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ご近所クエスト

 先日、強烈に思い立って『カラオケ喫茶』なる場所へと行ってみた。人生初である。かつおひとりさまである。
 なんでまたそんなところに、といえば、知る人ぞ知る伝説の聖地が、ウチの地元にあるからだ。一度は行ってみたいなあと思いながら、かれこれ十年が経過していた。これまで行かなかった理由は簡単で、常連さんばかりのお店に入っていくのも何となく気まずいし、一人であれば尚更かなあと、要は思い切りが足りなかったのだ。おかげで目標達成までずいぶんかかってしまった。
 もう一つ、単純に『カラオケ行きたいなあ』としばらく前から思っていたのもある。こちらも、まあ。誘う相手もいないからと何となく行かずにいて、結局ソレ自体が十年ぶりくらいになってしまったが。

 久々に歌いに行きたくなっていたのはここ1年くらいのことで、しかしまあムリして行かなくても……とか考えている間に首に痛みが出てきたのもあって、ちょっと意を決してみることにした。単に姿勢が悪いだけならまだしも、第5チャクラに近いのは多少気がかりでもある。あとなんか、大して報われないサラリーマン業に身をやつしてばかりでやりたいことやらないのは勿体ないなあと、変に理由つけて自分から遠ざかるのはやめよう、とふと考えもした。

 そういうわけで人生初の小舞台で一曲披露してきたが、ママさんや常連さんたちは皆いい人ばかりだった。やはり聖地、一見さんをさばくのに慣れている感じがする。時間ができればまた顔を出して、今度はコーヒー以外のものも頼んでみようかと思わせてくれるお店だった。

 やっぱり自分の持てる技術(少なくとも自分ではそう考えているスキル)は、ときどき本気で使ってやらないとフラストレーションのもとになる。良識を持ちつつ、それでいて誰に憚ることもなく、自分を活かしていきたいなあ、などと思ったりした。これまでひどく出不精だったし、まずは近いところからでも。近場で見聞が広がるって、考えてみればお得だよね。

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神月裕
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