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ママのこと 3

こんにちは  ゆかっぱです。

 ママは故郷を飛び出し、上京しました。
もちろん頼る人も誰もいなかったそうです。
行き当たりばったりで、以前勤めていた時に住んでいた
社員寮がある街で住込みの仲居さんの仕事を見つけました。

心労が重なり痩せ細ったママと
ぷくぷくと大きくなっていく私。
とうとう母乳も出なくなってしまったそうです。

銭湯の帰り、畑に捨てられている出荷できないサツマイモを
「これは泥棒ではないですよ〜落ちているのを拾っているだけですよ〜」と
自分に言い聞かせながら拾い集め、私の離乳食にしていたそうです。
そんな惨めな思いをしながらも必死に働くママの元に
祖母からの「いつになったら私を東京に呼び寄せてくれるんだい?
あんな嫁と暮らしていくなんて、もううんざりだよ!」という
まあまあ自分勝手な催促の手紙が3日と開けず届く日々。

流石に途方に暮れたママは
私を抱きながら橋の上で
「このままふたりで飛び込んだら楽になれるのかな」
そんな事を考えながらぼんやり水面を眺めていました。

突然、ママの腕から私の重みが無くなりました。
「どうしよう!落としちゃった!?」驚いて川を覗き込むママの背中に
鋭い声が響きました。
「死ぬならあんたひとりでやりな!
この子は私が育てていくからね。何も心配しなくていいよ。
さあ、心置きなく飛び降りな!」
振り返ると 粋に着物を着こなした初老の女性が
私をあやしながら立っていた。
 もともと芸者さんだったというこの女性は
小唄や三味線を教えながら独り身で暮らしていた方でした。
「どんな理由があるかは知らないが、自分が産んだからといって
あんたがこの子の命を奪う権利なんてないんだよ。」

ママは泣きました。泣きながらその女性に今までの事をお話ししました。
 厳しいながらも優しさが溢れているその声に縋り付いたのです。
 祖父が亡くなった日から心の奥底に押し込んでいた感情が溢れていきました。

全ての事情を聞いたその女性は
ママに銀座のホステスとして働くことを提案しました。
ママのビジュアル、聡明さ、気配り、そして度胸と愛嬌
一瞬で見抜いた事だったと思います。

彼女は芸者時代の友人が経営する店を紹介してくれました。
見ず知らずの若い娘を自分の大切な友人に託そうとしてくれる
この女性の心意気にママは心を打たれたそうです。

また数日前に目にした女性週刊誌の記事を思い出していました。
銀座のホステスをしていた女性が外国の大統領夫人となり
娘を出産したというシンデレラストーリー。

豪華な宮殿で幸せそうに微笑む母娘の写真を見つめながら
ママはため息をつきました。
そのプリンセスと私は同い年。
拾ったサツマイモを美味しそうに食べている私が不憫でたまらなくなったのです。

紹介状を握りしめ、ママは銀座に向かい即採用となりました。

ママの冒険はまだまだ続きます。
写真は同時のママと私です。
ベビーカーではなくショッピングカートに入っています。
それでも楽しそうに笑う私と痩せてはいるけれど 凛とした母の背中。
どうしても皆さんに観ていただきたく
この写真を探すのに手間取って、投稿するのが遅くなってしまいました。
ごめんなさい。
また来週も読んでいただけたら嬉しいです。




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