【読書感想】現代の若者は社会から強いられた貧困に直面している
こんにちは、Yukiです。
今回ご紹介する本は、藤田孝典(著)『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』です。
突然ですが、あなたにとって「貧困」とは何でしょうか?
それはどのような状態を指すでしょうか?
そして日本に貧困はあると思いますか?ないと思いますか?
このnoteで、貧困を考えるきっかけになれば嬉しいです。
本の紹介-貧困と労働万能説
この本は、現代の若者の貧困に焦点を当て、その実態に迫ることを目的としています。
まず本書で使われるキーワードについて確認します。
著者である藤田さんは、15歳~39歳の人を「若者」と定義しています。
そしてその若者を、「貧困世代」と呼んでいます。
貧困世代とは、「稼働年齢層の若者を中心に形成される世代であり、貧困であることを一生涯宿命づけられた人々」のことを指します。
さらに藤田さんは、貧困世代の貧困は「日本社会から強いられた」と主張しています。そんな貧困世代は、「監獄から出られない囚人」のように見えると言います。
つまり、社会の構造が貧困を生み出しており、一度貧困に陥ってしまうと、そこから脱出することは難しい、と僕は解釈しています。
また藤田さんは、若者の労働や貧困に付随してくる自己責任論や努力に対しても言及しています。
藤田さんによれば、若者に対する支援活動を行っていると、必ずと言っていいほど聞かれることがある、と言います。
それが、「若者に対する支援は本当に必要なのか?」という疑念です。
もっと具体的に言うと、「どうしてまだ若いのに働けないのか?」「なぜそのような状態になってしまうのか?」「怠けているだけではないか?」「支援を行うことで、本人の甘えを助長してしまうのではないか?」といった疑念です。
こうした疑念は大きく5つの種類に分けることができるそうです。
今回はそのうちの1つである「労働万能説」を紹介します。
労働万能説とは、簡単に言えば「若者なんだから働けばなんとかなるし、生活できる」というものです。
しかしながら、その説が通用する時代はもはや去りました。
急激な雇用環境の変化により、非正規雇用の割合が増えました。まともな賃金を必ずもらえるという保証もなく、不安定な就労形態をとる。働いたからといって必ず生活が豊かになるわけではない、と指摘します。
また、ブラック企業の台頭により、さらに拍車が掛かります。サービス残業を過労死寸前まで強いられたり、罵詈雑言を浴びせられたりで、普通に働きたいのに働かせてもらえない。その結果、鬱や精神病といった疾患を発病してしまい、働けない状態へと追い込まれる。
これらの状況から、労働万能説は通用しないといいます。
しかし、この説を信じる人の中には、このような若者を怠惰と見なす傾向があるといいます。そしてしまいには、「仕事なんて、選ばなければいくらでもある」と。
確かに選ばなければたくさんあるかも知れません。
しかしながら、ブラック企業に就職したことで、精神病を患うほど、自らの精神を破壊された人にとってみれば、次に就職する場所はブラック企業ではないところが良いと思うのは当然ではないでしょうか?
つまり、ブラック企業に就職したくないからこそ、働く先を選びたいのだ、と藤田さんは言います。
読んだ感想
この本を読んだ率直な感想は、「絶望」と「憤り」でした。
生きたくても、社会の構造的にはじき出される人がたくさんいる。そして、それは一部の人だけでなく、誰にでもあり得るということ。にもかかわらず、十分な支援体制や理解がないこと。自己責任論や努力論で片付けようとすること。
それらに対する感想が、「絶望」であり「憤り」でした。これなら、日本で働くよりも海外で働いた方がマシかもしれない、とも思いました。
読んでいて、藤田さんの指摘にはなんどもうなずきました。
ブラック企業に就職したくないから、就職先を選びたいというのは当然でしょう。逆に、ブラック企業に積極的に就職したい人は居るのでしょうか?
もしかしたらいるかも知れませんが、少数で、多くの人はやはり就職したくないと考えているのではないかと思います。
藤田さんは、「若者たちに対する社会一般的な眼差しが、高度経済成長期のまま、まるで変わっていないのではないだろうか?」と疑問を投げかけます。
昨今、変化のスピードが早いから変化に対応できる人間になれ、といった言説をよく聞きます。
であれば、価値観も昔のままではなく、時代に合わせて変わっていくべきではないでしょうか?
終りに
今回は「貧困」というかなり重いテーマを取り上げました。
こういったテーマは好まれませんが、あえて取り上げたのは「貧困」を多くの人に考えて欲しかったからです。
もちろんこの本1冊で、日本の貧困の全貌が明らかになるとは思っていません。扱えたのはごく一部であり、大半は未だ闇のままでしょう。
また、本書の事例も書きたかったのですが、長さの都合上省略しました。
その代わりに東洋経済オンラインの特集を載せておきます。
ぜひ一度読んでみてください。
まだ具体的ではありませんが、僕は大学院で「現代の若者の貧困」をテーマに研究するつもりです。
僕は僕なりのやり方で、「貧困」に関わっていきます。
何かのきっかけで、貧困に多くの人が注目し、理解が広がれば大きな変化に繋がると思います。
今回の記事が、日本の貧困を考えるきっかけになればこの上なく嬉しいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました!