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倍速視聴のすすめ


1.はじめに

最近巷に流行る倍速視聴。これにはコツがいつくかあって、ちょっとしたことを心がけるだけで倍速視聴速度は+0.5~1.0倍程度上げることができる。そういったTipsやジャンル別のおすすめ視聴速度を紹介していく。

2.倍速視聴を極めるための環境

具体的にどうすれば倍速視聴速度をあげられるのか、まずは視聴環境を整えることをお勧めする。

以下、特にことわりがない場合はPCでの視聴を基本として紹介していく。

アドオンを入れる

そもそもYoutubeをはじめ多くの動画サイトはせいぜい2倍速までしか倍速を用意していない。しかし倍速視聴に慣れると2倍速程度では物足りなくなる。
そこで倍速視聴用のアドオンを入れよう。Google Chromeの場合はいくつか再生速度を調整できるアドオンがあり、個人的にお勧めはこれ。

ほとんどの動画サイトで10倍速度まで0.1倍速刻みで設定でき、ショートカットで速度を変えたり、10秒スキップができる。

スマートフォンで視聴する場合は、アプリ内で設定されている倍速視聴速度のバリエーションが少ないことが多い。
2024年8月現在、Androidで確認した限りはYouTube、AbemaTV、Twichでは2倍までしか対応していない。唯一、SpotifyのPodcastは3.5倍まで対応している。SpotifyのPodcastにはYouTubeと被っているコンテンツも多いので、もしスマートフォンしか視聴環境がない人はSpotifyに自分の求めるコンテンツがないかを確認してほしい。

よいヘッドホン

倍速視聴の限界は「字幕を追えるスピードの上限」と「聞き取れるスピードの上限」の低い方で決まる。
たいがいの場合「字幕を追えるスピードの上限」よりも「聞き取れるスピードの上限」となることが多いので、少しでも聞き取りやすくするために良いヘッドホンを準備しよう。
PCのスピーカーや安いイヤホンでは音がこもって聞こえるために再生速度が稼げない。
外音を遮断できると周りの音で聞き取れないこともなくなるのでノイズキャンセリングがあったほうがよりよい。私は家ではBoseののヘッドホンを使っている(購入当時で3-4万円程度)。

外ではSonyのノイズキャンセリングイヤホンを使用している(実売価格2-2.5万円程度)。

正直イヤホンやヘッドホンは自己満足の世界なので一定以上の金額の金額を費やせば機能が大きく変わることはない。家電量販店でノイズキャンセリング機能を持つものをいろいろ試して、予算内で好みのものを買えばよい。

大きな画面で見る/画質をあげる

理解することが目的であれば、すべての内容を聞きとる必要はない。
多少聞き取れなくても字幕や映像から内容が十分に推定できれば問題ないわけで、そのためにもしっかりと映像も見ることが大事だ。
また再生速度を上げると当然だが映像の速度も上がる。画面の中で何が起こっているのか理解したり、サブリミナル効果くらい瞬間的にしか現れない字幕や補足の説明の文章を読み取れるためにも、ちゃんと大きな画面で高画質で見よう。

通信環境を整える

2.5倍速を超えてくると読み込み時間が追い付かないこともある。通信環境はちゃんと整えよう。

たくさん本を読む

字幕を追えるスピードは文字を読むスピードに比例する、というのが私の経験上の感覚だ。たくさん本を読んで文字を追えるスピードをあげよう。
動画コンテンツを映像主体とは考えずに、字幕と音声のコンテンツの理解を助けるうえで映像があるととらえて、動画コンテンツは挿絵の動くライトノベルの一種みたいなものだと考えてみよう。

訓練をする

いきなり4倍速で視聴すること難しい。何事も練習が大事だ。徐々にスピードを上げていき、倍速視聴に慣れる訓練をしよう。

3.ジャンル別おすすめ視聴速度

ジャンル別に視聴推奨速度を提示するので、試しに推奨速度で視聴してみてほしい。意外と聞き取れるし、理解できることに驚くはずだ。

① 等倍速

倍速を使わない方が好ましい動画もある。

音楽・環境音
流石に音楽は等倍視聴のほうがよい。
作業用の環境音(焚火や水の音など)も倍速で視聴する意味がないので等倍でよい。

英語のリスニング
等倍で聞いても聞き取れないのに倍速する意味はほとんどない。
まれに聞き取ることを目的とせず字幕だけでざっと理解すればよいときは1.5倍速程度でもいけるケースもあるが、ほとんどの場合、結局もう一度等倍で聞く羽目になることが多い。

② 1.2~1.5倍速

大学の授業動画・学会の講演
次の2点で1.2~1.5倍視聴が限界であることが多い。
1) 内容が難解で理解する速度が追い付かない
2) 録音環境が悪かったり、講演者の発音等が芸能人やYoutuberほどハキハキとしていないので倍速で聞き取れない

特に2)の要因が大きい。やはり動画コンテンツを作ることを生業にしているYouTuberはすごい。偉い先生の講演はお世辞にもYoutubeへの投稿を前提とした録音環境でないことのほうが多いし、そもそも話がYouTuberほど上手ではないので聞き取るのに非常に苦労する。したがって倍速視聴の速度を稼げない。大学の先生はもっとヨビノリを見習ってほしい。

これは個人的に最も優れていると思う講演。ここまでわかりやすく、かつ知的好奇心をくすぐる講演はそうそうない。語りも決して悪いわけではないが、聞き取りやすさという点においては専業の方には及ばない。

③ 1.5倍速

映画、ドラマ、アニメ
個人的にあまりこういったコンテンツを見ないが、画面の動きや映像を中心としたコンテンツを真面目に視聴するときは1.5倍程度が適切だろうと考える。
ただ本当にストーリーだけ知りたいのであれば最大3倍速でも分かる。

RTA
そもそもが速度が速いのであまり倍速視聴に耐えられない。

④ 2~2.5倍速

ゲーム実況の後追い
ゲーム実況も画面の動きが大きいゲームは比較的倍速を抑えて視聴する方が良い。
画面の動きが少ないカードゲームや人狼系のようなボードゲームであれば2.5倍くらいでもいける。
一方で格闘ゲームやFPSのような反射神経が重要であったり、画面の動きが派手なゲームはさすがに2倍速を超えて視聴することは難しい。

Mリーグ(麻雀)の放送。解説や画面が充実しているのでルールや戦術をある程度理解できていれば2倍程度で視聴できる。

録画したスポーツ
リアルタイム視聴でみるほうが楽しいことは否定できないが、深夜帯にやっていてどうしても見られなかった海外スポーツは倍速視聴の対象になる。採点競技以外のほとんどのスポーツは問題ない。
私はモータースポーツ(F1)をよく見るが深夜の中継はさすがに見れないので、朝起きて2~3倍視聴している。それでも十分に楽しめる。

専門性の高い動画
専門性が高くなると単に文字を追うだけでなく、内容を理解しながら視聴しないといけないため若干視聴スピードは落ちる。
腰を落ち着けて理解するなら2倍程度。すでに知っている内容を式を追わずに流し見して概念を理解する程度なら2.5倍程度。

映像のないラジオ系のコンテンツ
Podcastなどでは映像のないコンテンツも多い。字幕などの視覚情報がなく完全に音声だけで内容を理解するととなると2.5倍速くらいが限界。
私は掃除やランニングしながらPodcastを聞くことが多いが、作業をしているときはさらに速度を落として2倍速で視聴することもある。

⑤ 2.5倍速~3倍速

映像のあるラジオ系のコンテンツ
ラジオ、Podcastのような音声がメインだが映像や字幕で補足がちゃんとはいるコンテンツはこの程度まで速度を上げても理解できる。
特にそこまで専門性が高くなく、一つのことをテーマに30分以上の長尺で語る内容はこの程度になる。

⑥ 4倍速~

大衆向けの説明コンテンツ・ワンテーマの動画
おおよそのストーリーを理解しているうえでの復習やちょっとしたディテールを知りたい場合はこの程度でも十分理解できる。
ワンテーマの5-10分の動画の場合、良い編集がなされていれば動画で言いたい内容はひとことで要約できることがほとんど。後はテーマの枝葉でしかないのでそのひとことをキャッチできる速度であれば何倍速でもよい。

基本的にWikipedia程度の内容しかない動画(ゆっくり動画など)であれば、自分の理解が間違っていないかをチェックする姿勢で見ることになるので、4倍くらいでざっと見で問題ない。

地上波バラエティ
地上波のバラエティ番組はYoutube以上に早く見ることができ、画面の動きが大きいにもかかわらず4倍くらいで見れる。これは地上波のバラエティの内容がYoutubeより薄っぺらいからという皮肉ではない。音声や字幕、画面構成の品質が安定しており、万人に分かるように作られているから、Youtube よりも速度を早くしても理解できるというだけだ。
流石にテレビ局のプロの製作者や芸能人で構成された方が品質は高い。

4.なぜ倍速視聴したほうが良いのか

一応、倍速視聴の適正速度に関する私の理論を伝えておく。

倍速視聴が可能なのは人間の発音のスピードに対して、理解のスピードのほうが圧倒的にはやいからだ。
現実世界の発声のスピードは思考を整理する時間や口を動かす筋肉の動きのため速度は制限される。しかし聞き取る側が理解できる速度の上限はもっと上だ。
例えば、アナウンサーが話す速度の標準が1分あたり300字程度といわれている(参考)。サッカーの実況の場合で450字/分程度(参考文献)。
おそらく、これ以上の速度でしゃべってしまうと呼吸が乱れたり、人に伝わるような抑揚でしゃべれなくなったりと生物学的な限界に達するほか、そもそもそれ以上の速度で意味のある文章を作りながらしゃべることが難しいのだろう。

一方で人が文字を追うスピードは大学生の平均で分速650字程度、最大1200字になるという論文もある(参考文献)。人間の脳はそのくらいの速度で内容を理解できる能力を有している。つまり、人間は標準的にも話す速度の2倍、うまくいけば4倍程度の理解速度の潜在能力はあるはずなので、Youtubeの視聴速度を2〜4倍程度上げても理解能力が落ちることはないはずだ。

ということで、芸術作品を鑑賞するとか、好きな俳優の横顔を見てうっとりする、ということが目的ではなく、単に情報を得ることも目的とした動画視聴であれば、視聴速度はもっとあげられる。

5.おわりに

念のため断っておくが、倍速視聴できるということはコンテンツが素晴らしいということにほかならない。ここで紹介したコンテンツは個人的に非常に優れていると思うものを紹介している。

すぐれたコンテンツほど以下のポイントをしっかりと押さえている。

話者の発音がしっかりとしている

倍速視聴するための最も大きなポイント。活舌がよいだけでなく、「あー」「えー」といった淀みがなく、かつ感情豊かにしゃべっている。

良い録音機材を使っている

2番目に大きなポイント。音声にノイズが入っていたり、声がこもって聞こえたりすると途端に聴き取れなくなるし、視聴意欲もなくなる。

適切に字幕が入っている

地上波のTVのように、重要なフレーズなどに字幕が入っていると多少聞き取れなくても字幕で補完できるので視聴速度が+0.5~1.0倍上がる。
最近のYoutubeは字幕の自動生成機能もあるので必須ではないが、独自に字幕が編集されている方が見やすい。

編集がしっかりしている

言葉だけで伝わりづらい内容が映像で説明される、「あー」「えー」といった淀みが切り取られている、論点が整理されていると本当に視聴が継続しやすい。

視聴者を誘導できている

話題転換のタイミングでアイキャッチが入る、起承転結や話のメリハリが効いている、サムネイルから視聴者が期待した内容をしゃべっている、ということができていないと論点を掴みづらく迷子になってしまう。

以上のことができていないと、倍速視聴できる限界がすぐに下がる。
こういったことは粗悪な動画制作者では徹底されてないことが多く、そもそもどんなに素晴らしい内容でも見るに堪えない※。
細部にまでこだわってちゃんとできている動画編集者のおかげで、視聴速度を上げることができる。丁寧に作られた世間の動画および、動画制作者の方々には本当に感謝しかない。

※ このような粗悪な動画は主にCMに多い。どんなにすぐれたコンテンツでも不快な音質、不愉快な内容のCMが入った途端に視聴をやめることも多い。こういった不愉快なCMを見るくらいなら有料プランを検討するべきだ。
その結果、皮肉なことにCMの質が耐えられないほど低いYouTubeほど有料プランのインセンティブが大きくなる。


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