さらっと読める300字小説#5
「恥ずかしいのは……」
本当なら言ってしまいたい。しかし、それはできない。
なぜならば、そんなことをしたら目立ってしまうからだ。それは恥ずかしい。全力で避けたい状況だ。
そんなことを考えている間にも、時間は刻々とすぎていく。私はどうすればいいんだろう。
黙っていたら、先生は気付かないまま外に出てしまうに違いない。それはさすがに可哀想な気がする。
周囲がざわざわと騒ぎ始めた。どうやらみんなも気付いたらしい。でも、誰も口に出しては言おうとしない。誰かが言ってくれればいいのに・・・・・・
さんざん迷った末に、私は決めた。手を挙げて立ち上がる。
先生も、みんなもこっちを見た。恥ずかしくてたまらない。でも、勇気を出して言うんだ。
「先生!チャックが開いてます!」
終