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発酵の授業~乳酸菌①~
今回の授業は乳酸菌について深掘り。
なんとなく身体によさそうだからとか、パンの味が違う感じだから
うちのパンは乳酸菌発酵で作ってます!
というのではなく、
理論的に乳酸菌を扱う利点を説明できる。
そのための基礎知識。
パンの発酵とは
主役は乳酸菌。
酵母はオマケ。
1gのマツイ(元種)のなかには、6億個の乳酸菌+1千万個の酵母がいるのだそう。ドリアン式(伝統的なヨーロッパの製法)では数的にも乳酸菌が圧倒的に多い種を扱っているといえる。
ここから少し微生物学的なはなし。
麹(コウジカビ)・・・菌類。Aspergillus属。
酵母(イーストなど)・・・真菌類。
乳酸菌・・・細菌類。乳酸を出す細菌の総称。ビフィズス菌も大腸菌もこの括りに入る。
※菌のサイズは麹>酵母>乳酸菌
パンと乳酸菌
乳酸菌がもつプロテアーゼ(タンパク分解酵素)によりグルテン・タンパク質を分解する。乳酸菌本体がというより、その酵素による作用。
このプロテアーゼ自身もタンパク質であるため、60℃ぐらいの高温になると失活する(死ぬ、作用を失う)。
乳酸菌がプロテアーゼでタンパク質(グルテン)を分解してより小さい断片のペプチドにする。さらに細かくしてアミノ酸にもしていく。
アミノ酸ということは旨味成分でもあるため、作ったパンは他の食材と引き立て合う効果がある。
また、乳酸菌はその名のとおり「乳酸」を出す。
それによりpHを下げ、他の雑菌が生存しにくい環境を作り出す。
なぜか酵母はこの酸性環境でも生きられる存在で、乳酸菌といることで下記のようなメリットを享受している。
小麦中に含まれるデンプンが水と混ざると加水分解され、麦芽糖が作られる。
乳酸菌がこの糖を食べてより小さな果糖・ブドウ糖に変換することで、酵母が食べられるサイズにしている。酵母にとって乳酸菌は食糧を提供してくれるし、他の菌類を排除してくれるし、結構戦略的かも。
ただ好む温度帯には違いがあるよう。
乳酸菌は30℃付近が好き。
酵母は10-12℃が好き。
それもあって一番種であるマツイ(乳酸菌メイン)を仕込むときは30℃前後を目指し、水分は少な目にして乳酸菌が喜ぶ環境に。
日持ちがするのもいいところ。
一方そこからジャガ(マツイ→生地の間の2番種)では酵母の力も取り入れたいので、水分も多くなるし温度を低くして乳酸菌が働きすぎないように調整する。ただ日持ちはしない。
そうして窯入れして焼いてる間のこと。
菌たちは焼かれたらさすがに死ぬ(50℃ぐらい)が、酵素は60℃ぐらいで失活する。最後まで生地中で仕事をするのは酵素ともいえる。
学びの感想
うーん、科学で説明がつくとやっぱり納得しやすいと実感。
東洋医学についてはやや
こういう歴史と事実があるから、こうなのだ!とする面がある。
数千年の歴史と経験はとてつもないエビデンスだけれど、
現代人の腑に落ちやすいのはやはり科学なのかなという気もしている。
そういう情報環境で育ってきたのだから。
現代人に説明し、納得したうえで受け入れてもらえるパンを商売にするには
このへんの説得力もほしいところ。
次回も乳酸菌ワールドがつづく。