監査対応マニュアル
【本記事は会計系Advent Calendar 2024における12日目のエントリーです】
改めて自己紹介させていただきたいです。
事業会社で数年経理を経験し、監査法人をシニアで退職したのちに今は事業会社で経理の責任者をしております。
何も考えずに昨年に引き続きエントリーしたところ、四半期決算の締め日にぶち当たってしまい、内容が発泡酒の水割りよりも薄い何かになってる点、ご容赦ください()
ヘッダーはGrokで「監査対応マニュアルを描いてください」と聞いたところアウトプットされた何かです()
監査対応マニュアルと銘打ってますが、事業会社で監査対応している方々、監査法人で監査に従事されている双方に読んでいただければと思います。
1.監査対応って大変?
事業会社で監査対応をされている方々はいつも大変な思いをされている方々が多いのではないでしょうか。
一方で、監査法人側で監査している監査人も、事業会社とのやり取りで苦労されている方々もいると思います。多くの理由がコミュニケーションのズレによるのではと思いますので、そのあたりを紐解きつつ、より双方にとって有用な監査となる一助となれればと思い記載します。
事業会社によって、監査法人は敵ではないため、双方歩み寄れるようなコミュニケーションが重要です。一方で、監査法人は多くが会社法上の機関ではありますが同じ志をもっている仲間ではないため、距離感は考えて付き合いましょう。
個人的には、監査法人のパートナーの方々でクライアントのことをウチは~と発言するのはとても違和感です。(賛否両論あると思いますが)
コミュニケーションとして、大きな割合を占めるのは以下の点だと思います。
2.依頼資料リストって作りこんでますか?
監査法人から必ずと言っていいほど送られてくる依頼資料リスト、結構作りこまれていないことが多く、双方のすれ違いの原因となっていることが多いのではないでしょうか。
これから社会人、監査法人に入る方は知ってほしいのですが、テキストだけのコミュニケーションは相当ハードルが高いです。漏れなく、ダブりなく簡素で表現の揺れは無いのか等気にすべき点が多く、それだからこそより丁寧なコミュニケーションが求められます。
個人的には、この依頼資料一つで監査工数が大きく減ると思っており、適当なチームだと、他のクライアントの依頼資料を使いまわしたままと杜撰な場合もあります。一方で、事業会社側で会計士がいない場合、どういった資料がいつ、どの粒度で求められて…といった具合が当然分からないこともあるのではないでしょうか。そのため、少なくとも以下の項目について、監査人側は依頼資料に盛り込む、事業会社側は監査人に提案してみる(むしろ作る)のが良いです。
①依頼資料の依頼日と受領予定日
②依頼資料の趣旨
③どの場面で必要か(実証、分析や開示といった粒度)
①依頼資料の依頼日と受領予定日
当たり前の話ですが、依頼することに満足してしまい実際に締め切りを記載しない人も一定層いると思います。(リストに書けばレストランの料理の様にウェイターが運んできたりしません)
ただ、事業会社だと何だかんだ日々の業務や社内対応で対応する時間が取取れず、基本的には業務の合間や残業で対応されているかが多いのではないのでしょうか。そんな私も日中は会議で埋まっているため、夜な夜な依頼資料を用意することが多いです。。。そのため、いきなり三日前までにくださいと言われても対応できないことが多いです。決算の始まる1カ月前には依頼資料リストを送付しつつ、お互いのスケジュールを改めて共有し双方締め切りを確認したほうが有意義ではないでしょうか。
また、事業会社、監査法人双方がどういったスケジュールで動いているのか知らない事も多いのではないでしょうか。決算スケジュールを事前に共有もしつつ、私は社内のコミュニケーションツールに監査法人も入っていただき、簡単なやり取りはツールを通すことでコミュニケーションコストを下げる様にしております。なにより、M&Aなどを除いて会社のビジネスが次年度から大きく変わることは少ないと思うので、依頼資料リストを作りこむことで、監査工数はぐっと減ると思います。
②依頼資料の趣旨
監査経験がないと、そもそも何の手続で求められているのか分からず、不毛な資料のやり取りが続きがちです。場合によっては監査法人にだけ見せるための資料をわざわざ作ったりと経理の工数が奪われる場合もあるのではないでしょうか。ポジションペーパーなど必要な資料を会社側でそもそも作っていないことは論外ですが、事前に趣旨を書いて、なぜその資料が必要か簡単に書くだけでも不毛なやり取りは減ると思います。また、事業会社にいると監査で見る資料よりも更に細かい資料を見る事が多いため、実は既にある資料で事足りる場合もあります。
③監査資料の提出場面
これも予め記載する事でスケジュールも読みやすくなりますし必要な資料を適切な場面で提供できる様になると思います。
期末監査と一口に言っても残高や一部見積りを除いて多くは前倒しできるものが多いです。必要な証憑はタイムリーに受領して双方検討する事で期末にスムーズな監査が行えると思います。
以上を踏まえながら私は事業会社側で監査法人の依頼リストを作成してまして、ある程度追加の依頼がない様にコントロールしてます。
(さすがにサンプル漏れは気づかないですが)
3.ポジションペーパーって使ってますか?
会計上の見積り絡みなど複雑な論点になる場合、事業会社側で会社の主張並びに期末における着地を示すためにポジションペーパーを作成する事はかなり有意義だと思います。ポジションペーパーってそもそも何?という方はこちらを見てみて下さい。
(てりたまさん、引用させていただきます)
ポジションペーパーを作りつつ、事前に監査メンバーと決算前にディスカッションをすることで、おおよその会計処理の合意について認識の相違は減ると思います。(一方で監査法人側の審査でひっくり返されるリスクがあるため、論点の度合いによっては事業会社側から監査チームに対して審査社員にまで見てもらえるように念押し必須です)
特に事業会社側で監査経験のある会計士は是非とも監査調書の形式で作成しましょう。双方のコミュニケーションコストはずっと減ると思います。きっと監査法人側で体裁を変えて監査調書として生まれ変わり電子調書システムに添付されて(文字数)
4.反省会はやってますか?
期末監査が終わり、マネジメントレターも受領した後、事業会社側は気づいたら四半期決算も見えており、監査が始まってしまうことも多いのではないでしょうか。
ただ、リモートでもよいので、新たに監査契約を結ぶ前にでも事業会社の監査対応メンバーと監査法人のスタッフレベルで、この期末の反省点と今後のアクションを双方話してみると次の監査がよりスムーズになることも多いです。私は監査法人の時も今の事業会社でも自主的に場を設けてやってました。時間がたってしまうと、話に新鮮味もなくなり、記憶もあやふやになってしまうので、期末が終わった後すぐにやるのがおすすめです!
5.最後に
以上、主にコミュニケーションを中心に解説しました。
ここまでやっても期末に何か新たな論点が発掘されたりと仕事をしていて大変な思いもあると思いますが、経理部や監査人の皆様も日々、資本市場に適切な財務諸表を送り届けているインフラとして誇りをもって仕事していただければと思います。
監査法人側で炎上した際の心構えは去年書いてますので、監査人の方はぜひ見てみてください!