翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その23
年が明けてしまいました。2022年2月10日発行の翻訳出版より1年が過ぎ去ろうとしています。2023年3月に東京で著者サイン会を計画中です。これを目標にブログを綴っていきたいと思います(よろしくおつきあいのほどを...)。
バナー
【天安門広場】
第四章を再訪する。1999年に法輪功が禁じられ、多くの修煉者が天安門広場に抗議に行った。臓器収奪ー>犠牲者ー>法輪功というつながりから、天安門広場でバナーを広げて抗議している修煉者の写真をよく目にした。数枚しかないので、いろいろなところで使われている。
上記は動画のサムネール画像用に作られた合成写真だ。「中国で権力に立ち向かう人々を国外の人々も支援しているよ」というメッセージがある。実際にこのバナーを天安門で広げるのは数秒に過ぎず、観光客もあまり気がつかない状況だと思う。
「あ、またこの写真か」と思いながらこれまで見ていたのだが、下記の部分を読んで、初めてこの写真の重みが伝わってきた。
考えたこともなかった…。このカメラに収まった画像が、押収されることなく国外に出たわけだ。カメラマンはおそらく逮捕されなかったから、この画像を我々が見ることができるのと思いたい。それでは横断幕を広げた男性はどうなってしまったのか?
2001年までに少なくとも15万人の法輪功修煉者が天安門広場で抗議したという。誠実に自己表現する空間として、王朝時代以来中国人が尊ぶ場所だったそうだ(本書 p.255)。
オーストラリア人が中国の人々を応援するために天安門でバナーを広げた実話のドキュメンタリー映画(18分)がある。観光客を装ったオーストラリア人がいきなりバッとバナーを広げる。中国人の警官がびっくりして、欧米人をどう扱っていいのかとまどった様子など、笑っちゃいながらも確固たる信念で天安門に赴いた人たちの証言が深かった。
【天安門広場から外へ】
『臓器収奪ー消える人々』の第五章では趙明(ジャオミン)が「天安門広場で自己を犠牲にした修煉者の数は多すぎる」と、自らショッピングセンターと高架道路でバナーをたなびかせる場面がある(p.181-182)。このアイデアは、のちにヘリウム風船にバナーをつけ、風船が割れるとチラシが散らばるようにするなど、さまざまな形で展開していったのだろう。本書のp.256(電波ジャック)でも少し言及されている。
宣伝用にパタパタと風になびくバナーだが、自由なメッセージが閉ざされた政権下では、個人ができる唯一のこととして大きな意味を持つ。
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