ママのこと4
こんにちは ゆかっぱです。
いつも読んでいただいて本当にありがとうございます。
銀座で働く事になったママですが
クリアしなければならない問題が3つ。
働くための衣装と私の預け先。そして私の存在。
ここで祖母の登場です。
祖母の着物は大変古いものではありましたが
贅沢なものばかりでしたので
いくつか見繕ってもらい
それをママに届けるという名目で上京してもらいました。
「無理ができない身体です。何があっても保証はできませんよ」
そんなドクターストップも祖母を引き止めることはできません。
「わかっています。それでも娘を助けたいんです」
その気持ちに嘘はなかったと思います。
でも祖母にとっては渡りに船。
そりの合わない長男の嫁との生活から離れ
娘と初孫と憧れの東京生活。
何があっても彼女を止める事はできなかったことでしょう。
問題点の2つはクリア。
最大の問題は「子持ち」だということ。
ママはまだ若かったので、私の存在は隠すように勧められたそうです。
でも、あえてママはそれを選ばず、公言する事にしました。
ママは大人になってから、自分の出生の秘密を知らされました。
それがどんなに残酷な事か、身を持って知っています。
だから私には何も隠さずに話していこうと決めていたそうです。
小学生の頃、ママに聞いたことがあります。
「銀座のお姉さん達はみんな子どもがいる事を隠してたよね?
ママほど若かったら 独身でも十分通用するのに
どうして私の存在を隠さなかったの?」
ママはこう答えました。
「あなたは私の自慢の宝物なの。
みんなに見てもらいたい、誇らしい宝物を
どうして隠す必要があるの?」
私の根拠の無い自己肯定感の高さは
こんなママの言葉のシャワーをたくさん浴びてきたからなのだと思います。
「子持ち」の肩書きは
予想に反してママの人気の追い風になりました。
最初はママの美貌目当てで近づいてくる男性達も
私の存在を知ることで
「俺が守ってあげなくては」という
男性特有の本能をくすぐりまくってしまったようです。
ママは、以前女性ばかりの職場でいじめにあった事があり
その時に学んだ事がありました。
「出る杭は打たれる」
同じカテゴリーで多少目立つ存在は
妬み嫉みの対象になってしまう事があります。
でも。全く違うジャンルであれば話は別。
「出る杭は打たれちゃうけど 隣の引っ込んだ杭は引っ張ってあげちゃう」
「女」を味方につける術。
見栄を張らない。
隠せば必ずむき出しにされ、さらに塩まで塗り込められる。
女は弱き者には優しい。
お腹を出して降伏状態の相手を痛めつけようと思う方がちょっとサイコパス。
先輩の皆さんはとても優しく接してくださったそうです。
サイコパスがいなかったわけではなかったようですが。
着物はたくさんの小物が必要で。
特に足袋。
常に真っ白な足袋を身につけるのが身だしなみ。
通勤ラッシュで汚れた足袋を履き替えた直後に
「あら、ごめんなさいね」と思いっきり踏んづけてくる先輩がいたそうです。
「足袋の替えも持ってないの?そんな汚れた足袋でお客様の前に出るのは失礼よ」
翌日からその先輩が出勤するまで裸足のママ。
流石にざわつきます。
正直に理由を話すと、いつの間にか
その先輩は別のお店に移って行ったそうです。
「この事は幾つになっても忘れられないわ」
そう話していたママ。
亡くなった後遺品整理をしていたら
大量の未使用の足袋が出てきました。
何十年も経て ママをいじめた どなたかに
送りつけて差し上げたかったです。
この先も前途多難なママですが
いつでも明るくて、楽しそうなママの姿しか思い出せません。
皆さんにもそんなママに出会っていただきたいので
これからもお付き合い頂けたら嬉しいです。