすくて、時には会話すら困難になるんです。自分のありのままを受け入れることは難しいです…。でも、奥様の強さは私を元気づけてくれます!そのことをお伝えしてもらえると嬉しいです。応援しています。」

こんなふうに、自分の内面をたくさん話してくれます。そして私の漫画によって「自分は一人じゃないと思える」なんて、まさに漫画コミュニケーションですよね。そして彼女の作品も非常に繊細で魅力的です。

こんなふうに、私が漫画を対話ととらえ、実際に描く漫画でもそれを心がけていたことが、現在も活きているのです。海外の読者や友人とのやりとりは他のブログでも時々描いていますので、興味がありましたらぜひ読んでみてください。

以上が、私が仕事…というか趣味の漫画で心がけていることです。読者との対話が私にとっての漫画の本質で、それによって実際のコミュニケーション範囲も広がりました。そこからまた考えを深めて、漫画に活かせれば最高です。趣味なんだから①の俺様タイプになって好き放題描くのもいいのですが、私はやっぱり多くの人に読んでほしいんですよね。「俺の話を聞け!」ではなく、「面白い話ができたから読み聞かせするね!あ、わかりづらいところがあったら言ってね」のタイプなのです。これで漫画が人生のメインの仕事になれれば最高ですが…そのあたりは運よく巡りあわせがあればで良いのかなと思っています。興味を持ってもらえましたら、ぜひ他の漫画も読んでみてください。最後まで読んでくれてありがとうございました。

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