大嫌いから大好きへ
去年の今頃、私はヒール靴が嫌いだった。
そして今、私はヒール靴が大好きである。
この違いは、自分の足の構造をきちんと知ったかどうかである。私にはシューフィッターが教えてくれた。
不思議なもので、私を含め多くの人は生まれてつかまり立ちするようになってから、もしくはそのもっと前から足を靴に収めてきたのに、特にきっかけがなければ一生、足・靴の構造や選び方についてきちんと学ぶことなく靴を選び履き続けるのである。
特に女性は「おしゃれは我慢」などというくだらない文言のおかげで、ヒールは可愛くファッショナブルな分、足に負担をかけるのは致し方ないというあきらめがある。また、そうでなくてもオフィシャルな場ではほぼ必ずヒールを履くことを求められている。本当に足にあう靴の選び方を知らないままであっても。
これは本当に残念で、足の、ひいては全身の健康を考えると早急に改善しなければならない事案だ。
そもそも、なぜ女性はヒールを履くようになったのだろうか。
歴史を調べるとヒール靴は元々男性の履いていた靴であったらしい。
一説によると、中世の貴族が庶民との差別化を図る上で踵の高い靴が作られ、それがどんどんエスカレートして高いヒールが好まれるようになったとか。
その後、ヒールのつま先がドレスの裾からちょこんと出ているのが愛らしいと女性たちの流行になり、広まっていったとされる。ちなみに女性に広まるにつれ、男性たちはヒール靴を女々しいとして履かなくなったらしい。元々メンズものだったのに面白い。
現代に戻って、今の日本ではヒールを履いたことのない(もしかすると触ったこともない)おじ様たちがヒールをマナーとして規定している。本当に笑える構図だ。
元々男性が履いていたのだし、原点回帰して男性も着用すればいいのではないか。
そうすれば就活の際の女子はヒール着用ルールなども改善されていくだろう。
ヒールが高いほど偉くて、高貴である象徴だったそうですよ、頑張ってくださいおじ様たち。大手社長は20㎝ヒールとかになるのかな(笑)なんて。
実践としては、現実に忠実に自分で選んだ足に合わないヒール靴をストッキング一枚の状態で一日中履く体験を「ヒールは女の身だしなみ」と言い張るすべての人に体験してもらうのが良いだろう。そうしてその足元の過酷さを知り「ヒールはマナー」などという阿呆の極みのような文化を一緒に抹殺する仲間になってもらえれば万々歳である。そういう機会を作れるものならぜひとも大々的に作りたい。
その上でヒール靴含めた様々な靴の正しい測定法と選び方を広めて、本当に足元が自由な世の中を作りたい。
理想は学校の保健体育か家庭科で習うことだと私は思う。外反母趾、内反拇指、開帳足、浮指に悩む前に。
靴は足の長さ、幅、高さ、踵の大きさ、足指のバランスなど、沢山のポイントを押さえて選ぶものである。
選び方を学んでいないままで、なんとなく買うものではない。特に、足の本来のバランスを美しさの為に故意に崩すヒールは。
全ての人は、自分の足と選ぶ靴両方の構造と特徴を知るべきである。
最近の教育現場は良いことを聞かない。
実学重視というなら、こんな、もっとすぐに生きるために役立つことを教えたらどうだろう。
靴は男女差異無く学びが生かせる。きっと次の日に靴屋に行った時から自主的な学びが行われるだろう。
受験のために机に張り付けるより、よっぽど生産的で、文化的な暮らしが出来るようになるとおもわないか。
もっと地に足をつけた学びを、育てる大人の足からしてほしいと思う。
もっと靴選びを楽しむ人が増えることを願ってやまない。さあ、シューフィッターに会いに行こう。