蛇口の吐水パイプを取り換える
漏れ出していた。
キッチンの蛇口から。使うたびに、水が。
いやまあ、長いこと人が住んでいなかったとはいえこの家で生活して十数年、築年数だと二十年前後くらい。パイプの先には浄水器用のアタッチメントもつけたままだし、何と言うのか、蛇口と吐水パイプの継ぎ目……取り付け部分のあたりから、わりかし早い段階で少しの水漏れは、あるにはあったのだ。まだ気にするほどでもないかなー、とか思っていただけのことで。
しかしだ。ここ最近になって、ちょっとヒドくなり始めた。そりゃもうしっかり気になる程度には。水栓の開け具合にもよるが、パイプを伝う程度だったのがそこそこの勢いで噴出するように。このまま放置を決め込んだ果てにどこぞの梨の妖精よろしく生水ブシャーとかいう事態になっても困りもの、意を決してパイプを取り外してみることにした。
これまで水回りに手を付けたことはなかったものの、そこはまあ勢い。 見たところ口径の大きいナットひとつで留まっているだけのようだったし、それを外すだけなら問題なかろうと踏んだのだ。基本的にはネジ山相手に人力で回して絞めてある全てのものは人力で回して緩まる。回す方向さえ合っていれば。
というわけで。ウチにあるモンキーレンチを目いっぱい開いて、外したいナットにセットだ! だがしかし!
セット……セット……?
ううん……これは……まず間違いなく……。
無理だナァ、セット。
なんと、モンキーレンチが小さすぎてナットが入らない。ということはつまり、工具からお買い求めなくてはならないということ。いくら人力で緩むといってもそれは適切な工具あっての話。武器がなければ戦えない。
出 費 !!
まあそれはこの際仕方がなく、家庭でとなれば一本用意しておけばたいてい生きてるうちはずっと使えるので、未来投資ということで納得しておく。さっそく近くのホームセンターに出向いて工具売り場をチェック。買ったのは口径の大きいモンキー、ではなく。
この『モーターレンチ』という類のやつ。普通のモンキーに比べて口径が大きく、水道工事に最適、みたいなキャッチコピーがついていて、しかもモンキーレンチよりちょっとお安い。こいつで万事解決よォ、などと思いながら自宅に戻り、今度こそレンチをナットにセット。右にぐいぐい、続いて左にぐいぐい……。
回らぬ。まさかの未解決。
壁から管が生えてるタイプの蛇口なので、下手に力を込めれば最悪の場合壁がもげる。あるいは、と思いつつまあいいかと思って横着したのがやっぱりダメだった。
この日は他にちょっと用事があったので、作業はいったん中断。結局後日ということに。
で、日を改めて、休日。
私は作業の続きのために、まず庭に出ていた。おやキッチンが舞台じゃないのかと思ったそこの方、まあ待たれよ。物事にはやはり準備が必要なのだ。先日ナットが回らなかったワケには実は心当たりがあった。水圧がかかったままでは、やはり回るものも回らないのだ。そこで家全体の水道を一度止めることにしたわけである。
キッチンの蛇口だけを止める止水栓がシンク下にあればそっちを閉めようと思っていたものの、残念ながらウチにはなく、水とお湯の二つを閉めたり開けたあと流量を調整するのがめんどいので元栓へGO。ダンゴムシの住みかとなっていた量水器ボックスを開いて止水栓を閉めて、準備完了。
止水確認ついでに蛇口を開けて残った水を抜き、ナットの上部に露出していたネジ山の方向をよく見て回す方向を決めて、モーターレンチでぐいっと。
ここでようやくナットが緩む。ある程度緩んだら手で回し、古い吐水パイプを引き抜いて、取り外しは完了……ただこの時点では換えのパイプは用意せずいた。
使用してだいぶ経っているし、おおかたパイプ自体の交換になるだろうと思ってはいたものの、パッキンだけ換えて済むならそちらの方が明らかに安上がりだ。ちょっと期待しながら古いパイプをチェックすると、まあ、一言で言ってダメだった。
サビは出ているし根本は摩耗しているしで、これじゃあさすがにどうしようもない。再びホームセンターに出向いて吐水パイプを買ってきて、パッケージのウラに書いてある手順に従って取り付け。それ自体はほんの10分かそこらで終わってしまった。緩めたものを正しく絞める、それだけである。
実作業に対して準備時間がかかりまくりだが、だいたいのモンはそんな感じじゃないだろうか。
パイプを取り換えてからの使用感はといえば、取り換える前とはだいぶ変わった感がある。水はもちろん漏れないし、パイプのがたつきというか、いわゆる『遊び』ようなものが格段に少なくなった。新品と既使用品の違いが分かって、いっそ家中の吐水パイプを換えてもいいんじゃないかとちょっと思ったくらいに。やらないけど。
ともあれこれにて一件落着、けっこう久しぶりに快適なキッチンが帰ってきましたとさ。
全体像? 散らかってるのがバレるので載せませんとも。