みなさん、こんにちは。
次回『令和源氏物語 宇治の恋華 第二百七話 小野(一)』は、8月7日(水)に掲載させていただきます。
本日は解説 第十三章/浮舟<一>を掲載させていただきます。
浮舟
宮の姫と呼ばれていた故・八の宮の今一人の姫君は、中君の二条院に身を寄せていたものの、匂宮にみつかってしまったことで窮地に陥ります。
母である常陸の守の北の方は匂宮の非道な振る舞いに憤慨し、間近に迫る薫る大将との結婚を台無しにされては、と急ぎ姫を引き取ります。
三条のまだ普請途中の邸に姫を移しましたが、当の姫君は不安でなりません。どこにも落ち着くことがなく、またこのような邸に流されてきてしまった、と心持も暗くなるのです。
浮舟という名はまさに彼女そのものである、と私は思います。
運命という河に翻弄されて、寄る辺もなく、頼りない。
そこで薫が「浮舟」と名をつけるように創作しました。
薫が浮舟を伴い宇治に向かっている車の中での会話です。
山道に激しく揺れる車内で薫は浮舟を膝に乗せて庇うようにしてくれましたが、殿方にここまで近く寄ったことの無い姫は狼狽しながらも身の上を語り始めるのです。
薫と浮舟はともに己の存在を疑問視しながら生きてきたという共通点があります。そこを理解し合い、許しあいながら愛を育んでもらいたい、という私の願望が現れた部分でした。
明日も解説/浮舟<二>を掲載させていただきます。