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細部まで味わいたい~西池袋・フランク・ロイド・ライト設計の自由学園 明日館に行ってきた!
蒸し暑くもなく、寒すぎもしない先日、ひさしぶりに西池袋にある自由学園明日館と講堂を見学してきたので、今回はそのときのことを書きます。
自由学園明日館は、羽仁もと子、吉一夫妻が創立した自由学園の校舎として、帝国ホテルで有名なフランク・ロイド・ライトの設計によって1921年に建設されました。羽仁夫妻にライトを推薦したのは、ライトの弟子だった遠藤新でした。帝国ホテルの仕事で忙しかったライトが、自由学園の仕事を快諾したのは、ライトがこの学園の教育理念に深く共感したのと、ライトの叔母二人がやはり学校の運営に熱心だったからだといいます。自由学園の名前の由来は、聖書の「真理は汝らを自由にする」(ヨハネによる福音書8章32節)。大正デモクラシー期における自由主義教育の象徴ともいえる学園で、ライトが設計したこの明日館とともに、明日館の向かいにある遠藤新が設計した講堂が重要文化財に指定されています。見学には500円の入場料がかかりますが、喫茶付見学を選ぶと、800円になります。個人的には、ゆっくり館内を味わえる後者がおすすめです。まだ体験したことはないですが、夜間の見学はお酒付きで1200円だそうです。ライトアップされた建物をみるのも面白いかもしれませんね。では、早速、建物を見学していきましょう。(今回は写真が多めです。)
まず、外観をざっと見てみます。↓
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横に長いので広角寄りのレンズでも全部を写すことはできなかったのですが、クリーム色の壁と深緑の屋根や窓枠、下部の大谷石の組み合わせが素敵です。建物の向かって右側から入って、一つ目の部屋はこちら。↓
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いきなり、かわいすぎますね。左を向いて窓をみるとこんな感じ。↓
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芝生や木々の緑が見えて いいですね。つぎは、中心のホールに向かいたいところですが、その手前に、正面に出られる玄関があります。↓
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天井も扉もデザインが凝ってますね。では、いよいよ中央のホールに入ります。↓
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窓の外の緑が目に入ります。もう一歩前に出てみましょう。↓
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大きい窓です。床をみると、幾何学的な窓枠の影ができていました。↓
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ちなみに、このイスも、建物に合わせて、ライトか遠藤新がデザインしたらしいです。
ホールを横から見るとこんな風になっています。↓
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正面の壁画は、創立10周年を記念して、生徒たちの手によって描かれたものだそうで、1997年の修復工事で発見されたとのこと。旧約聖書の出エジプト記がモチーフになっているようです。
ホールの上にあがると、ミニミュージアムになっていて、ライトや明日館にまつわる資料が展示してありました。下は、ガラスで一部反射してしまいましたが、明日館全景の模型です。↓
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きれいに左右対称の建物ですね。内部を再現した模型もあったのですが、そちらは上手く撮れなかったので、upは自粛します。模型の他にも、ライト関係の本も結構あって、↓
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こちらは、喫茶室などで読むことができるようです。では、いよいよ、明日館の中心となっている食堂です。ミニミュージアムからのぞいた食堂の様子は、こんな感じ。↓
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オリジナルの照明が素敵ですね。以前は、一階のホールが喫茶室になっていたのですが、いまは二階のこの食堂が喫茶室になっていました。左側にもう少し注目してみましょう。↓
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左奥にも空間が見えますね。もう少し奥を覗いてみましょう。↓
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この奥の部分は、どうやら、手狭になったために1923~24年にかけて、遠藤新が増築した部分の一部のようですが、ぱっと見、ライトが設計した食堂中心部と違和感ないなぁと思いました。写真右側のカウンターに座って休んだのですが、喫茶付きのチケットには、コーヒーだけでなくパウンドケーキまで付いてきて、満ち足りた時間を過ごすことができました。ハレとケが同居した窓からの風景も楽しかったです。食堂全体の写真は、他の見学者の方々が写ったものしかないのでupしませんが、是非、現地でその全体像をお楽しみください。
お茶をしたら、食堂から下に降りて、入ったのと反対側から外に出て、パチリ。↓
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正面にサンシャイン、右側には西武ホールディングスの新しいビルが見えました。明日館の辺りだけ、別世界のようです。
せっかくなので、明日館の他の部分のディテール写真をupしてみます。↓
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奥に見える窓枠など、いちいちかわいいですし、足元の大谷石もいいです。
次は照明類。↓
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廊下の窓も凝っています。↓
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こうして見てくると、窓枠などの意匠は幾何学的、内部はクリーム色とこげ茶、外部はクリーム色と濃い緑で統一され、内部も外部も足元付近に大谷石が使われていて、全体的につながりと統一感のある空間になっていますね。
つぎは、明日館の向かいにある遠藤新による講堂を見てみましょう。講堂の全体像。↓
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時間的に逆光になってしまって、微妙な角度からの写真になってしまいましたが、早速、中に入ってみましょう。まずは二階に上がって、パチリ。↓
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一階の座席は、真ん中と左右の三つの部分で、できているようです。舞台上から天井に伸びるこげ茶のラインが印象的。ここから、後ろを振り返って、二階座席を見てみます。↓
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やはり窓が印象的ですね。天井から伸びる線が二階の天井まで伸びていました。下に降りて、脇の席から、横を眺めてみます。↓
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幾何学的な窓枠に外の緑が合わさって、ステンドグラスの柄のよう!
つぎは舞台に上って、舞台から客席を望みます。↓
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一番奥の窓にも やはり外の緑が映えて素敵ですね。
壁や天井のクリーム色とイスやラインのこげ茶の内部に、外のグリーンが映えるといった色彩感覚や、幾何学的な窓枠が、明日館と似ていますね。
以上、フランク・ロイド・ライトと遠藤新による自由学園明日館&講堂でした。こんなに素敵な明日館も早々に手狭になってしまって、校舎として使われたのは、わずか10数年だったようです。(自由学園は、東京都東久留米市に移転。)その後、この池袋一帯は空襲にあったのですが、幸い、この自由学園明日館や講堂の周辺は焼けることなく残り、1997年には重要文化財に指定され、今に至ったようです。現在は、各施設の貸し出しもしていて、この日も、明日館の一部で、公開講座が開催されていました。
この周辺は、かつて鈴木三重吉の赤い鳥運動の舞台となっており、明日館の近くには、10数年前まで坪田譲治のびわの実文庫もありました。その少し先には、柳原白蓮の旧宅が残っていて、子孫の方がお住いのようです。中を見ることはできませんが、近くには個性的なブックギャラリーなどもあるので、自由学園を見学した後、この辺りを散策するのも楽しいかもしれません。西武池袋線の線路を渡って、鈴木三重吉の旧宅跡の看板を見て、その近くの入場無料の目白庭園(日本庭園)でのんびりするのも、いいかもしれません。
(参考資料
①自由学園明日館HP
②『帝国ホテル ライト館の幻影 孤高の建築家 遠藤 新の生涯』遠藤陶著、廣済堂、1997年
③『こどもの再発見 豊島の児童文化運動と新学校』豊島区立郷土資料館、1991年)