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「再びベトナム戦争証跡博物館に行くことはできない」青年海外協力隊になる前、2か月間1人旅した話⑮

↓前回(ベトナムでは首都ホーチミン・シティのことを今でもサイゴンと呼ぶらしい)

今回、サイゴンで泊まったユースホステルも例に漏れず宿泊代に朝食が含まれていた(ベトナムのユースホステルは朝食込みのものが多い)。

でもこのユースホステルは中心街の路地裏にある雑居ビルを改造してできためちゃくちゃ狭いユースホステルで、見たところ朝ご飯を食べれる場所も、机も、椅子もない。

「どこで朝ご飯を食べれるの?」と従業員に聞いたら、「屋上に行って待ってて。朝ご飯を持っていくから」と言われた。


狭い階段とハシゴを登り、屋上に着いた。簡単なテーブルとイスが並べられていた。

30代くらいの男性が1人、座って朝ご飯を食べていた。


「Good morning」

とりあえず挨拶をした。


「Good morning」

彼も返事をしてくれた。


朝ご飯として運ばれてきたトーストと目玉焼きとサラダを彼と話しながら食べた。

彼、ピース(彼のあだ名)は台湾人で、今はベトナムのハノイで学校に勤めていると言っていた。

昨日と今日はサイゴンに用事があって、このユースホステルに泊まっているそうだ。


「君は1人でサイゴンを旅行してるのか。今日は何をするの?」

「今日はサイゴン中央郵便局とか、博物館とか、ベンタイン市場とかに行くつもり」

「そうか、いいね。今日はよく晴れていてとても暑いから、水をたくさん持っていくんだよ」


朝ご飯を食べ終わったあと、ユースホステルを出た。

今日はじめっとしていて蒸し暑い。

ピースが言っていた通り、コンビニで水を買っていった。



まだベトナムがフランス領だった1891年に完成し、今もまだ現役で使われているサイゴン中央郵便局や、南ベトナム時代に大統領官邸として使われていた統一会堂などを見て回った。

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・・・次はどこへ行こうか。

グーグルマップで近くの観光地や博物館を検索した。

ベトナム戦争証跡博物館・・・星マークが4.5、レビュー数が25,000件近くもある。


近いし、ここへ行こう。

元々博物館が好きだからというのもあるけど、

「みんながオススメしているから、『ホーチミンに来たら絶対行くべきだ』とかレビューに書いてあるから」、

この博物館に行った理由は、そんな軽い気持ちだったと思う。


でも、実際にベトナム戦争証跡博物館に行ってみて、とても衝撃を受けた。

たぶん、この博物館に行って「ベトナム戦争で何が起こったのか」を知れただけで、この旅が意味あるものになったと思う。


所狭しと並べられた銃器、壁一面に貼られた、戦争から逃げ惑う人々の写真やアメリカ軍がまいた枯葉剤の影響で奇形で生まれた人々の写真。

特に、日本人の戦場カメラマン沢田教一さんによって撮られた写真には日本語で説明書きがあるからか、写真と言葉が同時に自分に訴えかけてくる。


写真を見てると泣きそうになるし、「もう見たくない」と思って、何度も下を向いてしまった。吐き気がした。


たぶん、私は再びこの博物館に行くことはできないと思う。

「負の歴史に向き合うことは大切だ」と言うし、私もそうだと思う。でも、向き合うことすらためらわれる現実が確かにここにあって、さらに言えば私が知らないだけで、世界中にはもっとたくさんある。


この博物館にはベトナム人の学生が団体で見学に来ていたり、世界中の旅行者が観光に訪れたりしていた。

1人1人が展示された写真をじっと見つめていた。

この博物館で、この光景がずっと続いてほしいと思う。



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